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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 二回の政権交代を、フォロワーシップの転換としてどう語るか
  〜民主主義のバージョンアップの糸口へ

●「決められる政治」の終わりの始まり=@フォロワーシップの転換の始まりの始まり
●「決められる政治」(多数決民主主義)か、
多様な「国民」の有機的統合プロセスとしての「議論による統治」か

□「囲む会」のご案内 
  
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二回の政権交代を、フォロワーシップの転換としてどう語るか
〜民主主義のバージョンアップの糸口へ
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●「決められる政治」の終わりの始まり=@フォロワーシップの転換の始まりの始まり

東京都議会議員選挙での自民大敗に続き、仙台市長選挙でも与党候補が敗北、安倍政権の支持率は「危険水域」といわれる20%台まで急落している。世論調査では「自民党に対抗できる政党が必要」が八割(朝日新聞 7/11)にのぼるものの、その「受け皿」となる野党が見あたらないなかで、民意は行き場を失っている(ように見える)。
私たちは、ここからどの方向へ進むのか。政治不信と消費者民主主義の肥大化―感情の劣化と政治の劣化という負のスパイラルを、自らの足元を掘り崩すところまで進めるのか。それとも、「一票で政権をつくる」という二度の政権交代の経験を、フォロワーシップの転換として語る糸口を手にしていくのか。
東京都議会議員選挙は、その試金石となるか。

都議選の投票率は51%、前回(2013年)より8ポイント上がった。民主党政権誕生前夜、09年の都議選より3ポイント低いが、イメージ的にいえば、政権交代に期待し、がっかりして棄権した人びとのなかで、再び投票所に足を運んだ人がそれなりにいた、ということだろう。

もちろん、これには「小池効果」がかかわっている。時事通信の出口調査では、「支持政党なし」の約55%が、都民ファースト公認または推薦の候補に投票している。その「期待」を、安倍批判や「小池劇場」効果といった感情の動員レベルだけで語って終わりにするか。あるいはそこから、消費者民主主義のユーレイ(地に足がついていない、どころか「足がない」)からの転換の可能性を見出すべく、とらえていくのか。「小池都政への期待」という形で表れた有権者の気持ちを、社会的政治的表現にしていくために、どのようなコミュニケーションが求められるのか。

「別の言い方をすると、日本で初めて選挙で政権交代をして、民主党政権の経験をしたうえで今日に至っている……その中で自分と社会との関係、あるいはフォロワーとの関係の作り方の型を、それぞれが持ちつつあるということです。政権交代とその『失敗』の経験を、組織として集積することはまったくできていません。個人として集積するしかない。〜中略〜そのためには、他者との関係で気持ちが通じ合うということでないとダメですね。気持ちというのはそれぞれですから、百人いれば気持ちの通じ方も百通りを越える。それがないと、『伝える』活動、『広げる』活動は分かりません。『自分は正しい』『自分はこれをやりたい』とさえ言っていればいいと思うのは、素人です。
気持ちを分かち合うということがない時は、…『アンチ安倍』とか、『○○に反対』ということで、何かしら一致しているように思っているということです」(戸田代表 457号「囲む会」)

賛成・反対の二択や、与えられた選択肢から自分の気に入ったものを選ぶ・うまくいかなければ文句を言う、という消費者的態度にとどまらない「小池都政への期待」の可能性があるとすれば、ひとついえることは、二〇二〇年以後の超高齢・人口減少フェーズにおける東京の課題に関する「自分事」感覚―当事者性の萌芽―ではないか。

 「都議選で投票する人を決めるとき、市場移転を重視するかどうか」について、朝日調査では「重視する」30%「重視しない」63%。読売調査では、争点として重視するテーマは「医療や福祉政策」76%、「地震などの防災対策」65%で、市場移転問題は48%にとどまっている。曲がりなりにも、「二〇二〇年以後の東京」を中心課題として訴えたのは、小池知事がはじめてだろう。この「期待」に応えずに、国政あそび≠ノうつつをぬかすことを許さない。それが、二元代表制の一方である都議会に託された民意というべきだろう。(都民ファーストの国政進出について、「進出してほしい」42%、「してほしくない」36% 朝日7/11)

 都議会では、都民ファースト55議席をはじめ小池知事支持勢力は79議席と過半数を上回る。常識的に考えれば、これまでブラックボックス化していた都政のチェックや情報公開、議会改革(開かれた議会)は、少なくとも全国標準並みにはなるはずだ。(「あったもの」を「なかった」とは言わない程度の、常識の公文書管理など。)

問題は誰がそこに魂を入れるか。政権交代前夜に民主党は都議会第一党となりながら、過半数に達しないために苦労した。その経験から何を学んだかということであり(多数をとりさえすればできるor合意形成プロセスをマネージする)、さらに言えば「オープンガバメント」を目指したものの混乱に陥った民主党政権の失敗の経験を、どこまで「自分事」にできるのか、ということでもある。
そしてそこで、有権者の「期待」と接点をもつコミュニケーションを、どれだけ集積できるか。これは政治に対して「結果を出せ」と要求する消費者的態度から、合意形成に関わる当事者性への転換の糸口だ。

これからの日本社会では、縮小均衡は避けられない。そこで政治に求められるのは、「みんなが満足する結果」ではなく、「それぞれが納得する(「仕方ない」と思える)結論」を出せるかであり、必要なのは「お互いさま」と思えるような合意形成のプロセスと、そのインフラ整備だ。

 「(区画整理を)市の施工でやると、その地域の住民は消費者になって、行政不服審査を何十通も出してきたりするんですね。組合施工でやると、何となくお互いさまという中で、そんなに異論は出てこないんです。
 当事者意識というのは、そういうところだと思うんですね。お互いさまだと思えれば、ある程度がまんして、辛抱強く着地点を見つけようとするのが人間だと思います。ところが自分は消費者側だとか、自分は当事者ではないという判断をした時には、何と言うか人間の獰猛さみたいなものを感じることもあります。
 下り坂の時代とか、撤退戦という話がありましたが、特に首都圏ではこれから、いろいろ嫌な判断をしていく場面が本格的にでてくるわけです。公共施設の再編なんかもそうですね。そういう時に、みんなが当事者意識を持って判断していけるところに持ち込むことができれば、下り坂を降りていくのにマッチした社会が作れるのかなと思います。
そのためには繰り返しになりますが、身の回りの範囲でみんなが考えていく、身の回りの範囲のことを役所からも投げかけていく、そんなことができればなと思っています」(松本・和光市長 6/18シンポジウム)

多様なフォロワーシップの波をつくりだし、そのコミュニケーションの繰り返しのなかから当事者性を涵養していく―こうした合意形成プロセスをマネージしていくこと。「決められる政治」の対極ともいえる、こうした政治プロセスへの転換の地歩を、足元から固めていくときだ。劣化した土壌のまま、化学肥料とF1種と農薬で「いい」野菜を作っても先細るだけ。必要なのは、豊かな土壌づくりだ。そのためにも、「お試し改憲」をはじめとする政治の煽り″s為を封じるフォロワーシップの波を。

●「決められる政治」(多数決民主主義)か、
 多様な「国民」の有機的統合プロセスとしての「議論による統治」か

 安倍一強体制の崩壊、民進党の迷走…。過去二回、「一票で政権を替える、作る」経験をした私たちは、こうした液状化現象にどう向き合うのか。

 「官僚主導でやってきた行政が本格的に転換したのは2009年に民主党政権が発足して脱官僚依存を唱えた時点からです。民主党政権は政治主導を制度化しないままに自民党政権に代わり、4年間、政治主導として進めてきたことの限界が出ています。〜略〜政策形成は限界にぶつかっている。〜略〜多角的に問題の所在を認識、分析しないまま、〜略〜短絡的に考えられています。十分に練られた政策とはいえず、思いつきに近いものです」(牧原出・東大教授 朝日7/25)。

 政権交代の「先」の政治プロセス、合意形成プロセスを「お任せ」にして、「結果を出せ」と要求する消費者にとどまるか、政権交代の「先」の政治プロセスにも「自分事」感覚を持つフォロワーへ、歩みを進めるか。

 民主党政権の混乱を「決められない政治」と批判した安倍政権の「決められる政治」とは何だったか。「多角的に問題の所在を認識、分析しないまま、〜略〜短絡的に考えられ」た「思いつきに近い」(牧原 前出)政策が、多数決至上主義で「短絡的」に決められた。その「歪み」が端的に表出したのが森友、加計、日報問題ではないか。
 オープンな決定過程を目指すゆえの混乱か、「官邸の意向」次第で「決められる政治」か。「決められる政治」(多数決民主主義)か、多様な「国民」の有機的統合プロセスとしての「議論による統治」か。二度の政権交代の経験を、この点からも検証するステージに進もう。

 民主党政権は曲がりなりにも原発・エネルギー政策という国民的課題を、参加とオープンなプロセスで決めようとした。安倍政権では、3.11以前に戻っている。その「逆コース」をなお押しとどめているのは、地方における「脱原発依存」の根強い民意であり、エネルギーを「自分事」とする暮らしの営みだ。
 特区は民主党政権では、地域発の要望を受けたボトムアップの認定過程だった。安倍政権では「やる気のある地域を国が指定する」という、自治分権とは対極に転換した。森友、加計は、そこに群がる「お友だち利権」の一端にすぎない。その背景には、「天下り」ならぬ「天上がり」(458号岡田・京都大学教授「囲む会」参照)という利害関係者による政治プロセスの占有―国民(国会)、自治体は排除―がある。

 政権の都合で「あったもの」を「なかった」と言い、「戦闘」を「衝突」と言い換える。そんなことが頻発する「決められる」政治は、まともではない。(退却を「転戦」、略奪を「調達」と言い換えた時代は、「忘れていい」過去ではない。)
 「議論による統治」には、まだまだ混乱や紆余曲折は避けられない。しかし、多角的な問題の所在を共有すれば市民もすぐに「結果をだせ」とは言わない、という実践知、経験知はすでに自治の現場では集積されつつある(6/18シンポジウム参照)。こうした土壌をさらに豊かなものにすることこそ! 
 そのためにも「お試し改憲」より、「人たるに値する生活の必要」(労働基準法)を充たすべく憲法の実質化を!
 
(「日本再生」459号 一面より)
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「囲む会」のご案内 
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2009年民主党政権、2012年第二次安倍政権という二回の政権交代の経験を、
フォロワーシップの転換としてどのように語るか。
今年後半から来年にかけては、こうした問題設定から各種の催しを企画していきます。
政治不信と消費者民主主義の肥大化―感情の劣化と政治の劣化という負のスパイラルを、
自らの足元を掘り崩すところまで進めるのか。
それとも、「一票で政権をつくる」という二度の政権交代の経験を、
フォロワーシップの転換として語る糸口を手にしていくのか。
予定される総選挙、憲法改正論議などを、
民主主義のバージョンアップにむけたとば口として迎えるべく!
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■第179回 東京・戸田代表を囲む会 特別編
「フォロワーシップの波をつくりだすリーダーシップとは」
8月27日(日) 1300より
ゲストスピーカー 廣瀬克哉・法政大学教授 湯浅誠・社会活動家・法政大学教授
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
同人1000円  購読会員2000円

*二回の政権交代の経験を、フォロワーシップの転換としてどのように語るか。その糸口を探る議論をしたいと思います。

■第106回 シンポジウム
「民主主義のための社会的投資とは」(仮)
10月21日(土) 1300から
TKP麹町駅前会議室 ホール8A
諸富徹・京都大学教授 廣瀬克哉・法政大学教授 佐無田光・金沢大学教授 ほか
参加費 2000円

*6/18シンポジウムの「続編」。民主主義のインフラとしての社会関係資本(人びとのつながり)を
豊かにするための社会的投資とは、そこでの自治・自治体の役割、可能性とは…

■第29回関西政経セミナー  「まちづくり・地域経済と、自治・民主主義」(仮) 11月4日(土) 1400から
キャンパスプラザ京都
川勝健志・京都府立大学准教授、田中誠太・八尾市長 ほか 参加費 1000円

*上記と同様の趣旨で。

■第31回 戸田代表を囲む会in京都
「中東を考える」(仮)
9月26日(火) 1830から
コープイン京都
末近浩太・立命館大学教授
参加費 1000円

■「がんばろう、日本!」国民協議会 第八回大会第五回総会
11月12日(日) 1000から1800
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp