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メルマガ♯がんばろう、日本!         №259(20.3.2)
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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 感染症との戦いにおいても問われる、民主主義の復元力とは

● 感染症との戦い方 
忖度・同調圧力ではリスクコミュニケーションはできない   
● 「コロナが大変なときに、いつまで国会で『桜』をやっているのか」という声に、
どう向き合うか

□囲む会のお知らせ
 3/10の「囲む会」(ゲストスピーカー 小川淳也・衆院議員)は、中止とします。

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感染症との戦いにおいても問われる、民主主義の復元力とは
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【感染症との戦い方 
忖度・同調圧力ではリスクコミュニケーションはできない】

新型コロナウィルス感染症(COVID19)が世界中に広がりつつある。対策のフェーズは「封じ込め」から、急速な感染拡大をいかに防ぐか、というところへ移っている。だからこそ、ここまでの対応を検証する必要がある。
中国で本格的な対応が始まったのは、最初の感染報告から40日以上経ってから。情報隠蔽や官僚体質による初期対応の失敗が、大規模な感染拡大を招いた大きな要因だといわれている。異例のことだが指導部はその誤りを認め、思い切った対策を打っている。
日本においては、クルーズ船での検疫の失敗を検証することが不可欠だ。失敗の教訓も含めて的確な情報開示がなされなければ、かえって不信が増幅する。それは陰謀論や根拠のないデマが蔓延する温床を生み、パニックにもつながりかねない。

結果から見れば、クルーズ船における「水際作戦」は失敗だった。むしろ船全体を「ウィルス培養のシャーレ」にしたとさえ言われている。しかし、乗船した感染症診療の第一人者の医師が船内の状況を批判したのに対して、政府は「対応は適切」「間違っていない」「決まったことをちゃんとやっている」と繰り返すだけ。
専門的知見からの検証は専門家に任せるべきだが、必要なのは「失敗から学ぶ」ことだ。新型ウィルスというこれまでにない脅威である以上、試行錯誤は当然である。ここでの大きな障害は、「一度決まったことは決まったこと」、「現場は必死でがんばっているのに水を差すな」という、異論をはさむことを許さない同調圧力である。
統計データの改ざんや公文書の廃棄が頻発する政府に対しては、クルーズ船での検疫にかかわる資料やデータの保管・保存が強く要請されるという事態でもある。記録がなければ検証することもできない。「なかったこと」にするところには、忖度の同調圧力が蔓延する。

中国では、新型ウィルス対策に共産党中央が乗り出した日付が改ざんされた。安倍政権では、政権に近い高検検事長の恣意的な法解釈による定年延長をめぐって、日付の「言い間違い」や修正が問題になっている。公文書としてはありえない「日付なしの文書」や「口頭決裁」に至っては、もはや法治国家の態をなしていないといわざるをえない。
野党の追及をはぐらかすだけの答弁を繰り返していれば、肝心なときに国民の不安に正面から向き合うリスクコミュニケーションはできない。閣僚が対策会議を欠席して地元行事に出席したり、首相が対策会議に冒頭だけ顔を出した後、連日会食に明け暮れる「やっている感」の演出では、政府の基本方針が現時点では妥当であったとしても、到底伝わらない。

今や中国でさえ、中国疾病管理予防センターが地理情報システムを使って中国国内の感染症発生数のほか、回復者数や死亡者数などを随時更新、公開して、自宅待機を強いられている市民に情報提供している。(一方で記者が追放されたり、弁護士や学者、活動家が拘束されたりしているのだが。)
さらに香港では、上記のようなオープンデータに、感染症外来のある大病院の待ち時間、予約や健康相談の電話番号などもマッピングされているという。また台湾ではハッカーが協力してマスク在庫マップを短時間で作成し、必要な人に行きわたるようにしたという。背景には、天才プログラマーで「ひまわり運動」にも関わったオードリー・タン氏が政権に参画していることも大きいだろう。

社会全体で感染拡大を抑えるためには、上意下達や中央集権、忖度や同調圧力ではなく、個々人の自覚や自主的な判断、リテラシーが不可欠であり、そのための前提は的確な情報開示にほかならない。簡単にデータが改ざんされたり、公文書が消えたり、トップの「言い訳」に合わせて官僚が辻褄合わせに走るようでは、リスクコミュニケーションの基本的前提が崩壊しているといわざるをえない。

【「コロナが大変なときに、いつまで国会で『桜』をやっているのか」という声に、
どう向き合うか】

 「コロナが大変なときに、いつまで国会で『桜』をやっているのか」という声は、少なくない。だが、はたしてそうだろうか。「ご飯論法」が流行語大賞にノミネートされたように、説明のはぐらかしや拒否、繰り返しは、もはや政府答弁のスキルと化しつつあるが、これでは危機管理におけるリスクコミュニケーションは不可能だということが、明らかになりつつあるのではないか。
 さらに、トップの「言い訳」に合わせて官僚が辻褄合わせに走るという構図は、フェイクに沿って現実が作られるということであり、政府にとっての「不都合な真実」は簡単に「なかったこと」にされるということだ。

 「(ポスト真実について)最近の議論では、『現実』がフェイクによって作られる、という側面も注目されるようになっている。ポスト真実とは、『信じたいものを信じる』という心理的態度の問題だけでなく、能動的な『現実』構築実践の問題なのである。
・・・『反社会的勢力』の参加が問われると、『反社は定義困難』と閣議決定される。質問通告後に対象とされた文書がシュレッダーにかけられる。『桜を見る会』に参加したとされる人々のブログ記事が削除される。
 ポスト真実は、今やある特定の『現実』を作り出すための能動的な実践を組み込むメカニズムと化した。今回の答弁の拒否や繰り返しは、まさに『「桜を見る会」は問題ではない』という『現実』を作り出す点において、これらの実践と同じ機能を果たす」(山腰修三 朝日2/14)。

 「敗北」を「転戦」、「全滅」を「玉砕」と言う大本営発表が大手を振る状況は、「遠い昔」の話ではない。
だが問題は「その先」にある。中国においては、共産党の都合で「現実」が作られることは誰もが知っている。だからこそ市民は、事実を知る/知らせるためのリテラシーや術を鍛える。日本ではどうか。
戦前も、少なくない国民は大本営発表を信じていなかった。だがその不信は社会を変える力にはならなかった。もちろん当時は特高警察や憲兵などの強力な監視機構があったので、国民は大本営発表を信じている振りをせざるをえなかったということは言える。では今はどうか。政府の答弁を「大本営発表だ」というのは分かりやすいかもしれないが、社会を変えるには「不信」を変革に結び付ける回路が不可欠なのだ。

「ここで留意すべきは、この『現実』構築実践を担うのが政治家や官僚たちだけではないという点であろう。・・・(メディアだけではなく)実は問題は私たち自身の関与なのである。
1月の毎日新聞の世論調査によると、『桜を見る会』について『国会で議論を続ける必要はない』という回答が44%に達し、議論を続けるべきだという回答(45%)と拮抗している。この結果は私たちの常識感覚がポスト真実に適応しつつあり、そうした状況を無意識ではあるものの積極的に作り出していることを示す」(山腰 前出)
感染症対策は自身や家族の健康や生活に直結する問題ゆえに、多くの人は「自分事」として考えリテラシーも高めるだろう。おかしな発表には不信感を抱くだろう。問題は「その先」だ。

「たしかに今日、特高警察も検閲制度も存在しない。ただ、市民社会を分断し、野党勢力を弱体化させる、さまざまな試みについてはどうだろうか。『もうどうしようもない』という気分が瀰漫(びまん)すれば、せっかくの不信感も孤立するほかない。
・・・われわれは今も昔もけっして愚かではない。おかしな発表には当然不信感を抱く。だけれども、その不信感を社会の変化に結びつけるには、さまざまな仕組みや地道な働きかけがなければならない」(辻田真佐憲 ジャーナリズム 2019年6月号)。

「コロナが大変なときに、いつまで国会で『桜』をやっているのか」という声には、くらしの現場、自治の現場でこそ向き合っていくべきではないか。感染症対策の危機管理はまさに「自分事」であり、だからこそ「平時」からの関係性が問われる。それは防災も同様だろう。人口減・少子高齢化などの「不都合な真実」に「平時」から向き合っていなければ、危機管理の局面では上意下達―指示待ち、思考停止になる。

激甚化する災害に対する対応でも、自治体の役割はますます大きくなっている。上意下達―指示待ち、思考停止になる地域・自治体と、自主的に判断・行動する地域・自治体との差は大きい(合併の検証、広域連携のあり方にも関わる)。リスクコミュニケーションの力量の違いもでてくる。
感染症対応においても、厚労省任せは能力的にも限界だろう。地域によって感染の状況も異なっている。グローバル化に伴って今後もこうしたリスクが見込まれる以上、地方が主体的に公衆衛生の現場を担う体制も必要になってくるだろう。その担い手としての地域の力、基盤としての地域の持続可能性をどう維持していくのか。(本号、幸田先生、岡田先生の「囲む会」参照。)

「平時」からのこうした地域自治のコミュニケーションのなかでこそ、「コロナが大変なときに、いつまで国会で『桜』をやっているのか」という声と向き合い、社会変革への回路へつなげていくべきだろう。
これは民主主義の復元力の問題でもある。代議制民主主義の機能不全が指摘されているが、その「弱点」を補うのはポピュリズムではなくボトムアップの社会運動だろう。
例えば米大統領選の民主党候補争いで勢いづくサンダース氏は、ウォールストリート占拠運動にかかわった若者の支持を背景に、前回以上に幅広い支持を集めている。サンダース氏にカリスマ性があるのではなく、若者が彼を押し上げている。

台湾の蔡英文政権には先述したオードリー・タン(唐)氏のほかにも、「ひまわり運動」のメンバーが参画し、市民の政治参加を広げている。
「偽情報の多くは中国本土から配信されている。にもかかわらず、台湾では独立派の政治家の支持率が上昇している。唐氏はここに政治家と市民の相互関係があるとみている。政治家が一般市民の政治への直接参加の機会を広げれば、市民は政府への信頼をより強めるのだ。ソーシャルメディアが『偽の敵対感覚』を生む以上に、台湾では分散化技術を通じて人々が『現実を共有している感覚を持てる』ようになってきたと唐氏は言う」(ラナ・フォルーハー 日経2/21)
 彼らがやっているのは民進党の支持基盤拡大ではなく、台湾の民主主義という「共有地」を耕し、世代を超えて主権者を生み出していくことだ。こうした社会運動のなかから、民主主義の復元力をつくりだしていけるか。それが私たちに問われている。

(「日本再生」490号 一面より)
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 囲む会のお知らせ 
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□第209回 東京・戸田代表を囲む会
 「安倍政治をどう検証し、対峙するか」(仮)
 3月10日(火) 1845から
 ゲストスピーカー 小川淳也・衆議院議員

*** 中止します ****
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総会のお知らせ  民主主義の復元力をどう準備するか
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□第九回大会 第二回総会
 5月9日(土) 1000から1800
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)

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外交・安全保障シンポジウム
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4月11日(土) 1300から1700
TKP御茶ノ水カンファレンスセンター ホール2B
中西寛・京都大学教授  李鍾元・早稲田大学教授
川島真・東京大学教授  大庭三枝・東京理科大学教授
吉田徹・北海道大学教授
参加費 2000円

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-- 石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp