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メルマガ♯がんばろう、日本!         №279(21.11.3)
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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 市民と野党の共闘の深化、
そして民主主義のためのコモンズの形成とその経験知の集積を

●野党共闘の深化が問われている
●「平成の政権交代論」からの脱却を
●新自由主義からの転換をめぐる熟議を

□ 第九回大会第八回総会【会員限定】のお知らせ
□ 映画「香川1区」 本「子どもの虐待はなくせる!」

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市民と野党の共闘の深化、
そして民主主義のためのコモンズの形成とその経験知の集積を
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【野党共闘の深化が問われている】

第49回総選挙は、自民単独過半数、立民惨敗、維新躍進という結果となった。投票率は55・93パーセント、前回より2ポイントあまり高いものの、戦後三番目に低い。
今回、各紙の情勢調査にはかなりバラつきがあり、野党が候補者を一本化した選挙区を中心に与野党の接戦区が多いと見られていたが、ふたを開けてみれば、野党=立憲が競り負けている。
共同通信社が31日に実施した衆院選の出口調査によると、「支持政党はない」と答えた無党派層の比例代表の投票先は、立憲民主党が24パーセントで最も多く、続いて日本維新の会の21パーセント、自民党は3番目で18パーセントにとどまった。前回衆院選(2017年)の無党派層の比例投票先で、最多は旧立憲の31パーセント、自民21パーセント、維新9パーセント。無党派層の支持は立憲、自民のいずれも減少し、維新が受け皿となったことがうかがえる。

この結果を受けて野党、とくに立憲内からは「野党共闘」の見直し論がでてくるだろう。しかし今回小選挙区では立憲が共産に助けられたのは明らかだ。比例票をみると、自公批判票が立憲ではなく維新に流れていることが伺えるが、これは「共産党と組んだから票が逃げた」というよりも、都議会議員選挙での都民ファの構造と同じ問題だ。問うべきは、立憲が政権批判層――より正確に言えば、コロナ禍の経験から政治に向き合い始めた人々の気持ち――の核として、機能しえなかったということだろう。
言い換えれば、野党共闘が既存政党の足し算以上の広がりを持てなかったのはなぜか、ということであり、プラスアルファの広がりを持てたところの経験と教訓を、どう次に生かしていくかということにほかならない。

今後くわしい分析が必要だが、例えば甘利・自民党幹事長を破った神奈川13区では、五年前からの草の根の取り組みがあったうえでの野党一本化の結果であったことが伺える。また石原・自民党元幹事長を破った東京8区でも、政党間の「談合」による一本化を跳ね返すだけの市民の共闘の土台があったうえでの野党統一の結果だろう。
あるいは全国的な注目を集めた香川1区では、選挙そのものを双方向の対話型として、市民自らが参加する場として作りあげていくプロセスが展開された。青空集会と銘打った街頭演説では、いっしょに選挙を作り上げている市民がマイクを握り、自分たちの意思で来た小学生が真剣に耳を傾け、10歳の子どもが「自分は選挙権がないが、大人にはちゃんと責任をもって投票してほしい」と発言する。候補者からは自公政権批判以前に、自分たちがめざす社会、望む未来にむけて信頼に足る選択肢をどうつくるか、という共同作業が呼びかけられる。ここでは比例に回った共産党候補との街頭でのエール交歓も自然体で行われる。

支持者を固め、囲い込む身内の論理で選挙を戦うのか、あるいはさまざまな立場の市民や政党、団体による民主主義のための共通体験として集積していくか。野党共闘の内実が問われているのではないか。そして後者からこそ、来年の参院選や各種の地方選、2023年の統一地方選にむけたロードマップを準備すべきだろう(3―4面報告参照)。野党共闘見直し論で過去に帰っているヒマはないはずだ。

【「平成の政権交代論」からの脱却を】

小沢一郎氏をはじめとするベテランが小選挙区で落選したり苦戦したりしたのも、与野党を通じた今回の特徴だ。このことが示唆しているのは、「平成の政権交代論」からの脱却が問われているということだろう。
平成の政治改革は、政権交代可能な二大政党(二大政治勢力)化をめざしたものだった。自民・公明の連立はそれに適合して定着したが、政権交代をめざして結成された民主党はそれに失敗した。票と利害の取引で「数で決着をつける」政権交代論という点では、自公も小沢流も基本的に違いはない。そこには民主主義のための闘争、その歴史的な継承と発展―世代から世代へのバトンリレー―という価値観はない。
その枠組みから2015年以降の野党共闘を見ていれば、3.11後の社会の変化や新しい現実、さらにコロナ禍での人々の気持ちの変化―〝いのちとくらし〟の観点―を、とらえることはできない。


右肩上がりの時代の依存と分配を競い合う選挙の延長では、新自由主義に抵抗がなかった。どちらも社会的な観点がないから、すべて自己責任になる。右肩上がりのときはパイの分配が増えていくから、なにかしら「中流」「平等」幻想でいられた。その延長で右肩下がりになれば「今だけ、自分だけ」になる。依存と分配・新自由主義に代わる社会的な観点―人権や持続可能性を提起できるか。
この転換は一度の選挙で決着がつくものではない。この緊張感を維持しながら来年の参院選や各地の地方選、23年の統一地方選を一連のプロセスとして、新自由主義からポスト新自由主義へと転換できるか。新自由主義に代わる政治、経済、社会へ転換するための政策のみならず、その転換を可能にする新しい担い手、主体をどうつくりだしていくか。右肩上がりやバブルの経験、そこでの感性のなかには、その主体性の要素はない。これは単なる世代交代ではなく、ポスト新自由主義や民主主義の復元力のための世代間のバトンリレーが、日本ではじめてできるかということでもある。


「人民の、人民による、人民のための」と言われる。「人民のため」は中国共産党も言うが、民主主義の核心は「人民による」だろう。統治の主体としての主権者としての市民。立憲民主主義の核心もそこにあるはずだ(だからこそ人権が核心的価値)。
この点があいまいになれば、与野党ともにコロナ対策としてさまざまな給付策を打ち出すなかで、違いは見えなくなる。「与党なのになぜやらなかった」という検証は正しいが、それだけでは「何をしてくれるのか」という観客民主主義から「自分たちが未来を創る」という方向へ、人々が一歩踏み出すような呼びかけは生まれない。
「苦しいのは自分の努力が足りないからだ」という自己責任論に対抗するには、「苦しいのはあなたのせいではない、社会に、政治に問題があるからだ」というだけではなく、「この社会や政治を変える力は、あなたの手のなかにある」「一人の一歩は小さくても、みんなが一歩進んだら変えられる」ということを共有することだろう。

【新自由主義からの転換をめぐる熟議を】

今回の選挙のポイントのひとつは、新自由主義からの転換。医療、教育、子育て、介護など社会生活に必要なあらゆることが市場化された結果が、コロナ禍で露呈した。これを「元に戻す」のか、転換するのか。そしてその先に、新自由主義に代わる社会像をどう描くのか。そこでは人口減・少子化、気候変動といった構造的な難題にも向き合わなければならない。
野党共闘の政策合意は、初めて選挙で新自由主義政策からの転換を問うことを意味している。岸田首相も言葉では「新自由主義からの脱却」、「新しい資本主義」といっており、選挙後にはその内実が明らかになっていく。それをどう検証し評価するかが参院選の争点であり、その争点形成を通じて、めざすべき選択肢を熟議していくことが参院選にむけた時間の使い方だろう。

例えば今回はコロナ禍で露呈した格差への対策として、各党が分配政策を競うというかつてない光景が見られた。そのため政党間の対立軸が見えにくくなったとも言われるが、困窮者支援に関わってきた稲葉剛氏は、「対立軸は明確だ」と次のように提起する。
「それは、「その政党の唱える『分配』は、抜けてしまった社会の『底』を再建することにつながるものなのかどうか。社会に暮らす全ての人の暮らしを下支えする政策が提示されているのかどうか」という評価軸だ」(論座10/25)
 コロナ禍の貧困拡大によって露呈したのは、現金給付をはじめとする緊急対策が不足しているということだけではなく、セーフティネットが充分に機能していないというコロナ禍以前からの問題であり、問われているのは「底に穴が開いていた」社会をどう立て直すのかということである。

稲葉氏(論座10/25)によれば、09年民主党政権で設置された「ナショナルミニマム研究会」は、「ナショナルミニマムの保障は、生活保護のみならず、最低保障年金等の所得保障制度、最低賃金、子ども手当や住宅手当、様々な雇用政策、負担の応能性の強化、低所得者の負担軽減等の包括的・整合的・重層的な仕組みを通じて、実質的に有効なセーフティネットを構築することにより、実現が図られる」としていたが、11年の菅直人政権で「ナショナルミニマム」は「社会的包摂」に代わり、12年の安倍政権では「一億総活躍」に、そして菅政権では「孤独・孤立対策」に代わった。この過程で抜け落ちたものは何か。
「このコロナ禍で厳しい状況にある今だからこそ、社会的に孤立をし、そして、不安を感じている方々に、官民や民間同士がそれぞれの垣根を越えて『絆』を深め、社会全体で手を差し伸べていくことがより必要になってきていると思います」という坂本・担当大臣の発言を紹介した後に、こう提起されている。
「『官民や民間同士』、『社会全体で』という言葉が示唆しているのは、政府が貧困問題に対して前面に立って対策を打つのではなく、民間と横並びで(あるいは、民間の後ろに立って)生活困窮者を支援するという姿勢である。
 ここで完全に欠落しているのは、全ての人の暮らしを『健康で文化的な最低限度』のレベルまで下支えするのが政府の責任であるという『ナショナルミニマムの保障』という理念である」(稲葉氏)

問われているのは公助のあり方であり、それはまた「私たちは何のために税を納めるのか」という財政民主主義に立脚した主権者のあり方でもある。参院選にむけてこうした議論が交わせるような場、その共通の経験から生まれる経験知を集積していきたいものである。
(11月1日記。総選挙の総括については21日の総会で議論を深めたいと思います。)

(「日本再生」510号 一面より)
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第九回大会第八回総会【会員限定】
11月21日(日) 13時から17時(多少、延長もあるかも)
オンライン(ZOOM) 事前登録制

申し込みは ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp へ
11月19日まで
11月20日に、申し込みのあったアドレスにURLをお送りします。
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映画「香川1区」 12月24日から公開!
映画「香川1区」公式サイト|大島新監督作品 (kagawa1ku.com)

今回の小川さんの選挙は、選挙のあり方やスタイルを大きく変えるものとなりました。
「参加」「対話」で政治活動を作り上げていくうえでも、いろいろ参考になると思います。
映像やSNSなどは以下からも
香川1区・衆議院議員 小川淳也【公式サイト】 (junbo.org)
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「子どもの虐待はなくせる!」関東若手市議会議員の会 
けやき出版 1500円

党派を超えた地方議員が「児童虐待ゼロ」を目指して、自らの関わりを語り、さまざまな現場の声を聞き、専門家と議論し、政策提言として発信する。人権という観点、虐待防止はより「上流」で「子育てしやすい社会」をつくることという社会観、また議員活動としての新しいスタイルなど、さまざまな学びと気づきが得られます。
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-- 石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp