シンポジウム「21世紀の東アジアと日本」、約800名の参加で盛会裡に開催

第1部・問題提起 「21世紀の東アジアをどう読むか」
  朝鮮半島の和平プロセスと東北アジアの多国間対話の可能性、日本の役割
                                小此木政夫氏
  アジア時代の米中日関係                   朱  建栄氏
  21世紀の東アジアへの「南の玄関口」としての沖縄をめざして  高山 朝光氏

第二部・パネルデイスカッション「21世紀の東アジアの中での日本の選択」

懇親会
 
 基調提起 戸田 政康氏(民主統一同盟・フォーラム地球政治21(準)代表)
 問題提起 小此木政夫氏(慶応義塾大学教授)
 問題提起 朱  建栄氏(東洋学園大学教授)
 問題提起 高山 朝光氏(那覇市助役 前沖縄県政策調整監)

 パネラー 森本  敏氏(野村総研主任研究員) 浜田卓二郎氏(元衆院議員)
      錦織  淳氏(前首相補佐)     松沢 成文氏(衆院議員)
      朱  建栄氏(前出)        小此木政夫氏(前出)
      高山 朝光氏(前出)
   司会 石津美智子氏(民主統一同盟事務局長)

【東アジアの歴史的情勢に正面から向き合う責任意識とエネルギー】
 七月十三日、シンポジウム「二十一世紀の東アジアと日本」の会場となった砂防会館には、約八百名が参加した。次世紀の日本の国家像を問う、こうした「重い」テーマで、これだけの人が集まったことに、多くの人が感嘆した。
 こうした「難しい」テーマで、しかも雨の日曜日、学生は試験期間中という悪条件がそろった中で、それだけの参加者を集めるためにはなによりも、これからの時代を担う主体者としての意欲と自覚を呼び起こし、育んでゆく活動が不可欠である。こうした継続的な活動と、的確な戦略的テーマを設定できるなら、政治的エネルギーを掘り起こすことは十分可能であることを、今回のシンポジウムは示したとも言える。
 東アジアは今、歴史的な激動の渦中にある。ここ数年、日本人のアジア観は「躍動」と「不安定」という両極端にブレている。アジアの歴史的な激動に対して、主体者として係わるのではなく、傍観者という位置、姿勢しかとれていないことが、その根本にある。国家の問題、時代の問いに対して正面から向き合うのではなく、その戦いを回避する方便として「自由」や「民主主義」を使うところからは、アジアの歴史的激動に対して不安、懸念、脅威という感性しか生まれない。
 国家の問題、時代の問いに正面から向き合うための戦い、時代の主体者としての自覚と喜びを手にするための戦い。「21世紀の東アジアと日本」は、そうした基礎の上にたって始めて、論じることができる。
 「21世紀の東アジアと日本」というテーマに対して、「逃げない」責任性を共通の基礎として、これからの日本の国益ー生き方について正面から論じる繙これが主催者が組織した本シンポジウムの基本構造であった。「○○をどう見たらよいのか」という類の傍観者的な係わりの余地を入れない講師、パネラーの提起や分析、発言は、本シンポジウムのこのような基本構造を明確にし、日本の国家像ー東アジア戦略を持つための方向と課題を鮮明にするものとなった。
戸田代表

 

第1部・問題提起 「21世紀の東アジアをどう読むか」
東アジア戦略を持つ媒介としての日米機軸論へと転換するための戦いとはなにか

 第1部は、今後の東アジアにおいてわが国がどう生きていくのか、いかなる道を選択するのかについて考えるための問題提起である。
 戸田代表の基調提起では、まず第一に、東アジアの歴史的情勢を正面から受けとめること、この中で日本の置かれている立場、問われている問題から「逃げない」責任性が強調された。日本が抜きんでたモデルの位置から「ジャパン・アマング・イーコールズ」(中西・京大教授)の存在へと移っていかざるをえないという東アジアの歴史的変化は、明治以来の「脱亜入欧」から「西側一員論」までの日本および日本人のアイデンティティーの根本的転換を要求するものである。これを「脅威」や「懸念」でしかとらえられないのか、それともアジアにイコール・パートナーを持ち、そのことによってわが国近代の形成を総総括する歴史的好機の到来ととらえるのか。
 ここに挑戦するためにこそ、日米機軸論の運用・展開を、従来とは変えなければならないのである。すなわち「西側一員論」の延長での日米機軸論から、東アジアの多国間関係とリンクした日米機軸論、わが国が東アジア戦略を確立する媒介としての日米機軸論へと、日米機軸論の運用・展開を従来とは転換する戦いである(基調抜粋参照)。
 中国の台頭をはじめとするアジアの歴史的な変化は、否応なしに、従来の日米機軸論の運用に転換を迫っている。すでにアメリカのアジア戦略も、冷戦時代までとは大きく変化している。軍事的プレゼンスは、「成長のアジア」における経済戦略を有利に展開するための手段の一つと位置づけられている。わが国がこれまでの延長での日米機軸論対米追随的路線をとりながら、個々の局面ではアメリカと異なる対応をとるという、なし崩し型の対応で乗り切れるほど、アジアとの関係もアメリカとの関係も甘いものではない。
 では、どのような問題をどう扱ってゆけば、東アジア戦略とリンクした日米機軸論の運用へと転換することができるのか。第一部の問題提起は、それぞれの領域をこの視点から分析し、またその糸口を示唆するものとなった。
 
【朝鮮半島の和平プロセスと東北アジアの多国間対話の可能性、日本の役割/小此木政夫氏】
 小此木政夫氏は、北朝鮮の政治体制の特異性を分析するところから、「危機のシナリオ」について提起した。そして戦争や内部崩壊ということが、周辺諸国に及ぼす影響について、とりわけ日韓の「連鎖崩壊」について注意を喚起した。

 「北朝鮮が崩壊した場合、統一コストが何千億ドルだということを彼ら(韓国の人々)は計算するわけです。今だったら四千億ドルで済むけれど、あと十年たったら一兆ドルかかるとか。しかしその計算をしている人たちを見ていると、北が崩壊しても韓国の経済は、今のまま維持されるという前提で計算している。だから統一のコストはどれくらいだといっても、それほど目の色を変えない。しかしそんなことは絶対ないんです。相手が崩壊すれば韓国は非常に大きな痛手を負う。ウォンも暴落すれば株も暴落するでしょう。統一のコストが何千億ドルだということになってくれば、韓国経済は大変だということで、外国資本も撤退していくかもしれない。だから韓国が単独で統一コストを支払うことは、私は不可能だと考えています」
集会全景
 韓国の危機は、日本にとっても無縁ではない。財政支援は、日本が中心的役割を担わざるをえない。北朝鮮の突然の崩壊は、韓国経済の崩壊をもたらし、韓国経済の破綻は日本の財政的な破綻につながりかねない。これが「連鎖崩壊」のシナリオである。
 日韓には、この連鎖崩壊の危機を回避し、統一コストを分散させるための戦略的協調が不可欠となっている。この点で、戦争さえ回避できればよいというアメリカとは、当然、戦略的利害が異なってくる。ソフトランディンクという意味は、アメリカにとっては戦争回避のシナリオであり、北朝鮮が内部崩壊しても戦争が起きなければ、その後に生じる問題は周辺諸国が中心になって解決すればよいということである。
 「われわれがソフトランディングという場合には、もっと長いプロセスを想定しているわけでありまして、北朝鮮が戦争や内部崩壊の道ではなく、開放改革の道に進み、体制が徐々に変化していくような、十年、20年かがりのプロセスです。これは体制移行のプロセスであると同時に平和を維持していかなくてはならないプロセスでもある。どうやってそういったプロセスを動かすか、あるいはそういった体制をつくっていくのかというのが、日韓をはじめとする周辺諸国にとっての最大の課題だと思います」

【アジア時代の米中日関係/朱建栄氏】
 香港返還に対する各国の視点は、政治的自由を強調する欧米と、植民地支配からの解放を強調する中国のモノサシの違いを、さまざまな形で浮き上がらせると同時に、欧米的なモノサシだけで、今後の香港および中国の動向をとらえることがはたしてできるのか、という問題も提起している。
 「一国二制度」というかつてない試みは、中国自身の今後の発展にとっても、重要な意味を持つ。第一に「一国二制度」というのは、いわば中国の国際公約であり、その実行は国際社会における中国の信用を左右することになる。第二に、返還後の香港が中国に及ぼす影響である。国有企業の改革など、改革開放政策も正念場を迎えているが、経済さらには政治の改革の進展に、香港がさまざまな形で影響を及ぼすことが考えられる。言い換えれば、一国二制度の下で、中国自身も変わっていく(いかざるをえない)ということである。 こうした中で中国は、米中日という三角関係をどう見ているのか。冷戦後の世界は、一極構造ではなく多極化に向かっており、その中で矛盾を抱えつつも対等な多国間関係をつくっていく方向に進むというのが、基本的な観点である。その中でアジアでは、米日中が責任あるパワーとして対応すべきである。
 日米安保の再定義、防衛指針の見直しについては「現状黙認、拡大反対」ということである。朝鮮半島の問題については、軍事的対応という視点だけでは狭すぎるし、朝鮮民族自身のイニシアティブをもっと尊重すべきではないか。
 日本については、第1にどの国とも対等に対応していくという意識の変革を求めたい。脱亜入欧以来、日本の他の国との関係はどうしても「上下」の関係になりがちで、同じ目線、対等な意識がはたしてどれだけあるか。アメリカについても、もっと相対化すべきではないか。アメリカはアメリカの国益を第一として、日米関係あるいは他の関係はその枠内に位置づけられている。日本もアメリカとの関係を絶対的な前提にしていたのでは、選択肢を狭める結果になる。
 第2に長期的にみれば、日本の役割はアジアと欧米との橋渡しとしての重要な役割がある。そのためにも、アジアと欧米との間でバランスをとったものの見方をしていく必要がある。

【21世紀の東アジアへの「南の玄関口」としての沖縄をめざして/高山朝光氏】
 沖縄は県として、基地問題の解決のために本土やアメリカの政府と度重なる交渉を続け、またフィリピンやグァムなどとも意見交換をし、あるいは台湾をはじめとする近隣地域との間での経済的なまた人的な交流を活発に進めてきた。こうした経験を通じて見えてくる問題をお話したい。
 沖縄は軍事戦略上、「要石」と言われる位置にあるが、同時に東京より上海や台湾に近いという「南の交流拠点」としてのポテンシャリティーを有してもいる。
 現在、沖縄の米軍基地はアメリカの世界戦略を支える発信基地となっている。日米安保の再定義で沖縄がもっとも懸念したのは、これが固定化されることである。それが「グローバル展開」ということと、「在日米軍4万7千人体制」ということ。基地用地の強制使用にかかわる代理署名を知事が拒否したのも、こうした問題を提起するためであり、あわせて復帰後も一向に減らない基地の現状を訴え、解決の道すじを見いだすためのものであった。
 これまで基地の整理縮小を訴えて交渉してきた経験から言うと、アメリカの戦略の中に日本が組み込まれているという感想を持たざるをえない。アメリカの戦略は、今ではアジア経済へのに重点がある。
 今後の方向ということで言えば、アジアとの交流の歴史、それを基礎にした信頼関係を活かした「南の交流拠点」として役割をはたしたい。平和の礎には、沖縄戦で亡くなった人の名前が国籍を問わず刻まれているが、「敵」である米兵の名を刻むことに反対する声は、ついに聞かれなかった。それは沖縄のもっているヒューマニズムだと思う。こうしたことを基礎に、アジアの人々と同じ目の高さで交流する、そういう交流拠点としていきたい。

第二部・パネルデイスカッション「21世紀の東アジアの中での日本の選択」
新時代の国益をシビアに、正面から論じるために
 
 第2部では、第1部の問題提起をうけてもっぱら「日本の選択」についてディスカッションが進められた。
 まず前提認識として、冷戦後の国際社会にあっては、旧来の「陣営」や「イデオロギー」に代わって、各国の国益が全面に出てきたこと、同時にその国益を貫徹するために各国は、多国間の協調・協力関係を不可欠とするということである。すなわち「地球益と国益を結びつける」戦略が求められるのである。
 国際秩序にあっても次の新世界秩序が未形成である間は、一方で冷戦時代の同盟関係を強化するとともに、他方で多国間関係によってそれを補完するというプロセスが進行している。そこでは対敵共同ではなく、価値観の共有が求められることになる」(森本敏氏)
シンポジウム壇上
 日米安保を軸としつつも、同時にアジア特に北東アジアにおける多国間の安全保障の枠組みをつくらなければならない。問題は北朝鮮危機やガイドラインといった具体的な課題をどう扱えば、そこへの糸口が開けるのか(どう扱えば、可能性が狭められるのか)ということである。 「四者協議、そして六者協議というものが、将来的には北東アジアの多国間安保に発展していくだろう。ある意味で機は熟している。東南アジアとは違って、やらざるを得ない、放っておくわけにはいかないという意味で」「日本が一番利害を共有しているのは韓国であり、韓国との協力関係は重要。そのためには、双方の国内にある偏狭なナショナリズムの克服が課題。反北朝鮮で嫌韓というのでは、戦略がないということ」(小此木政夫氏)
 「中国はAPFを通じて、多国間協議の進め方を学習してきた。多国間関係をつくるには、大国がイニシアティブをとるべきではないというスタンスになりつつある。
 日米安保再定義に関して、中国にとっては『台湾』が問題。台湾まで範囲が拡大されると、それは本当に平和にとって有利なのか、それとも中長期的に一種の軍事競争を刺激する結果になるのか。その見極めが必要である」(朱建栄氏)


 日米安保の再定義は、日米安保の目的を日本の防衛というところから、東アジアの安定に大きく転換させたものである。問題はそれを、東アジアの多国間関係とどうリンクさせるのかということであり、他方ではこうしたことに取り組む上で、日本社会がどういう問題をかかえるのかということである。
 「日米安保再定義で、これまでの二国間同盟から実質的に、日本とアメリカがアジア太平洋地域の安全保障にかかわるということに踏み込んだ。沖縄の位置づけも、その拠点ということになっている。これについて議論が提起され、コンセンサスができているとは言えない。戦略や国家目標があいまいになってしまうのは、結局建前と本音を使い分けてきたから。正面から憲法論議をしたほうがよい」(浜田卓二郎氏)
 「モデルのない時代、今までの延長上に、新しい戦略を考えることはできない。軍事力だけでは抑止できない不安定要因に対処していく、新しい時代の役割を考えなければならない」(錦織淳氏)
 「ガイドラインの見直しがなぜ必要なのか、政治の責任として真摯に説明する必要がある。同時にアジアの多国間安保にむかって、日本が努力すべき。また憲法問題から安全保障についてしっかりとした議論をすべき時」(松沢成文氏)
   「ガイドラインについては、憲法の問題を議論することも重要だが、その前にやるべきことは、日本の国とは何なのか、日本の国益とは何かをきちんと議論すること。ここがあいまいだから、コンセンサスができない。ガイドラインについても国益から判断して、ここまではいっしょにやる、ここからは支持できない、単独でやって下さいということが必要。つまり日本として、アジアにどうコミットしていくのが国益になるのかについて十分な議論がないから、アメリカに引きずられて結局、日中関係を悪くするのではないか、アメリカの戦略に利用されるのではないかという議論になる」(森本敏氏)
 まさに問われているのは、これからの日本の国益とは何か、東アジアでどのような国として生きることが日本の国益なのかを、シビアに正面から論じることが求められている。
「日本の選択」「日本の国益・国家戦略」を正面から論じる政治潮流−−政治家と主権者の運動−−をつくること、それを外しては政界再編にも活路は見いだせない。

 終始熱心に討論に聞き入っていた参加者の姿は、こうした議論を真剣に受けとめ、自分たち自身の問題として考えようとする主権者はいるということ、そしてそこに働きかける政治活動(冠婚葬祭、あいさつ回りの「政治活動」だけではなく)は十分、成り立つということを示すものでもある。
 国家の問題を最低の基準にして政治を論じる、時代の問いに正面から向き合うという姿勢と雰囲気を堅持しながら、さらに九月の戦略セミナーを経て論点を整理し、十二月七日の「新たな国づくりビジョン」の骨子の発表、来年のフォーラム・地球政治21の起ち上げへとつなげていこう! より多くの皆さんの積極的な参加・協力をよびかける!

懇親会
 シンポジウム終了後、約90名が参加して懇親会が開催された。そこここでシンポジウムの感想や意見を交換する風景は、シンポジウムでの政治的緊張とは別の形で、時代の問いに主体者として向き合おうとする参加者の真摯な姿勢と熱気を感じさせるものであった。
 戸田代表は、アジアの歴史環境の変化を正面からとらえる姿勢を強調し、地球益と国益、郷土愛を結びつけていく戦略に挑戦する気概を呼びかけた。沖縄からお出でいただいた高山朝光氏は、シンポジウムでは多くの人々が熱心に話を聞いてくれたことに謝意を表すとともに、沖縄が中国とも台湾とも親密な関係を持っていることを紹介しながら、「南の玄関口」としてアジアに開かれた沖縄を目指す思いを、改めて熱く語った。
 乾杯のあいさつにたった錦織淳氏は、あれだけのパネリストを集めると普通は論点が拡散してしまうものだが、今回のシンポジウムでは論点がかなり整理されたのではないかと感想を述べ、沖縄の未来を祈念して杯をあげた。
 この日会場で沖縄物産を販売し、なかなかの盛況であった豊里盛泰氏のあいさつに続いて、環境政策研究会などを共に主宰している青山俊介氏(エックス都市研究所代表取締役)は、一方で天下・国家という「難しい」ことを論じながら、もう一方では人権ということも大切にしながら地道な活動を続けていると、民主統一同盟への評価を述べ、環境問題に戦略的に取り組んでいく今後の協力関係にも言及した。
 中国からの留学生支援の活動に取り組んでいる上原信夫氏のあいさつに続いて、第1回国費留学生として来日し、その後中国で教鞭をとった後、再来日し、現在は城西大学でアジア経済を教えている張紀潯氏は、参加者の多さに感心するとともに、こうした戦略的テーマを正面から取り上げるなら人を集めることができることを確信したと述べた。日中経済発展センターの理事として、日中間の交流活動に努力している張氏にとって、人集めの活動の大変さはよくわかる。
 シンポジウムでは、在日本大韓民国民団中央本部副団長の金容雨氏が来賓としてあいさつしたが、懇親会では参政権運動などを中心的に進めてきた在日韓国青年商工人連合会の高泰金民氏、柳時悦氏があいさつした。地球益と国益、郷土愛を結びつける国家像・戦略に照応した多民族・多文化共存型の社会にむけて、70万といわれる在日韓国・朝鮮人との共生社会をどうつくるかは、重要な課題である。台湾から参加した胡春木氏、陳清香氏は、歴史に翻弄されてきた台湾人の心情を訴えた。中台問題は歴史的な経緯も含めて簡単な問題ではないが、東アジアの多国間関係をつくりあげることとリンクさせながら、当事者間の対話を進めていくことに努力する以外にない。法政大学で経済を教える胥鵬氏は、経済の発展・相互依存関係の深化が、戦争を不可能にする条件をつくると述べて、皆が豊かでハッピーになれるアジアをつくろうと呼びかけた。


 シンポジウムとはまた違った雰囲気の中で、沖縄、中国、台湾、韓国(在日)といった国際的な拡がりをもった参加者と、日本の主権者との和気あいあいの中にも真摯な討議が、会場のあちこちで繰り広げられた。シンポジウムのテーマを自分自身も勉強しながら、それを仲間に訴えて参加者を集めるために活動してきた学生メンバーも、今後の展開に向けて決意を述べた。
 最後に佐藤泰・民主統一同盟幹事は、30年にわたって冷戦後の日本に備えてきた戸田代表の戦略的活動は極めて「希少価値」の高いものであるが、今や「希少価値」としてではなく、次の時代を切り開く「力」へと組織していくことが決定的な問題となっていると述べ、そのための協力を強く訴えた。
 戦略的な方向は次第に明らかになりつつある。「戦略的な方向が鮮明になった上で、そこへの入口論までが明らかになった」繙多くの参加者の感想は、こうしたものとして収斂されるだろう。戦略的方向を実行する力と組織、それが何よりも問われている。フォーラム・地球政治21は、それを天下・国家・時代を語れる主権者運動の中からつくりあげようとするものである。そうした思いを共有しつつ、レセプション参加者の歓談は、いつまでも続いた。この雰囲気を堅持しつつ、九月セミナーそして12月7日の集会の成功へ!