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「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
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▼ Index
 
20世紀型「持たざる国」の漂流か、21世紀型自立分散型社会への選択か
3.11後の「新しい現実」を未来への一歩とするために

● 3.11から三年 明日はどっちだ
● 守るべきものはなにか

□お知らせ 3月から4月の「囲む会」&シンポジウム&総会
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20世紀型「持たざる国」の漂流か、21世紀型自立分散型社会への選択か
3.11後の「新しい現実」を未来への一歩とするために
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●3.11から三年 明日はどっちだ

 「フクシマがあったのに、日本はまだ原発を動かすつもりなのか」「日本人はも う、フクシマのことを忘れたのか」。一月末に訪れたドイツでのこと(13面報告参照)。調査のヒアリングがひととおり終わった後に、 再エネ事業を手がける自治体関係者から何度か、こう聞かれた。

 3.11後の転換は確かにドイツのほうが明確だ。メルケル政権は、SPD(社民)・緑の連立政権時に法制化された「二〇二二年までに原発稼働停止」という方針 を、「二〇四〇年まで稼働延長」としていたが、3.11を受けて当初の方針に戻し、脱原発へと明確に舵を切った。(3.11以降、エ ネルギー政策の基本方向について主要政党間での違いはなくなった、といわれている。論点は目標達成の手法をめぐるものへと移行し た。)

 またフクシマ直後に行われたバーデンビュルテンベルク州の選挙では、当初優勢といわれた保守政党CDUが事故直後から支持を急速に落とし、緑の党がSPD(社民)と組んで、ドイツではじめてとなる緑の党の州首相が誕生した。バーデンビュルテンベルク州はドイツ有数の工業地帯で、電力の大半を原発に依存している(2000年58%、2010年48%)が、新政府の下で原発ゼロに向けた大胆な政策転換が進められている。(「目標 は達成可能だが、そのためには政策を急速に進めなければならない」とのこと。)

 日本はどうか。東京都知事選を考慮して先延ばしにしていたエネルギー基本計画 の政府案が、二月二十五日発表された。原発の位置づけを当初案の「基盤となるベース電源」から「ベースロード電源」とするなど、多少 文言の変更はあるものの、原発頼みの続行を明確にした、二〇一二年の国民的議論による「原発ゼロ」からの逆行である。

永田町・霞ヶ関の多数が、「見るも 無残、福島第一原発事故などなかったかのようだ」(当初案に対する河野太郎議員のコメント)という状況の一方、地域にはそれとはまっ たく別の「新しい現実」が広がりつつある。3.11後に成立した再生可能エネルギー固定価格買取制度によって、「わずか一年半で、何と設備は二千六百万キロワット、設備稼働率が20%として も、約四百万から五百万キロワット、原発でいうと三基か四基分が設備として認定」された(7―9面「囲む会」福山参院議員 参照)。

 再エネ普及の大きなポイントは、メガソーラーやメガ風力よりも地域の多様な主 体(自治体、地域企業、地域金融機関、住民、市民ファンドなどの連携)による「地産地消」型ビジネスモデルの展開にある。すでにさま ざまな工夫をこらした「ご当地エネルギー」事業が各地に叢生しはじめている。

 政権交代によるゆり戻しにもかかわらず、ドイツのエネルギーシフトをゆるぎな いものとしたのは、固定価格買取制度と電力市場自由化によって発電者の形態が変わり、設備容量の50%は個人や協同組合が所有するようになり、消費者は同時に供給者でもあるようになったという「新しい現実」だ。

 「最初は草の根でパイオニアと呼ばれる市民らが立ち上げ、それが技術的に成功 するようになると、まあ悪いこともなかろうと法的な枠組みで公がわずかに支援した。その枠組みの中で、この分野で産業や雇用が生まれ ると、地域経済の活性化のためポジティブな効果が生まれた。とりわけ農村では、地に足のついた実体経済を担う、選挙であれば確実に投 票所に向かうような実直な農家や手工業者などの既存政党の支持者たち有権者が、いち早くこれに気づき、地域の政治家に圧力がかかっ た。既存政党の認識は一部農村から変わり、そんな点が面へと広がった。こうした歴史的な経緯をドイツは経験している」(「欧州のエネ ルギー自立地域」第1章4 村上敦)

 私たちは、こうした一歩を踏み出しているのではないか。原発を「ベース電源」 と位置づけつつ、再エネも積極的に推進するという、まるで方向性の見えない・決められない永田町に、「新しい現実」をどう追認させて いくか。二〇一五年の統一地方選は、そのひとつのステージになるかもしれない。

 「脱原発」は都知事選の争点にもなった。票数だけみれば、「脱原発」を掲げた 細川・小泉連合が、原発再稼働を掲げる安倍総理に応援された舛添氏にダブルスコア以上で惨敗した、といえなくもない。ただし舛添氏も 「原発推進」ではなく「将来的には原発依存体制はなくしていかなければならない」との立場である。したがって問題は「原発賛成・反 対」のスローガンの言い合いではなく、東京都における現実的なエネルギー政策の転換をどう図るのか、ということになる。

 舛添氏になって間違いなく都政が大きく変わった点は、都知事が基本的に毎日登 庁するようになったこと、だろう。
 「都庁では、職員が恐る恐る知事に説明に伺ってもよいかと、私に不安げに尋ねてき た。これは驚きで、知事に対する説明などは当然行うべきである。また、外国の賓客をはじめ、外部の人とのアポイントメントを予定に組 み入れることにも、躊躇しがちである。
 これまでの知事たちが、どういう職務姿勢であったのかが、よく分かる。週に2〜 3回しか職場に来ないのなら、職員からレクを受ける機会も少なくなるであろうし、重要な来客とのアポも入れられないであろう。まとも な仕事もせずに、権威主義的に怒鳴り散らしていたのではないかと想像してしまう。これでは、部下の士気も減退するであろう。
 〜中略〜私は、こと政策に関するかぎり、厳しく問題点を指摘するが、都庁の職員は、霞が 関に劣らず優秀である。これは、少し議論すればすぐにわかる。まずは一安心である。しかし、次は官僚を超える発想を求めなければなら ない。緊張感を持って、私に対することを求めていきたい」(現代ビジネス 舛添レポート2/18)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38397?page=2

 都知事が毎日登庁して職務を果たす以上、都民も選挙で一票を投じて終わり、で はなく、自らの投票結果に主権者としてどう関わり続けていくかが問われることになる。スローガンの言い合いやドンチャン騒ぎは、そろ そろ卒業しよう。都市部からも、地に足のついた政策転換の一歩を踏み出していけるか。これは二〇二〇年オリンピック・パラリンピック の重要な課題でもある。

(以下「日本再生」418号へ続く)

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□お知らせ 「囲む会」&シンポジウム&総会
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◆第135回 東京・戸田代表を囲む会
「『あれも、これも』から『あれか、これか』への転換をめざして」
3月20日(木)18時45分より21時
ゲストスピーカー 尾崎やすお・東大和市長
「がんばろう、日本!」国民協議会(市ヶ谷)
参加費  同人1000円 購読会員2000円

◆シンポジウム
「自治体財政と地域民主主義」
4月13日(日) 13時より17時
アルカディア市ヶ谷 5階「大雪」
参加費 2000円

《問題提起とパネルディスカッション》
諸富徹・京都大学教授、廣瀬克哉・法政大学教授、田中秀明・明治大学大学院教授
松本武洋・和光市長、石津賢治・北本市長

◆関西政経セミナー
「地域の課題を解決する地域の総合力―地域自主組織の底力」
4月27日(日)14時から18時
エルイン京都 会議室
参加費 1000円

《問題提起とパネルディスカッション》
岩崎恭典・四日市大学教授、諸富徹・京都大学教授、川勝健志・京都府立大学准教 授
隠塚功・京都市議、四方源太郎・京都府議、田中誠太・八尾市長
山中光茂・松阪市長(予定)

◆総会(第七回大会第四回総会)
5月17日(土) 10時から18時(予定)
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
ゲストスピーカー 諸富徹・京都大学教授 ほか

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□お薦め図書
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□エネルギーから経済を考える/ 鈴木悌介/ 合同出版
418号にインタビューを掲載している、エネルギーから経済を考える経営者ネッ トワーク会議世話役代表・鈴木悌介氏の対談集。

□欧州のエネルギー自立地域/  滝川薫 ほか/ 学芸出版社
418号一面で引用した(本メルマガで引用した)村上敦さんはじめ、ヨーロッパ 在住の日本人ジャーナリストが「フクシマ」の衝撃を受けて、祖国に新しい夢とビジョンをもたらしたいとの思いで書いた本。

□市民自治 みんなの意思で行政を動かし、自らの手で地域をつくる
 福嶋浩彦/ディスカヴァー携書

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会