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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 安倍政治のたたみ方 
  立憲民主主義の社会関係資本とその経済的条件をつくりだそう

●うそ、大うそ、統計のうそ  安倍政治のたたみ方
●アベノミクスの総括から、人口減少時代の経済政策へ 
 政策思想の軸の転換

□ 囲む会 (3/19 ゲストスピーカー 小川淳也・衆院議員)
  シンポジウム(外交・安保)のご案内
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安倍政治のたたみ方 
立憲民主主義の社会関係資本とその経済的条件をつくりだそう
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●うそ、大うそ、統計のうそ  安倍政治のたたみ方

 英語の警句に「うそ、大うそ、統計」という言葉があるそうだ。小さなうそ、大きなうそ、客観的に見える数字のうその順に罪が重い、という意味だという。
 明らかに分かる「うそ」(モリ・カケ)、調べれば辻褄が合わないことが分かる「大うそ」(裁量労働制や技能実習生のデータ)に続いて、とうとう法律で定められた基幹統計の手法を変更・かさ上げしてしまうという「統計偽装」が発覚した。いつ、だれが、どのように、という追及もさることながら、実績をよく見せたい官邸の意向に政府全体が支配されていることが大きな問題だ。

 統計は、近代国家が国力の基盤(人口や生産力)を計測する必要から発達したものだが、同時に時の為政者の恣意的な判断を防ぎ、客観的な指標に基づいて政策を決めるうえで不可欠なものとして位置づけられてきた。為政者の家来ではない、独立性を持つ近代官僚制が整えられた理由のひとつは、為政者の意向に左右されない客観的な統計の取得管理のためでもある。この根幹が大きく揺らいでいる。

(立憲民主主義が機能するためには本来、政策決定と政策分析・情報分析との間に隔壁が必要だ。「平成デモクラシー」で執政権は強化されたが、それに均衡する形で執政権から独立した政策分析能力をどう確立するか―基本的に議会に立脚して―ということは、統治機構を作りこんでいくうえでの「平成デモクラシー」の主要な総括視点のひとつでもある。第九回大会記念シンポジウム第二部パネルディスカッションでも、この点が論じられた。)

 問題になっている経済統計については昨年秋、日銀が疑念を持ち、内閣府に元データの提供を求めたものの、内閣府が拒否したままになっている。強い独立性を持つ(はずの)日銀は、偽データを提供された「被害者」を装ったままではいられないはずだ。疑わしいデータを修正せず放置すれば、対外的にも中央銀行としての信頼を欠くことになりかねない。すでにウォール街では「日本の統計は40パーセント、フェイク」とも言われているという。債務残高を偽っていたことが発覚したギリシャが危機に陥ったのは、たかだか十年ほど前の話だ。

 統計手法の変更・かさ上げについて、アベノミクスの「粉飾」とまでは言えない、「厚化粧」程度だ、という見方もある。しかし「厚化粧」だとしても対応次第では、日本経済に対する信頼性は大きく揺らぐ。ただでさえこれまで、アベノミクスの実績を見せるために為替市場を歪め(異次元の金融緩和で円安誘導)、国債市場を歪め(日銀で買い支え)、株式市場を歪めてきた(日銀と年金で買い支え。今や上場企業の四割で日銀が大株主)挙句の果ての「厚化粧」なのだから。

 道理にあわないことを都合のいいようにこじつけることを、牽強付会(けんきょうふかい)という。恣意的な政策判断を正当化するためにデータを操作し、それを言いくるめたりごまかしたりし続けているうちに、もはや「政策目的」のいかんではなく「これしかない」と言い募ることが目的になり、政策過程は「貧すれば鈍する」となり、政策はますます劣化していく。「安倍一強」の帰結は、こうなりつつある。

 「安倍一強」の検証―安倍政権のたたみ方は、「貧すれば鈍する」政策過程に歯止めをかけ、現実認識の歪みを正す糸口にしなければならない。たとえば沖縄県辺野古の埋め立て。軟弱地盤の問題などで基地建設自体の実現可能性さえ疑問視されているなか、県民投票で示された圧倒的な民意を踏みにじって工事を続けることは、もはや目的が「普天間移設」でもなければ「米軍基地建設」でさえなく、沖縄の民意をねじ伏せて「これしかない」を押し通すことにあるのではないか、とさえ見えてくる。
 「これしかない」を正当化しようとすれば、現実認識は歪む。複数の選択肢を検討してこそ、現実認識の歪みは正される。「辺野古なしの普天間返還」の可能性をどう探るのか。それこそ政治の役割だ。本土の現実認識も問われる。

 現実認識の歪みの危険性は、外交面でも大きい。安倍政権は日露平和条約を政権のレガシーにしようと目論んでいるが、ラブロフ外相が強硬な発言を繰り返していることを見ても、ロシア側の譲歩は考え難い。その現実認識を歪めたまま、相手に合わせて「固有の領土」と言わないくらいのことで、なんとかなるものではないだろう。
 最悪といわれる日韓関係についても、対韓強硬論をあおるだけでは事態の背景にある構造要因を見誤る。日韓基本条約に基づく65年体制といわれるものが、米中関係を含めて構造的に変容しているなかで、日韓の今後の共通利益を見出せないことは、相対的に日本の外交力を弱めることになるという現実にどう向き合うのか。対北朝鮮政策についても、「最大限の圧力」「対話のための対話は無意味」としてきた安倍政権のこれまでの政策から、米朝首脳会談という新しい現実にどう向き合うかが問われる。(4/14シンポジウムでは、外交安全保障にかかわる現実認識がテーマになる。)

 現実認識の歪みを、さらに言いくるめたりごまかしたりし続けるのか、「新しい現実」に向き合うところから始めるのか。「うそ、大うそ、統計のうそ」は、安倍政治をどうたたむかという問題でもある。

●アベノミクスの総括から、人口減少時代の経済政策へ 政策思想の軸の転換

 毎月勤労統計の不正を機に、アベノミクスの評価が議論されている。野党は、「実質賃金の伸びはマイナスだから、アベノミクスは失敗した」とし、首相は、「総雇用者所得が増えているから、アベノミクスは効果を上げている」と主張している。確かに2018年に総雇用者所得は増えている。しかしそれは女性の非正規就業者数が増えたからで、それによって平均賃金は押し下げられた。平均賃金が下がっても雇用者数が増えれば、賃金に雇用者数を乗じた総雇用者所得は増える。平均賃金の下落=雇用の質が問題視されているのに、総雇用者所得が増えていると答えるのは、典型的な「ご飯論法」だ。(「朝ごはんを食べましたか」「ご飯は食べていません(パンは食べたけど)」というすり替え論法。)

 「問題の本質は、女性や高齢者が増えているために賃金が下がることなのである。これは、後で見るように困窮度の高まりと解釈できる。したがって、望ましいことではない。事実、18年の実質消費はほとんど増えていない」「いずれにせよ、家計の状況は好転していないのだ。だから、消費が増加しないのである。そして、このことこそが、日本経済の最大の問題であり、アベノミクスが効果をもたらしていないことの何よりの証拠だ。この点をこそ、問題にすべきである」(野口悠紀雄 ダイヤモンドオンライン2/14)

 「戦後二番目の長期景気拡大」と言われる一方、「好景気を実感できない」人々が大半なのは、賃金が伸びないからだ。むしろ実質賃金は低下している。名目賃金が増えても、それ以上に物価が上昇すれば、実質賃金は目減りする。経済成長が必要なのは、人々がまともに働けば暮らしが成り立つ社会にするためだ。「改革なくして成長なし」という小泉構造改革からアベノミクスまでの、国規模のGDP拡大をめざし、経済成長の結果の分配を期待する経済政策からの転換が求められている。

 経済成長は人口増加要因と生産性向上要因による。人口増加時代には経済のパイは自然に大きくなるが、人口減少時代には人口減少を補うだけの生産性向上がなければ経済は縮小する。「人への投資」が重要な所以はここにある。

 もうひとつ、生産性向上のための政策として提起されているのが、最低賃金の引き上げだ。デービッド・アトキンソン氏は以下のような趣旨を述べている(東洋経済オンライン 2/1)。
 先進国では、生産性を高めるための政策が重視されている。生産性と最低賃金との間には、生産性が高くなれば所得水準が上がり、最低賃金も引き上げられてきという強い相関関係があるからだ。ただし、最低賃金の上昇は、生産性向上の結果だと考えるのは、最低賃金を労働政策、強いて言えば貧困対策と捉える考え方だが、今は逆の発想、つまり最低賃金を経済政策と位置づける傾向が強くなっている。
 生産性は自然に向上するものではない、意図的な方向付けが必要になる。国が政策として、企業経営者に生産性を上げるよう誘導する、その手段として最低賃金の引き上げが重要なポイントになる。なぜなら最低賃金の変動は、全企業がその影響を免れないからだと。

 賃金=人への投資を経済成長の結果の分配としてではなく、経済成長の起点とするような経済政策思想の軸の転換こそ、アベノミクスの総括とすべきではないか。

 同時に、1パーセントの富裕層が世界の富の82パーセントを独占するようなグローバル資本主義に対する根底的な批判と、それに替わる方向性を実生活の手ごたえを伴って語ることが伴わなければならない。
 グローバル資本主義に棹差す形での「世界で一番企業が活躍しやすい国」(2013年安倍総理所信表明演説)でも、総雇用者所得は増やせるかもしれない。しかしいったん投資された資金の多くは投資も集積もされず「回転ドア」のように出ていってしまう。利益は本社のあるニューヨークやロンドン、フランクフルト、国内でも東京に集まる。このような地域から出て行くお金、いわば「出血」している状態から、その一部でも地域に再投資するという地域内経済循環の構造をどう作りだせるか。グローバル資本に従属しない地域経済自治、産業自治といった領域を作り出せるかどうかは、まさに自治力が試されるところだ。

 またそのためには国単位のGDPや株価に還元されない、地域経済の実態を的確に把握しなければならない。国のGDPを人口で割っても地域経済の姿は見えない。地域のなかでお金がどう回っていて、地域外への流出を食い止めて再投資に回せる部分はどこにあるのか。あるいは地域で「稼げる」ところは何か。それを知ることは、人々が自らの意思でお金の流れをコントロールし、地域を経営することに参画していくことでもある。
 アベノミクスの総括から人口減少時代の経済政策へと、政策思想の軸を転換しよう。
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第199回 東京・戸田代表を囲む会
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□第199回 東京・戸田代表を囲む会 
3月19日(火)1845から
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
参加費  同人1000円  購読会員2000円

ゲストスピーカー 小川淳也・衆院議員
「予算委員会の論戦を検証する〜統計不正を糾す」(仮)

国の根幹を揺るがすような統計不正。
イギリスの警句「ウソ、大ウソ、統計」にあるように、誰にもわかるようなウソ、調べれば分かる改ざんのような大ウソよりも、客観性を装った統計操作が罪深いのは、時の為政者の恣意的な判断を防ぎ国・国民の長期的利益を守るための、近代国家の基礎インフラのひとつを根底から揺るがすからだ。

3月の囲む会は、連日、国会でこの問題を追及している小川議員をゲストスピーカーにお招きして開催します。ぜひ、ご参加を。

小川議員のコラム「統計不正を国会で糾す」(今のところ3回)は、以下のサイトから

WEBRONZA 特設サイト「統計不正が意味するもの」
https://webronza.asahi.com/feature/articles/2019021300008.html

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シンポジウム(外交・安保)
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□シンポジウム(外交・安全保障)
米中「戦略的競争」関係と東アジア・日本
〜「自国第一主義」の広がり、新たな国際協調の再構築は可能か

日時 2019年4月14日(日) 1300から1700
場所 TKP飯田橋ビジネスセンター 3階 ホール3A
   (JR「飯田橋」東口 徒歩3分)
参加費 2000円

【問題提起とパネルディカッション】
中西寛・京都大学教授  川島真・東京大学教授  遠藤乾・北海道大学教授
大庭三枝・東京理科大学教授  佐橋亮・神奈川大学教授   

【趣旨】
「自国第一主義」を掲げるトランプ政権、「一帯一路」「中国製造2025」などの挑戦的な目標を掲げる習近平政権。米中関係は「新冷戦」とも称される状態です。ただし、米ソ冷戦と大きく違うことは、今や米中は貿易はもとより金融、ハイテク技術まで相互の依存関係を深めていることです。対立をエスカレートさせる一方で、決定的になる前に「寸止め」する「適度な間合い」を探るための、海図のない<vロセスともいえるでしょう。
こうした米中の「戦略的競争」関係が東アジアにもたらす波乱≠ノ、どう向き合うか。そのなかから、APECやASEANなどの資産≠元に、新たな東アジアの国際協調を構築できるか。
また、米中の「戦略的競争」関係がもたらす波乱≠ノ対処するために、日本(外交、内政)にどういうことが問われるのか。それは、「2020後」の課題にも通じるものがあるのではないか。
こうした観点から議論をすすめたいと思います。

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第九回大会記念シンポジウム 報告集
3月3日 発刊予定  1部700円 (送料300円)
お申し込みは 「がんばろう、日本!」国民協議会
郵便振替 00160-9-77459
ゆうちょ銀行 019店 当座0077459
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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp