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━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━ メルマガ♯がんばろう、日本! №264(20.7.31) ━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━ 「がんばろう、日本!」国民協議会 http://www.ganbarou-nippon.ne.jp ================================== Index □ コロナ時代に問われる民主主義の復元力と安倍政治の検証 ●感染再拡大を前に「たじろぐ」政治 多数決民主主義の限界を超えて ●政治不信・他者不信を増幅するのか、 他者への想像力を鍛え、民主主義の復元力を涵養していくのか □ 総会(8月22日開催)のお知らせ ================================== コロナ時代に問われる民主主義の復元力と安倍政治の検証 ================================== ●感染再拡大を前に「たじろぐ」政治 多数決民主主義の限界を超えて アベノマスク8千万枚追加配布、Go Toキャンペーン…。七月に入って感染が急速に拡大しつつあるなか、数多くの批判を押し切って政府が打ち出した「対策」。一方、第一次緊急事態宣言で最前線を担った医療機関のなかには、経営危機に直面しているところもあり、賞与カットに抗議する医療従事者のストライキも起きている。感染再拡大を前に、現場の危機感が増している。 また毎年のように激甚化する集中豪雨のシーズンを迎え、感染症との「複合災害」も懸念される。しかし国会は6月に閉じたまま、閉会中審査にも首相はまったく出席せず。野党は憲法に基づく臨時国会召集を要求するも、政府は召集に否定的。(2017年に野党の臨時国会召集要求に三か月応じなかったことは違憲か、について争われた訴訟では、違憲とはされなかったものの政府に召集義務があるとされている。) 問われるのは、政府のガバナンス能力である。日本の感染症対策のボトルネックはここにある。コロナ禍は、これまでにあった社会の脆弱性をあらわにすると同時に、検証を嫌って短期的なスローガンを使いまわすことで「やっている」感を演出してきた「安倍一強」の弱点もあぶりだしている。 「こうして、『安倍一強』のもと、強いチーム組織として安倍首相を支えた政権は、分裂の様相を強めている。誰もが責任を担いきれず、厳しい事態にたじろいでいる。首相の言葉が弱々しく聞こえたり、『まさに』、『歯を食いしばって』、『守り抜く』といった決まり文句が耳障りなほど繰り返されたりするのは、首相を支えるスタッフがやせ細り、政策アイディアの出所が払底しているからである」(牧原出 中央公論8月号)。 首相を支えるスタッフがやせ細り(側用人だけ)、政策アイディアの出所が払底している(電通頼み?)という政治の劣化状況は安倍政治の帰結であり、その根底にある「選挙で勝ったのだから何を決めてもいい」という多数決主義の破綻にほかならない。 「何となく」「ほかにいないから」という消極的支持に支えられてきた「安倍一強」の限界は、コロナによってだけ明らかにされているわけではない。 一人の政治家を十七年にわたって追った「なぜ君は総理大臣になれないのか」http://www.nazekimi.com/という地味なドキュメンタリー映画が、ジワジワと評判を呼んでいる。その政治家とは小川淳也衆議院議員。その真摯な姿勢は、安倍首相の政治姿勢とは対極といえる。映画のなかで小川議員は、選挙は結果だけを見れば100対0に見えるが、実際にはほとんどが51対49。問題は勝った方が残りの49の思いも背負ってやれるかだと、自分に言い聞かせるように言う。映画の感想にこのシーンを挙げる人は少なくない。 コロナ禍で、多数決主義に支えられた「安倍一強」の限界が実生活レベルで感じられるようになって、民主主義は多数決で決着をつけることではなく合意形成のプロセスだ、ということが人々の中で腑に落ちるようになっているのではないか。「声をあげれば変えられる」という小さな成功体験も、それを後押ししているといえるだろう。「声をあげる」とは異なる立場を否定することではなく、異なる立場でも合意できる共通点を探り出していくプロセスにほかならないのだから。 「安倍政治」の検証とは、多数決民主主義に代わる、議論による統治―立憲的デモクラシーへの糸口をつくりだすことにほかならない。当面の「ポスト安倍」に限っても、次のようなことが言えるのではないか。 「内閣の基本原則は、各省の所管に全責任を持つ大臣が主体的に行動することである。現政権は、麻生財務相と、安倍首相側近の数名の大臣以外は、ほとんど機能せず、官邸が処理してきた。それが可能だったのは、政権が、時期を区切って安保法制、トランプ大統領対策、地方創生、一億総活躍など、特定の政策に関心を集中し、政策革新を図ってきたからである。しかし、新型コロナ対策では、数年かけて全大臣が所管を見直し、慎重かつ果断に問題を処理する必要がある。『官邸案件』に特化した政策形成では到底対処できないのである。この点は、新型コロナ対策が終息しないうちに政権が代わったときにこそ、さらに重要になるであろう」(牧原 前出)。 ポスト安倍では少なくとも、側用人政治から脱した合議制に基づくチーム組織としての政権の再建が不可欠ということだ。それは、「決められる政治」「決められない政治」という平成の政治改革の土俵を卒業して、議論による政治―合意形成という新たな土俵をつくり出すことを伴う。 感染症対策と社会、経済活動との両立は複雑な多次元連立方程式だ。51対49を100対0に変換して、異論や批判、疑念にまともに向き合おうとしないところには、議論も合議も成り立たない。必要なのは、異なる立場でも合意できる共通点を探り出していくプロセスだ。 ●政治不信・他者不信を増幅するのか、 他者への想像力を鍛え、民主主義の復元力を涵養していくのか 感染が再び拡大しつつあるなか、場当たり的な対応を繰り返す政府の迷走ぶりが人々を不安にし、それがさらに政治不信・他者不信を増幅するという悪循環に陥りつつある。一部からは、緊急事態宣言を再発出すべきとの声もあるが、権力的な規制・統制の効果は限定的だというのが、ここまでの教訓ではないか。もちろん感染拡大防止のためには、人々に行動変容を促す全体的な行動規範が必要になる。問題は、それをどのように作り出すかだ。 「健康保険や公衆衛生、とりわけ感染予防というのは個人の行動が多数に影響を与えますから、何らかの全体的な行動規範が必要になります。それを国家権力による規制ではなく、社会の側でどうつくれるか。ただ、他者不信の高い社会では、それは困難です」(吉田徹・北海道大学教授 本号7面) 「もうひとつの教訓は、先に言ったように、人々の生命や健康が脅威にさらされると、国家権力の恣意的な介入が可能になり、そうした強い国家に依存した生は、むしろ脆弱な生となるということです」(同前) 新型コロナウイルスが〝やっかい〟なのは、社会生活における他者とのつながりが感染拡大に影響することだ。他者との距離をとることが推奨されるなか、もともと他者不信の強い日本社会において、「みんなのため」の行動規範を、国家権力による統制・規制によってではなく、社会の側の合意形成によってつくることができるのか。 「感染は自己責任」と考える人が11.5パーセント、アメリカの十倍と飛びぬけて高い日本(6/29読売)では、「みんなのため」は容易に「みんながやっているのに、やっていない奴が悪い」という自粛警察に転化する。他者不信が高い日本社会で強く求められる自立は、「助けて」とはなかなか言えない社会的孤立と表裏一体だ。感染症はこうした社会の脆弱性を明らかにする一方で、目を凝らせば転換の可能性も見えてくるのではないか。 長年ホームレス支援に携わっている奥田知志氏は、こう述べる。 「すでに『孤立社会』であった日本でも新型コロナウイルス感染が広がり、私達は他者との『ディスタンス(距離)』を取らざるを得ない日々を過している。これが一層の孤立化へと向かうきっかけになることを懸念する」、「ただ、物理的距離は感染防止で開けざるを得なくとも、見えない距離は詰めることができるのではないかとも思う。見える距離は遠く、見えない距離は近く、である。これを機に『他者』を思うことの想像力を鍛えることができるなら、『コロナもまた無駄ではない』と言えるかも知れない」(論座7/11)。 奥田氏が理事長を務めるNPO法人は、コロナ禍での「人が人を支える」伴走型支援のためのクラウドファンディングを立ち上げ、目標額1億円を上回る金額を集めた。他者不信の高い日本社会にあっても、他者を思う想像力が可視化されたと言えるのではないか。そうであれば「コロナもまた無駄ではない」と言えるかもしれない。この可能性をどのように持続的に発展していけるか。 他者を思う想像力はまた、民主的合意形成のための基礎インフラの一つでもある。数で決着をつける多数決民主主義なら、異なる立場を否定して味方の頭数を増やせばよい。しかし民主的な合意形成は、異なる立場でも合意できる共通点を探り出していくプロセスであり、そこでは他者への想像力が不可欠となる。 台湾のデジタル大臣・唐鳳氏は、デジタルテクノロジーを活用してこうした合意形成プロセスをつくりだそうとしている。 「『前世紀のガバナンスは二つの対立する価値、例えば『環境』と『経済発展』といった価値を代表する組織や団体をつくり、その間で調整して妥協するものだった。でも、ソーシャルメディアの登場や、ハイパーコネクテッドワールドにおいて、そのやり方は破綻した。的確なハッシュタグで、数万、数十万の人々がどこからともなく組織される。政府や法律では、それら多数の、または緊急の問題について対応することは不可能です。旧来のやり方では、多くの緊張が生まれてしまう』 彼女が実践するデジタル、または協働ガバナンスは、インターネット・ソサエティから学んだことだ。人々を利害で組織する代わりに『異なる立場であるが、合意できる共通の価値は何か』といういくつかの問いかけを行うのだ。もし合意に至ることができれば、すべての人にイノベーションを提供することができる、タンはそう語る」(フォーブスジャパン 7/27) 「異なる立場であるが、合意できる共通の価値は何か」という問いかけを積み重ねてゆくプロセスを、もっとも身近に着実に集積していく場こそ、自治の場にほかならない。自分たちで議論して納得して決めた、という実感と実践を積み重ねていく先に、「自分たちが選んだ政府が決めたことだ」ということを前提に、政策を検証したり政権を業績評価したりする民主主義の復元力が涵養されるはずだ。他者不信・政治不信の連鎖からの転轍を。 (「日本再生」495号 8/1 一面より) ================================== □ 総会のお知らせ 他者への想像力を鍛え、民主主義の復元力を涵養していく糸口へ ================================== 下記の日程で総会を開催します。 8月22日(土) 13時から17時 ZOOMにて (途中入退場可) 【他者への想像力を鍛え、民主主義の復元力を涵養していく糸口へ】 感染再拡大を前に、今春の総括視点と、「転換点としてのコロナ時代」の問題設定(不信の連鎖からの転轍、持続可能な社会・コモンの拡充、民主主義の復元力など)を共有していきたいと思います。政局的には「ポスト安倍」の動きが始まるかもしれませんが、より本質的な次元での問題設定を見すえていきたいと思います。 参加申し込みは、8月21日までに。ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp まで。 申し込みのあったアドレスに、8月21日にZOOMのURLをメール(bcc)でお知らせします。 オンラインですので、遠隔地や在宅からもぜひご参加を。 この間の「一灯照隅」にもあるように、〝いのちとくらし〟の現場の経験、記録、考察は、民主主義の学校そのものです。総会にむけた活動報告も、ぜひお寄せください。 北九州・加藤さんからのレポートを、ホームページhttp://www.ganbarou-nippon.ne.jp/の会員専用掲示板「サロン・ド・アンクルズ」に掲載しました。 ================================== -- 石津美知子 「がんばろう、日本!」国民協議会 http://www.ganbarou-nippon.ne.jp |