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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 対立と分断・諦め感を蔓延させるのか
 「有権者の投票や関与によって政治的対立を治める」一歩とするか  
  〜自民党総裁選と沖縄県知事選

●立憲的独裁への歩みを進めるのか、「議論による統治」を深めるのか
●対立と分断をさらに深めるのか、自己決定権=自治を確立する一歩か

□「囲む会」のご案内 ほか

□本&映画 お薦め
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対立と分断・諦め感を蔓延させるのか
「有権者の投票や関与によって政治的対立を治める」一歩とするか  
 〜自民党総裁選と沖縄県知事選
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【立憲的独裁への歩みを進めるのか、「議論による統治」を深めるのか】

 この九月に行われる自民党総裁選と沖縄県知事選挙は、立憲民主主義をどう深めていくかに関わる重要な選挙になるだろう。民主主義イコール多数決、選挙に勝てば何でも好きなようにやれる、という立憲的独裁への歩みを進めるのか、民主主義は討論を通じた合意形成のプロセスであるという「議論による統治」を深めるのか。

 安倍政治の五年あまりを経た自民党総裁選(9月7日告示、20日投開票)は、これまでにない異様なものになっている。石破氏とその陣営に対して「干し上げる」という恫喝が公然と行われたり、「正直、公正」とのスローガンが首相に対する個人攻撃だとして封じられそうになったり、中央省庁での障がい者雇用の意図的水増しというあるまじき事態に、先頭で責任を取るべき首相が総裁選の票固めを最優先していたり。実質的に首相を選ぶ自民党総裁選が、ここまで私物化されたことがあっただろうか。
 なかでも大きな問題は、論戦の機会が大幅に減っていることだ。石破氏は、「六年前の選挙に比べ論戦の回数が減ると、有権者はどうやって判断すればいいのか」「自民党にもいろんな議論があるとわかってもらいたい。街頭演説では言いっ放しで議論にならず、討論を行うことが国民に対する義務だ」と述べ、討論会の回数を増やすように求めている。
 しかし首相サイドからは、「総裁選は党員や党所属議員ら限られた人にしか投票権がない。一般人にも届くような討論会をしても仕方ない」との声が聞こえる。憲政史上最悪とも言われるこの通常国会では、野党との論戦から逃げる首相の姿勢が際立った。オモテの論戦を封じる一方、「忖度」などで権力を行使する。民主的な形式で選ばれながら、その権力行使がブラックボックス化する立憲的独裁の姿が、見えてきているのではないか。

 「民主主義は、真剣な政治討議がなくとも、それにも関わらず、仮に何をなすべきかについて幅広い合意があるならば健全であり得る。仮に合意がなくとも、討論の文化があるならば、民主主義は健全であり得る。しかしながら深く厳しい分裂と真の討論が欠如している場合、民主主義は健全性を持続することができない。何故ならばその場合、民主主義は単なる数の専制になるからである」(ロナルド・ドゥオーキン「民主主義は可能か――新しい政治討議のための原則について」 信山社)。

 討議がなくても幅広い合意がある―伝統的な地域共同体や、「包括政党」と言われたかつての自民党のイメージだろう。だが世間の批判を敵に回してなおLGBT差別をはばからない杉田議員の寄稿問題に静観の姿勢を崩さなかった自民党は、もはや「包括政党」とはいえない。
 「討議がなくても幅広い合意がある」ことが難しくなっているなら、「合意がなくとも討論の文化がある」状態を作り出せるのか。それとも議論を封じ、忖度や同調圧力で動かしていくのか。改竄、虚偽答弁、廃棄、隠蔽の証拠がいくら出ても、以前の強弁を繰り返すだけの安倍政権に対する諦め感にとどまるのか、意見が違う相手と議論して知恵を出し合う文化をつくりだす一歩を踏み出すのか。「安倍政治」と対峙する側が問われている。

 地方の党員票が、自民党総裁選の結果だけでなく今後の方向を左右するといわれている。地方議員や支部が、上意下達や忖度、同調圧力で動く党員・議員なのか、あるいは議論の作法―何をなすべきかの合意がなくとも討論の文化はある―で動く党員・議員なのか。党籍のないわれわれは自民党総裁選に一票を投じることは出来ないが、こうした観点から観察してみようではないか。
 こうした観点は、来年の統一地方選にもつながってくる。選挙を白紙委任(期限付き独裁)にしない、「お任せから約束へ」→約束を実行する責任を問う・検証するというマニフェスト選挙は、首長選挙では一定程度定着してきた(さらに拡大・定着させることは必要)。新たな課題は、議会を「住民自治の根幹としての議会」として動かすことだ。とくに「地方制度改革」として、町村議会のあり方研報告や議選監査委員の選択制など、議会の機能や権能を縮小する方向が見え隠れしているなか、「住民自治の根幹としての議会」という軸から進むべき方向性をとらえ、地方自治、住民自治の領域から立憲民主主義を深める一歩を蓄積していくことが重要になるだろう。そのための議員・議会マニフェストとは、という問題設定に挑戦したい(本号 廣瀬・法政大学教授の「囲む会」参照)。

【対立と分断をさらに深めるのか、自己決定権=自治を確立する一歩か】 

 翁長氏の死去に伴って、沖縄県知事選挙が自民党総裁選挙と前後して行われることになった。前回の知事選では自主投票だった公明党が、自民党とともに佐喜真・宜野湾市長を支援し、翁長氏を支援したオール沖縄からは玉城デニー氏(自由党国対委員長)が立候補する。知事選では辺野古新基地建設が大きな争点となるが、この知事選は国政の対立構図に収まるものではないし、そこに従属させるべきではない。

 沖縄の民意は一貫して新基地建設に反対してきた。しかし2013年「県外移設」を公約した仲井眞知事が東京で、支援策と引き換えに新基地建設を容認、同じく「県外移設」を公約した県選出の自民党議員が、党本部で新基地建設容認の会見に並ばされた光景は、沖縄の民意が本土政権に潰されたことを象徴するものとして受けとめられた。保守政治家として大田革新県政と鋭く対立し、仲井眞知事の選対本部長を務めた翁長氏が、保革を越えたオール沖縄として立つのはここからだ。

 翁長氏が掲げた「イデオロギーよりアイデンティティー」は、本土の無理解に対抗する「アイデンティティー」ではなく、「沖縄の自己決定権を確立する」という目標を掲げたものだといえる。しかし「オール沖縄」を掲げて民意の結集を図り、14年の知事選で圧勝したにもかかわらず、「安倍政治」は対話も討論も拒み「粛々と」権力を行使するとともに地域社会に楔を打ち込み、沖縄の分断と対立は深まった。
 自己決定権を確立するためのアイデンティティーとは、他者を排除したり否定することによって「発見」されるアイデンティティーではない。この知事選は中央とのパイプによってではなく、自分たちの手で未来を作るための選挙だ。そうしてこそ、アイデンティティーに依拠しつつ、「有権者の投票や関与によって政治的対立を治める」方向へ一歩踏み出すことが可能になるのではないか。

 玉城デニー氏は出馬会見で「かけがえのないこの島の未来を、誰でもなく、自分たちの手で作り出していく」と決意を述べた。
 民主主義とは、社会の構成員一人ひとりが共同体の未来を統御するために、能動的に環境に働きかけていくことだ。それが可能であり、たとえ不十分であってもそれが機能していると信頼できなければ、あるいはそうした実感や期待感が持てなければ、民主主義は劣化していく。選挙で繰り返し示された民意が一顧だにされない一方で、「粛々」と工事が進められ、政権によって地域社会に楔が打ち込まれていく状況は、諦め感の蔓延と民主政治への信頼そのものが失われていく過程ともなりうる。選挙がこうした分断や対立をさらに深めることになるのか、それとも「有権者の投票や関与によって政治的対立を治める」方向への一歩となりうるのか。中央とのパイプによってではなく、自分たちの手で未来を作ることを共通の基盤とすることができるなら、「合意がなくとも討論の文化がある」ステージに向かうことができるのではないか。

 8月29日沖縄県連を立ち上げた立憲民主党は、枝野代表が会見で次のように述べた。「(米軍基地が集中していることによる)米軍兵士による犯罪、米軍機の事故など〜沖縄県民の忍耐はもはや限界に達しており、国の安全保障の名のもとに日本国民が沖縄県民に大きな負担を押し付けているという非難を免れることはできません。沖縄県民の怒りは数々の選挙結果にも現れています。沖縄の分断と対立を生む新たな基地の建設をこれ以上強行し続けることは、あまりにも無理がある状況と判断せざるを得ません」。
 辺野古新基地建設については、安全保障政策の観点からも検討されなければならないし、民主党政権も含めた決定過程の検証も不可欠だろう。だがまず分断と対立をこれ以上深めない―ここが基本になるということだろう。

 沖縄では7月、普天間飛行場の辺野古への移設の賛否を問う県民投票の実施を求める署名が約十万筆集まった(条例制定に必要なのは二万三千筆)。署名運動を推進したのは若者たち。「若い人が基地問題、とくに辺野古の米軍基地建設に向き合って、きちんと話し合って、考えて、決めるというのが最大の目的だ」と代表の元山氏は言う。米軍基地で生活の糧を得ている人も少なくない、そして「濃い」人間関係が残る地域社会では、なかなか言いづらいこともある。そんななかで若い世代が意見の異なる相手とも対話し、そのプロセスそのものを重視し、反対票を集めてノーを突きつけるというより、結果が「イエス」でもそれはそれで受け入れると言う。「でもそれで終りというわけではないし、そこからまた座り込みをしたり選挙で意思表示したりする」。自己決定権を確立していく一歩は、こうして始まっている。
 「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けば」とはチャーチルの言葉だが、独裁や全体主義との対比で民主主義を語るステージから、次世代に受け渡すべき民主主義の価値とは何か―自己決定権や人権、個人の尊厳など―を問うステージへ、ということでもあるだろう。

(「日本再生」472号 一面より)
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囲む会のご案内
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●東京
第195回 東京・戸田代表を囲む会
9月11日(火) 1845から
「安倍政治の検証と野党の役割」
ゲストスピーカー 大野元裕・参議院議員

「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
同人 1000円  購読会員 2000円

●京都
第35回 戸田代表を囲む会in京都
10月6日(土)1430から
コープイン京都
「『住民自治の根幹』としての議会を作動させる〜統一地方選を議会力アップに」
ゲストスピーカー 江藤俊昭・山梨学院大学教授

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第九回大会(予定)
2019年1月6日(日) 午後
TKP市ヶ谷
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□JVC代表交代記念トークイベント
 「私たちはなぜ国際協力をするのか?」
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469号掲載のJVC(日本国際ボランティアセンター)代表、谷山さんと、新代表・今井さんのトークイベント。聞き手は堀潤さん。
10月20日(土) 1400から1630 
GRID永田町6階
参加費 1000円(JVC会員 800円)

(1700から懇親会 別会費 3500円)
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□小川淳也 東京後援会政経セミナー 昼食勉強会
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10月24日(水)1130より昼食 1200より講演
講師 吉田徹・北海道大学教授
会場 ホテルニューオータニ エドルーム(ザ・メイン 宴会場階)
会費 10000円

問い合わせ 小川淳也事務所 03-3508-7621
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お薦めをいくつか

#戦争への道を検証する
なぜ負けることが分かっていた戦争を始めたのか。
「一億総懺悔」でもなく、「空気」や「忖度」でもなく、事実に基づいて検証するとは?

○「戦争調査会」 井上寿一 講談社現代新書
敗戦後、幣原内閣の下に立ち上げられ、GHQ指令によって一年弱で廃止された「戦争調査会」。
その残された資料を読み解くなかから、なぜ道を誤ったのかを考える。

○「1941 決意なき開戦」 堀田江里 人文書院
第28回アジア・太平洋賞特別賞受賞。1941年、日米開戦の決断に至るプロセスを、意思決定当事者のみならず、エリートや庶民も含めた「世間」の動きも含めて重層的に追った<ドキュメンタリー>的作品。
400ページあまり 3500円という本なので、図書館でリクエストするのも手。

#分断と憎悪に立ち向かう

○「判決 ふたつの希望」
http://longride.jp/insult/

レバノンで制作された映画。2017年ベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた。
些細なトラブルから民族、宗教、政治の対立が増幅されていくなかで、希望は見出せるのか。「これは法廷ドラマであり、エンターテインメントであり、和解とは何かについて考える映画だ」と監督は語る。
酒井啓子先生は、政治運動としてのアラブの春は鎮圧されたが、その精神は文化運動として社会により深く根を張りつつあるとおっしゃったが、その一例ともいえるかもしれない。(酒井先生のインタビューは473号に掲載予定。)

○映画「グレーテスト・ショーマン」の主題歌とも言うべき「This is Me」ワークショップセッションの動画
https://www.youtube.com/watch?v=g91RzJqMNhU&feature=youtu.be

人を見世物にして「グレーテスト・ショーマン」と言われた人物のストーリーを、ミュージカル仕立てにした映画。このなかで演じられる「This is Me」のワークショップ。映画のなかで、彼らを「ケダモノ」と憎悪する人びとに向かって、「This is Me」と力強く歌う場面は鳥肌もの。
7/27自民党本部前の抗議行動での訴えにも通じるものを感じる。

○沖縄を深堀り・論考するサイト OKIRON
https://okiron.net/
宮城大蔵先生も関わっている沖縄についてのサイト。県知事選は本土紙でも報道されるが、本土目線ではなく、沖縄のさまざまな立場や思いに目線を合わせて考えることが、まずは必要だろう。
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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp