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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 多様で複雑な社会で「国民」を形成する政治プロセスの質をどう高めるか
〜第九回大会にむけて

●「安倍政治」の総決算
 オリンピック後≠フ選択肢を立憲的独裁で準備するのか、
  議論による統治=立憲デモクラシーで準備するのか
●国民主権で統治機構を作りこんでいくプロセスへ

□「囲む会」のご案内 ほか

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多様で複雑な社会で「国民」を形成する政治プロセスの質をどう高めるか
〜第九回大会にむけて
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【「安倍政治」の総決算】
 オリンピック後≠フ選択肢を立憲的独裁で準備するのか、
  議論による統治=立憲デモクラシーで準備するのか

 自民党総裁選挙で三選を果たした安倍首相。さらに三年の任期を手にしたことで、2021年まで首相を務めることも可能になり、実現すれば憲政史上最長の首相在任となる。その長期政権は、東京オリンピック・パラリンピックの宴の後≠ノ何を残すのか。これからは、「安倍政治」の総決算が問われる。
 すでに六年間の長期政権にもかかわらず、具体的な成果は乏しい。アベノミクスはいまだに「道半ば」、「一億総活躍」「人づくり革命」などの目玉政策も、一年ごとの看板架け替えで検証さえできない。二十回超の首脳会談を重ねた日露関係は、プーチン大統領から「領土問題抜きの平和条約」を提案され、朝鮮半島情勢では蚊帳の外。「やっている」感だけの限界を、「憲法改正」の一発勝負で突破できるのか。むしろ「憲法改正」も、求心力維持のための究極の「やっている」感ではないか。

 宴の後≠フ2021年。総人口はピークの2010年から約四百万人減の1億2400万人、高齢化率は30%、女性の過半数が50歳以上という社会と推計されている。団塊世代がすべて後期高齢者となる2025年を目前に、50代に突入する団塊ジュニア世代にはダブルケア(介護と子育て)が大きな問題になるだろう。警察や消防、医療、教育、ケアなど生活の根幹を支える領域でも、人手不足は深刻だろう。
 2020年とされていた財政健全化の指標であるプライマリーバランスの黒字化は、2022年へ先送りされている(2017)。アベノミクスでさらに増えた巨額の財政赤字を抱え、高齢化のピークを乗り切る体力は残されているのか。他方で道路、橋の約40%が建設後五十年を経過するなど、大量のインフラが更新期を迎える。空き家も含め、高度成長期のストックが負動産≠ノなりかねない。

 「安倍政治」は首相主導と長期政権という強大な政治力を、こうした困難な課題に向き合うためではなく、「二度と野党に政権を渡さない」ために使い尽くした。「ポスト安倍」の政治は、「あれか、これか」という難題にどう向き合うのか。
 ポスト安倍の最有力候補と目される小泉進次郎氏は、「2020年以降」を見すえているとされる。その視線は、たとえば次のように紹介されている。

 「村上春樹の小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』にはこんな場面がある。
 登場人物のアカは、新人教育のセミナーで受講生にこう話す。今から、君の手の爪、もしくは足の爪をペンチではがす。それはもう決まっている。しかし、どちらの爪を選ぶかは自由だ。10秒以内に決められなければ両方はぐ――。受講生は8秒ぐらいでどちらかを選ぶ。なぜそちらを選んだかと聞けば、「どちらもたぶん同じくらい痛いと思います。でもどちらか選ばなくちゃならないから」と答える。アカは「本物の人生にようこそ」と語る。
 進次郎氏は2013年8月の講演の最後に、この場面を持ち出した。
 「このシーンを読んだ時に、今の日本だと思った。二つの選択肢が目の前にあって、二つの道がある。でも、どちらかの道にいけば、痛みなんてないという世界はない。どっちの決断をしても、必ずその中で、不利益を被る人がいたり、そういった要素があったりする。ビジネスも政治もそう。でも決断しないといけない」
 「首相になってこれを成し遂げたい」というビジョンを掲げればよい時代はとっくに終わった。人口減少社会を迎える日本に、もはや取り得るべき選択肢はほとんどない。政治家の役割は、手の爪か足の爪か、どちらの爪をはぐのかを決めることだ。自分はいずれその決断をするしかない――進次郎氏は「二者択一の決断」にますます追い込まれているようだった」(「『小泉進次郎』という脱げない着ぐるみ」三輪さち子 WEBRONZA 9/24)

 90年代の統治機構改革―平成デモクラシーは、政治主導―集権化によって「あれも、これも」のコンセンサス型政治では難しいとされる、「あれか、これか」を「決められる」政治をめざすとも言われた。「安倍政治」は「決められる政治」を標榜して、集権化された権力を政権維持のために使い尽くしてきたが、その後の「決められる政治」は、「手の爪か足の爪か、どちらの爪をはぐのかを決めること」だと?!

 ここには民主主義をめぐる根本的な対立軸がある。「手の爪か足の爪か、どちらの爪をはぐのか」という選択肢は、誰がどういうプロセスで決めるのか。その政策形成過程は、行政権に直結した少数の専門家による統治(立憲的独裁)なのか、議論による統治(立憲デモクラシー)なのか。

 「誰もが賛成するような改革案が明確になっていれば、強い指導者が有権者の支持を背景に、その改革を実現することも可能だろう。しかし〜利害得失があり、誰もが賛成できるというわけではない。〜何でも多数決で決めさえすればよいわけではない。たとえば、課題の構造が一般に周知されていないのに、いきなり総選挙などで多数決型の決定が行われても、実質的に意味のある選択を有権者がしたことにはならない。有権者が十分納得するのを待っていては、改革などいつまでたっても実現しないと思われがちだが、消極的ではあっても有権者が納得していなければ、そうした改革は実施しない。そう考えると、誰かに改革案の選択をゆだねてしまうのでは、結局意味のある改革は実現できない可能性が高いのである」(「現代日本の政策体系」ちくま新書 飯尾潤)

 「実質的に意味のある選択」「消極的ではあっても有権者が納得」という「議論による統治」は、すでに地方自治の現場においては多様に試みられ、集積されつつある。その核となるのは「住民自治の根幹としての議会を作動させる」ということにほかならない。(本号6―10面江藤俊昭先生、ならびに前号・廣瀬克哉先生を参照)
さらに言えば「人口減少は、ある日突然やって来る危機ではなく、かなり正確に予測できるものです。したがって準備することができる。予測できるにもかかわらず準備できていないことが、最大の問題」(諸富徹・京都大学教授 471号「総会」)であるからこそ、人々がきちんとした情報に基づいて議論し、自己決定していくためのプロセスを支えることこそが政治の役割だろう。いきなり「手の爪か足の爪か、どちらの爪をはぐのか」という選択肢しか示せないなら、それは政治の敗北ないしは放棄としか言いようがない。

 「待鳥 …今の日本政治は、今日と明日のことしか考えないかのような雰囲気になっていますが、それではまずい。明後日のことは明後日の人たちが考えればいい、と言い放つ人たちに対する対抗軸が、どこかにあるはずなんです。小泉進次郎さんが期待されているのは、明後日のことを語っているふうに見えるからなんですよね」(「中央公論」10月号)
 「中西 …現時点では国民がそれこそ今日明日の問題についてそこそこ満足している状況なので野党は苦しいですが、来年以降は安倍政権の『昨日』、つまり実績がより本格的に問われる。…その時に今日明日の話の繰り返しでなく、明後日の日本について議論することが重要です。全ての国民がハッピーになる選択は難しくはありますが、より悪くない方法は何かについて、しっかり議論して選択肢を提示していく必要があると思いますね」(同前)。
 「明後日」をめぐる選択肢を立憲的独裁で準備するのか、議論による統治=立憲デモクラシーで準備するのか。「安倍政治」の検証・決算は、こうしたフェーズに移りつつあるだろう。


【国民主権で統治機構を作りこんでいくプロセスへ】

 平成という時代は「失われた三十年」と重なる。確かに、人口減少時代・21世紀型社会へと転換するための時間や資源を少なからず失ったが、民主主義を深めるために得たものもあったといえるのではないか。

「近代において日本だけでなく多くの国も、民主主義が深まるのは戦争―総力戦の時です。国民の参加が必要ですから。日本も日露戦争と第一次大戦との関係で大正デモクラシー、敗戦との関係で戦後民主主義です。そして九〇年代の統治機構改革は、冷戦の終わりにともなうものでもあった。
では今日われわれは、戦争を媒介にせずに立憲民主主義を深めることができるのか。これは言い換えれば、九〇年代の統治機構改革の検証から、国民主権で統治機構を作りこんでいくプロセスへ、踏み込んでいけるかということです」(13面 戸田代表)
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けば」とはチャーチルの言葉だが、独裁や全体主義との対比で民主主義を語るステージから、次世代に受け渡すべき民主主義の価値とは何か―自己決定権や人権、個人の尊厳など―を問うステージへ、ということでもある。

そのための主体基盤という点で平成という時代は、多様性や個人の尊重ということが、普通の人の生活感覚や生き方に根づいてきた時代といえるかもしれない。たとえば「新潮45」をめぐる問題は、「ヘイトは『言論の自由』ではない」「意見や党派的立場の違いではなく、人権侵害」ということが、さまざまな人々からそれぞれの言葉で発信された。休刊は、出版側の責任の取り方として十分なものとはいえないが、人権や多様性の尊重が民主主義や言論の自由の前提だ、ということが共通の常識≠ノなりつつあることの反映でもあるだろう。

そして多様性の尊重を前提にするからこそ「国民」も均質・同質ではなく、利害関心もバックグラウンドも違う人々が共に生きる社会をどのように構成し、「国民」を形成していくのか、そしてそのプロセスにおいて「課題を共有したところに公共が生まれる」ということができるのか、ということが見えてくる。それは「課題の共有なき同調圧力」「多数決主義の民主主義」から派生する社会的分断を乗り越えていく可能性でもあるだろう。

「(辺野古移設をめぐる県民投票)署名活動に参加し、辺野古移設に賛成でも、活動には反対しない人に出会いました。最初は拒否気味でも、話していくうちに接点が見つかったこともあります。話せば何かが変わる。〜略〜1回の県民投票や選挙で問題が解決しなくても、何度でも話し合って、長いスパンで考えていきたい。それこそが民主主義だと思います」(「分断の沖縄と若者たち」朝日9/22)
こうした主体基盤のうえで、国民主権で統治機構を作りこんでいくプロセスとして「2020年以降」を準備しよう。
(第九回大会にむけて、10/13「囲む会」ではこうした問題設定について議論したいと思います。)

(「日本再生」473号一面より 紙幅の関係で紙面では小タイトルや本文の一部を割愛しています。)

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囲む会のご案内@東京
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●第196回 東京・戸田代表を囲む会
10月3日(火) 1845から
「平成の合併を問う―自治の観点からの検証と問題点」
ゲストスピーカー 幸田雅治・神奈川大学教授

「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
同人 1000円  購読会員 2000円

●第197回 東京・戸田代表を囲む会 特別編
「第九回大会にむけて」
10月13日(土) 1300から1700
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
会費 なし

*立憲民主主義の基盤としての社会関係資本を私物化、食い逃げするのか、
次世代に手渡すための責任を果たすのか。
九回大会に向けた「立ち位置」を議論、共有したいと思います。

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「囲む会」のご案内@京都
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●第35回 戸田代表を囲む会in京都
10月6日(土)1430から
コープイン京都
「『住民自治の根幹』としての議会を作動させる〜統一地方選を議会力アップに」
ゲストスピーカー 江藤俊昭・山梨学院大学教授

●第36回 戸田代表を囲む会in京都
11月17日(土) 1830から
「『安倍政治』の検証から、選挙をどう構えるか
 〜戸田代表の提起と自治体議員の討議を軸に」
コープイン京都 

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望年会のお知らせ
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■東京
12月15日(土) 1600から1900
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
会費 1500円(予定)

■京都
12月6日(木) コープイン京都 第一部・講演 1800-1900 中西寛・京都大学教授  参加費 1000円 第二部・懇親会  参加費 3500円

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第九回大会
2019年1月6日(日) 午後
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
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□JVC代表交代記念トークイベント
 「私たちはなぜ国際協力をするのか?」
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469号掲載のJVC(日本国際ボランティアセンター)代表・谷山さんと、
新代表・今井さんのトークイベント。聞き手は堀潤さん。
10月20日(土) 1400から1630 
GRID永田町6階
参加費 1000円(JVC会員 800円)
(1700から懇親会 別会費 3500円)
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□小川淳也 東京後援会政経セミナー 昼食勉強会
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10月24日(水)1130より昼食 1200より講演
講師 吉田徹・北海道大学教授
会場 ホテルニューオータニ エドルーム(ザ・メイン 宴会場階)
会費 10000円

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□大野もとひろと日本の未来を考える会  パーティー
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10月23日(火) 1830から
ルポール麹町 2階 ロイヤルクリスタル
会費 20000円

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ガンと地域医療―人に寄り添う医療を考える
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白石けい子・練馬区議のセミナーです。ご自身の体験を踏まえて。
講演、体験発表 パネルディスカッション

10月14日(日) 1000から1200
石神井公園区民交流センター(ピアレス)3階 大会議室
参加費 無料

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沖縄県知事選挙を考えるためのサイト
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●ポリタス 沖縄県知事選挙2018」から考える
http://politas.jp/

●OKIRON 沖縄を深堀り・論考するサイト
https://okiron.net/

●沖縄県知事選「争点消滅」の重い意味 佐藤学
現代ビジネスオンライン
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57666

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
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