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「がんばろう、日本!」国民協議会
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▼Index 

□〜夜明け前が一番暗い〜
「政党政治が壊れていく」過程なのか、
それとも「変化に対応するための“担い手の変更”」の可能性なのか    

●「世界第二の経済大国」幻想の最後の一片が吹き飛ばされた今こそ、「日本がどうなっており、どうなりうるか」を直視しよう

●東アジア リーダー総入れ替えの二〇一二年にむけて

●パワーシフトとパラダイムシフトの同時進行、さらに右肩下がりへの逆回転と天文学的財政赤字 この連立方程式を解くための担い手の変更〜担い手の要件が明確になりつつある

□お知らせ

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〜夜明け前が一番暗い〜
「政党政治が壊れていく」過程なのか、
それとも「変化に対応するための“担い手の変更”」の可能性なのか
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●「世界第二の経済大国」幻想の最後の一片が吹き飛ばされた今こそ、
「日本がどうなっており、どうなりうるか」を直視しよう

「太平の眠りを覚ます上喜撰、たった四杯で夜も眠れず」。ご存知、幕末、ペリー提督率いる「黒船」が浦賀沖に出現したときの狂歌である。銘茶の「上喜撰」を「蒸気船」に、「四杯」の「杯」は船を数える単位にかけて、アジアの植民地獲得に乗り出す欧米列強が、いよいよ「鎖国・日本」にも迫ってきたことを指している。
普天間の迷走に続いて、「蒸気船」ならぬ「酔いどれ漁船」の暴走から始まったこの秋の一連の外交的出来事は、まさに「世界第二の経済大国」幻想の最後の一片を吹き飛ばすに足りるものだといえるだろう。民主党政権の対応能力の欠如は目を覆うばかりである。自民党政権であれば、もう少しマシな対応はできたかもしれない。

しかし事態の背景にある構造要因は、「世界大戦に匹敵するような、国際秩序の大変動期」という歴史的激動である。この変化に対応できない日本政治の機能不全は、自民党政権であっても本質は同じだ。これに対応するために試行錯誤してきたのなら、「失われた二十年」にはなっていないのだから。
「失われた二十年」とは「世界第二の経済大国」幻想の下での粉飾決算である。それがいよいよ行き詰ったからこその政権交代である以上、政治の「見える」化は、負債の「見える」化から始まらざるをえない。

「政権交代というのは、前の政権がニッチもサッチもいかなくなったから政権が変わるわけです。よその国は十二年くらいで政権交代をしますから、不良債権も負債もそれほど溜まっていない。うちは半世紀ありませんでしたから、粉飾決算どころじゃないですね、負債の山です。破綻会社の管財人になってみたら、借金一兆円と言われていたのが、開けてみたら十兆円あった。埋蔵金を探したら、埋蔵借金まで出てきた。こういうことです。
〜中略〜国民の方も、まずそういう感覚を持たなければならない。民主主義での政権交代は、ゼロを受け取るのではなく、マイナス百を受け取るところから始まるんです。ある意味で破産管財人として始まるんですから。まず管財人としての能力があるかどうか。それが分かっていなければ、一歩前進が迷走になり、逆走になる。それをまた言い訳していたら、ますます訳が分からなくなります。
『こんなはずではなかった』? そうではない、これが事実なんです。『○○が悪い』『××が間違っている』といって、この現状が打開できますか?できません。また自民党政権に替えれば、よくなりますか? 内外の現状(国際秩序の大再編、右肩下がり)、そこから突きつけられている課題は、そんな次元で対応できることではありません。まずこの事実を、事実としてとらえることです」(戸田代表を囲む会in京都 「日本再生」379号十二面)

「世界第二の経済大国」幻想の最後の一片が吹き飛ばされた今、事実を事実として直視する(「日本が(自分たちの社会)がどうなっており、どうなりうるか」)ところから、ようやく「変化に対応しなければならない」という自覚がうまれる。そこからはじめて、取り組むべき課題および優先順位が見え、課題解決プロセスとそれに必要な諸条件(決定的には人の要素)が見えてくる。このときにはじめて、「夜明け前が一番暗い」と言いうる。

●東アジア リーダー総入れ替えの二〇一二年にむけて

中西寛・京都大学教授は、現在の国際秩序の大変動を「世界大戦に匹敵するような」ものだと指摘する。「現在の世界政治は権力政治レベルでの多極化と、経済システム・レベルでの金融主導のグローバル市場経済成長モデルの限界の露呈という二つのレベルでの大規模な変化が同時に進行しているところに特徴がある。〜中略〜歴史的に見れば、大国間秩序の大規模な再編成と世界的政治経済システムの変容とが同時に起きるような変動は、主要国間の大規模な戦争を経て実現されることが一般的であった。〜中略〜しかし現代においては、世界規模の相互依存が浸透しているので、大国間の戦争が起きる可能性は不可能とは言えないまでも極めて低くなった。〜中略〜現在の世界システムの変動は経済メカニズムを通じて起きる度合いが高いであろう。二〇〇八年九月の「リーマン・ショック」を引き起こしたアメリカの金融危機は、〜中略〜危機への対応力という「テスト」を通じて国際秩序の再編成を促している。この「テスト」は、世界において大国ないし主要国と見なされる国家の再編成と、世界の諸問題に対応するガバナンス・メカニズムの変容という二つの経路を通じて国際システムの変化を促している」(「グローバル多極秩序への移行と日本外交の課題」経済産業研究所 ディスカッションペーパー)

 二度の大戦を経て覇権国の地位はイギリスからアメリカへ移行したが、今回の大再編においてはそう簡単に、アメリカに替わる超大国は見当たらない。そのことがこの再編期の複雑さ、不安定さを増大させている。同時に台頭しつつある中国が、この国際秩序の大再編のなかで「責任ある大国」となるのか、それとも混乱・撹乱要因となるのかが、大きなポイントである(後者の要因をいかに修正、セーブしていくかというアプローチ)。

 東アジアはこうした変動の焦点であり、二〇一二年はこの地域に関わる諸国でリーダーがいっせいに交代することになる。中国では胡錦濤体制が代わり、台湾では総統選、ロシアも韓国もアメリカも大統領選である。このプロセスのなかで、米中を軸としつつ多極化した東アジア国際秩序の「次の枠組み」、およびそのなかでの各国の位置取りの目安が見えてくる。各国の内政も、そこにむけたせめぎあいと無縁ではない。多極化時代にあって、地域秩序の再編成におけるリーダーシップも、これまでとは違うものが求められる。

砲撃をはじめとする北朝鮮の挑発行為も、こうした国際秩序の大再編に対するマイナスの側からの「参入」形態とみることができる。こうしたマイナスからの参入を、どうマネージするか、その帰趨は二十一世紀前半の東アジアの秩序形成を左右することになる。中ロを「責任ある大国」へと導きつつ、多極化した世界をマネージできるか。それとも「新冷戦」という形で、ふたたびアジアが引き裂かれるのか。

「膨張する中国」が「暴走する中国」になるのか、それとも「責任ある大国」となるのか。これも軍、国有企業、地方政府、熱狂する大衆といった国内のさまざまな利権集団をいかにマネージできるか、に大きくかかっている。アメリカの対中戦略も「パワーシフト」をにらみつつ、経済の相互依存というパラダイムシフトを視野に入れたものになっているが、中間選挙で大敗したオバマ政権がアジア外交にどこまで本格的に力を割けるか、という問題もある。

日本は米中のような、国際秩序の枠組みを方向付けるような大国ではない。方向付けられた変化に対して、「いかに対応するか」という立ち位置である。同時に二十一世紀初頭の国際関係においては、超大国の行動の細部にいろいろな国がチョッカイを出し、軌道修正を図るソフトバランシングという関わり方もある。

図抜けた覇権大国が国際公共財を提供する、という秩序形成は多極化した世界では難しい。むしろ多数のプレイヤーがさまざまな連立方程式を組み、与件と変数を入れ替えることを繰り返しながら、何らかの合意なり協調なりが形成されていく、その知恵が不可欠だ。勢力均衡の伝統を持つヨーロッパと異なり、歴史、文化、価値観の相違が大きい東アジアにおいて、相互依存をベースとした調整ないし協調の方向が見えてくるか。これが、この地域のリーダーが総入れ替えを迎える二〇一二年にむけた大きなポイントである。

このなかで、わが国そしてわれわれが「変化に対応し」、「それなりの存在感と経済規模を維持しつつ」、「持続可能な社会として」やっていけるメドが立つのかどうか。ここにむけてこれから約二年間のタイムテーブルを、明確にしていかなければならない。ここからリーダーシップの要件が絞り込まれてくる。

●パワーシフトとパラダイムシフトの同時進行、さらに右肩下がりへの逆回転と天文学的財政赤字  この連立方程式を解くための担い手の変更〜担い手の要件が明確になりつつある

東アジアでは、中国の台頭に見られるような「パワーシフト」と、G20に象徴されるような「パラダイムシフト」が同時進行している。さらにわが国には、右肩上がりから右肩下がりへの逆回転の開始とともに、天文学的な財政赤字を抱えつつ人口減・少子高齢化社会を凌ぐという課題が同時に課せられている。

 このかつてない多元連立方程式を解くには、右肩上がりの時代の経験は使いものにならない(少しでも使いものになるなら、「ゆでガエル」にはなっていない。)シュンペーターはイノベーションを「非連続的な変化」と規定し、新結合は旧結合との断絶の上に現れなければならないとしている。それは「軌道の変更」についで「担い手の変更」として進む。かつてない連立方程式(軌道の大変更)を解くためには、担い手の変更が不可欠なのだ。
リーダーシップには、人の要素が決定的である。言い換えれば「担い手の変更」とは、求められている資質を明確にし、そこから「人」を選抜していくということである。これは「世代交代」というようなあいまいなものではない。

 冷戦時代なら、外交は両陣営のボス交に任せておけばよかった。「西側の一員」「世界第二の経済大国」の“お札”さえあれば、あとは「気配り」「カネ配り」という、分配政治の延長でいられた。しかし冷戦が崩壊し、グローバル経済が進展するなかで「友好国」「同盟国」の意味もシビアに変わる。ますます多極化する世界では外交は「ボス交」ではなく、常に連立方程式で動くことを思い知らされる。G7は着席形式だが、G20は立食形式だ。着席形式なら案内された席につけばよいが、立食形式では、全体の諸関係をみながら立ち位置を決め、なおかつ自力でそのポジション取りをしなければならない。外交(とりわけ首脳外交)に求められる能力、資質はまったく異なる。

(余談になるが、韓国はG20の開催国として一年あまりにわたる準備を行う間に、G20経済外交とG20マーケティングの経験を集積したという。一年間のAPEC開催準備で、わがほうは何をどれだけ学び、集積したのか。)

また右肩上がりの時代なら、年々税収が増えるから、予算編成は「あれも、これも」ですんでいた。しかし右肩下がりになり、生産年齢人口が急速に減る一方で、高齢化によって社会保障費が毎年一兆円「自然増」になる、という時代には、そのままでも何かを削らなければ社会保障費の自然増すら賄えない。借金にもそろそろ限界が見えている。

まさに「あれか、これか」「何かをやるためには、何かをあきらめる」というリーダーシップが、予算編成に求められている。しかし二十二年度予算は、自民党政権の概算要求にマニフェスト項目を上乗せした結果、膨らんだ歳出を過去最高の国債発行で賄うというザマとなった。二十三年度予算編成においても、財源探しの苦労は見えても、わずかにあったマニフェストの政策思想の軸(控除から給付へなど)は、風前の灯である。
政策思想の軸が分かる側からは、どういうリーダーシップが致命的に必要なのか(リーダーの選抜の基準)が、ここから鮮明になってくる。

「何かをやるためには、何かをあきらめる」というリーダーシップは、地方自治体においては形づくられ始めている。三十代市長を誕生させた構造は、「自分たちのまちがどうなっており、どうなりうるか」を共有する市民と首長による、ローカルマニフェストの作成―検証に入りつつある。こうした市民と向き合いながら決定機関としての責務を担う議会にむけた、議会改革も始まっている。

リーダーの選抜の基準、バッジをつけた主権者の選抜の基準を、ここから鮮明に絞り込んでいくことは、来年の統一地方選の課題でもある。そのためにもまず「自分たちのまちがどうなっており、どうなりうるのか」、事実を事実として共有することが不可欠となる。
また政権交代によって、わが国でははじめて政権担当の経験がある野党が誕生した。自民党は参議院ではじめて会長を選挙で選び、派閥支配に代わって党としてのマネジメントを機能させつつある。政権担当を前提としない野党と、政権運営の経験に立つ野党では、政権に対する批判、検証は当然変わってくるはずだ。ここから本来の意味での健全野党、政権交代を前提とした野党第一党のあり方も見えてくる。

私たちが向き合っているのは「政党政治が壊れていく」過程なのか、それとも「変化に対応するための“担い手の変更”」、その要件が見えてきつつあるのか。「変化に対応するための“担い手の変更”」を推し進める主権者運動を。
(「日本再生」379号 一面より)
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□望年会のお知らせ□
東京 12月23日(木・祝) 16時より 会費2000円
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)

京都 12月21日(火) コープイン京都
第一部 講演 村田晃司・同志社大学教授 会費1000円
「リーダー総入れ替えの2012年・東アジアをどう展望するか」
第二部 懇親会 会費3500円
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□ 「日本再生」379号では、さまざまな角度からの「政権の検証」を通じて、
求められているリーダーシップ(転じてフォロワーシップ)とは何かを考えます。
政権運営の経験がある野党から/事業仕分けから/副大臣・政務官の職掌から
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□山本同人が参画している、草津市・市長マニフェストの検証が公開されています。
活動の参考に。
公開サイト → http://kaikaku21.com/
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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL 03-5215-1330 FAX 03-5215-1333