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メルマガ♯がんばろう、日本!         59(03.12.14)
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▼index
□ 自衛隊のイラク派遣にあたって
■彼らの無念を胸に刻もう
■自衛隊は派遣せざるをえない
■自衛隊派遣によって国際社会に何を訴えるべきか
■民主党は政権政党への脱皮にふさわしい対応を

□お知らせ
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 自衛隊のイラク派遣にあたって
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■ 彼らの無念を胸に刻もう

「イラクの暫定統治、憲法に基づいた政府の樹立には、なお相当の時間とエネルギー
が必要です。その重荷を米国と一部の連合参加国だけでは、いずれ背負い切れなくな
るでしょう。その時、国連という機関の役割が必ずや大きくなってきます。
 これを見越して(中略)日本政府が関与できる余地がもっとあるかもしれません。
このような策を講じてこそ(後略)・・・」

これはイラクで殉職した奥参事官(当時)が、「外交フォーラム」11月号に寄稿した
文章の結びの部分である。事実上の遺稿となってしまったこのくだりを読むにつけ、
日本政府・日本外交の無為・無責任のツケを背負わされてなお、職責をまっとうせん
とした奥、井ノ上両氏の無念を思わざるをえない。

お二人がなぜ殉職しなければならなかったのか、何のために殉職したのか。小泉総
理、福田官房長官、川口外務大臣以下、何一つ説明していない。こんな無念があるだ
ろうか。
イラクの復興・暫定統治はいずれ、国連主導の枠組みに戻すことが必要になる。それ
を見越して出来ることは・・・という現場の命がけの働きに応えるだけのいかなる外
交努力を、外務省は、日本政府は(例え非力であったとしても)行ってきたのか! 
開戦前から未だに、壊れたテープレコーダーのように同じことを繰り返しているだけ
ではないか。自衛隊のイラク派遣を前に、橋本元総理や高村元外相、中山太郎氏など
を欧州、中東などに政府特使として送るという。外務大臣は何のためにいるのか! 
「選挙への影響」とやらで、政府の責任ある判断基準をいっさい示さず「できること
はあるはず」(福田官房長官)と自衛隊に派遣計画策定を押し付け、選挙後は国会論
戦を逃げまくり、ようやく開いた「国民への説明」会見ではうつろな表情で「憲法」
前文を棒読み・・・。

自衛隊のイラク派遣については賛否あろう(われわれは「出さない」という選択はと
れない、「出さざるをえない」と考える。その理由は後述。)が、今回の派遣はまさ
しく、政治の無為無策、責任放棄のツケ回し以外のなにものでもないことだけは、し
かと銘記すべきである。
ここまで迷走したのは、イラクの治安が悪化したことが原因ではなく、政治が説明責
任を回避しつづけ、いっさいの判断を放棄してきたツケである。その結果、もはやイ
ラク特措法の前提(戦闘の終結/非戦闘地域での活動)は完全に崩れているにも係わ
らず、破綻した枠組みでの派遣を無理やり行うことになった。そのツケは全て、現場
の自衛官に背負わされることになる。

自衛隊を派遣するにあたってなぜ、「全責任は政府がとる」と言えないのか。「安全確
保」をアレコレ言いながら現場に覚悟を押し付ける前に、なぜ「場合によっては死傷
者がでるかもしれないが、これこれの国益のために行ってもらいたい。イラクで起こ
る全ての問題については政府が全責任をとるので、職務をまっとうしてもらいたい」
と言えないのか。
われわれはなによりも、この無念を胸に深く刻もう。
そしてこの政治の無為無策、責任放棄こそが国を危うくするものであることを、しか
と見据えよう。先の総選挙で、このテイタラクの政府を変えることができなかったの
は、われわれ国民の選択であったことを忘れてはならない。

■ 自衛隊は派遣せざるをえない

日本は自衛隊をイラクに派遣せざるをえないと思う。対米協力ではない。それがわれ
われ自身の選択だからである。
先の総選挙で政権が替わったのなら(特措法の枠組みでの派遣に反対していた民主党
が政権をとったのなら)イザ知らず、「自衛隊の年内派遣」をマニフェストに掲げた
自民党が過半数を獲得したのだ。政権公約とは、そのくらい重いものだ。政権選択と
は、そのくらい重いものだ。
にもかかわらず派遣を中止するというなら、それ相応の理由が必要となる。「治安が
悪化した。日本人外交官が殺された」という理由で派遣しないとなれば、まさに「危
ないから行かない、危なくなければ行く」という程度の国である、ということにな
る。これは最悪である。

国民の多数は「やむをえない戦争もある」と理解しつつも、自衛隊の派遣には危惧を
抱かざるをえない。小泉政権のうつろな「説明」にも、社共のような「派遣反対」に
も納得できない。
問われているのは、「日米関係が大事だから」(北朝鮮問題でアメリカに助けてもら
わなければならないのだから、アメリカに協力するのは当然)とか、「国連の枠組み
でなら協力する」というような、自らの立場を「他人への態度」で代位するような非
主体性からの脱皮である。
マッカーサーは日本の民主主義は12歳だと言ったが、冷戦後、湾岸戦争を機に国際社
会とのかかわりを、ワシントン経由だけではなく考えはじめたわが国は、国際安全保
障の場において、ようやく12歳を迎えたにすぎない。国連安保理五大国はもとより、
国際秩序に係わるパワーゲームでしたたかに行動する「大人」に伍して立ち回る力も
ワザも能力もない。
「大人ぶって」立ち回るのではなく、12歳の主体性において、国際社会の矛盾や困難
と正面から(アメリカがどうこう、国連がどうこうではなく)向き合っていくことで
ある。そこから一国主義のアメリカに対して、ヨーロッパの老獪な「大人」に対し
て、そして国連に対して、12歳なりに言うべきことを持つということである。

■ 自衛隊派遣によって国際社会に何を訴えるべきか

12歳の主体性において、われわれは自衛隊を「戦地」に送る。それによって何を国際
社会に訴えるべきか。

アメリカのイラク戦争に大義があったのかどうか、という問題とイラクの復興支援と
は「別次元の問題」として考えるべきである。たしかにアメリカの単独行動主義が大
きなツケを残しているのは事実だが、「それみたことか」「自分の不始末は自分で決
着つけてくれ」(占領軍の責任で治安回復を)とタカをくくっていられる事態ではな
い。
アナン国連事務総長が言うように、現在はいったんヒビの入った国際協調を回復すべ
きときだ。それを妨げるような行動を戒めなくてはならない。
10月半ばに採択された国連決議1551(全会一致)はイラク復興のための国際協力を確
認し、来年六月の主権委譲を目指している。しかしこのままでは政権をめぐるイラク
国内の諸勢力の抗争が次第に激化し、無統治状態のまま「主権委譲」の美名の下にア
メリカはイラクを放棄するということになりかねない。六月の主権委譲のために整え
るべきインフラ(社会の安定)は、破壊される一方である。

カンボジアの国家再建、東チモールの新国家樹立では、いずれも戦闘当事者間の合意
が成立し、それによってはじめて国連の暫定統治が可能になった。そしてその下での
復興過程を通じてようやく、国民の選挙による正統な政府の樹立にこぎつけた。この
過程で日本は、大きな貢献をしている。
しかしイラクでは、この前提条件(戦闘の停止)が実現していないし、実現させる主
体すら存在しない状態で、イラク人の政府を選出しなければならない。破綻した国家
を再建するためのこれまでのプロセスが適用できない困難にどう立ち向かうかが問わ
れているだ。
たしかにこの困難を作り出した責任の多くは、アメリカの単独行動主義にあるといえ
る。しかしそれを非難するだけでは、イラク復興・安定は前に進まない。その意味で
は、フランスやドイツ、カナダなど、PKOの経験を積んだ国の責任も、問われるべ
きである。

自衛隊派遣は、ヨーロッパやアメリカのような「露骨な利害」を持たない日本が、イ
ラク復興の国際的な大義を訴えるメッセージとなるべきだ。フランス、ドイツ、カナ
ダなどに対しては改めてイラク復興への国際協調を訴え、アメリカに対してはそれを
妨げるような行動(復興事業の入札を連合参加国に限るなど)を取るべきでないと訴
え、タイやモンゴル、韓国などアジアからの派兵国と協力し、またエジプトなどの中
東諸国とも連携するという「目に見える」外交努力に全力を尽くすべきである。
政府にそれを要求し(小泉政権では「絶望的」ではあるが)、同時に各国の市民・世
論にも訴えるべきではないか。
かつてベトナム戦争の時には、国際的な世論が国際政治を動かした。八十年代初め、
ヨーロッパへの戦術核配備に反対する国境を越えた市民運動は、冷戦終結への幕を開
けた。
現在、イラク問題のみならずWTOや京都議定書のような問題でも、主要国も途上国
もそれぞれ個別利害にこだわって、国際的な枠組みづくりには消極的・無責任になっ
ている。国際情勢は全般的に深刻な状況を迎えているといわざるをえない。

12歳は12歳として、国際社会の「大人」に対して責任を果たすよう訴えるとともに、
「主権者として」各国の主権者に、それぞれの持ち場で国際社会の平和と安定のため
の責任を果たそうと呼びかけるべきだろう。

■ 民主党は政権政党への脱皮にふさわしい対応を

ヒビのはいった国際協調を回復するための乾坤一擲。自衛隊派遣をそのようなものと
して送り出す決断も責任感も、小泉政権には期待できない。うつろで無責任な「逃げ
まくり」の政治のツケを背負わされて、自衛隊は派遣される。
これは政権交代できなかったツケでもある以上、民主党には政権政党への脱皮にふさ
わしい対応をしてもらいたい。「特措法での派遣に反対」というなら、胸を張って送
り出せる条件、環境とは何か、それをどうやってつくるのか。日米同盟をどう再設計
するのか、国連や国際協調の現状をどう見るのか、その主体性とは何か等について、
堂々と論戦を張ってもらいたい。
派遣される隊員には使命感も覚悟もあるだろう。彼らに再び無念な思いをさせてはな
らない。そのためにも「政府のとるべき責任」について、民主党にはしっかり追及し
てもらいたい。それは万が一、小泉政権が責任を投げ出した時には、それを受けて立
つという覚悟の表明でもある。
(首相に派遣決定後、どうしても発言してほしいことは『イラクで起こるすべてのこ
とについて政府が全責任を持つ。部隊長以下の責任を問わない』ということだ。部隊
の安全確保のために、隊員全員に引き金を引くことを躊躇してほしくないからだ。逆
に追い込まれて躊躇すれば犠牲者がでる。/西元徹也・元統幕議長/12.5産経)

□お知らせ
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<政策ブックレット14>新時代のわが国の外交・安全保障政策
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添谷芳秀 慶応大学教授/西元徹也 元統幕議長

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石津美知子 ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp
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