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「がんばろう、日本!」国民協議会
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Index 
□ 住民自治の涵養と地域主体の地域再生
  自治の当事者性と関係性を基盤に、3.11後の主権者運動の次のステージを拓こう

 ●「選ばされる」一票ではなく、「未来へ 投資する社会」へ意思を込めた一票を 
 ●社会の亀裂を固定化するのか、新しい社 会的連帯へ向かうのか
 ●アベノミクスの地方版か、住民自治の涵 養と地域主体の地域再生か

□お知らせ
 ◆東京・囲む会&望年会
 ◆京都・政経セミナー&望年会、囲む会
 
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住民自治の涵養と地域主体の地域再生
自治の当事者性と関係性を基盤に、3.11後の主権者運動の次のステージを拓こう
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●「選ばされる」一票ではなく、「未来へ投資する社会」へ意思を込めた一票を

 突然の解散・総選挙。「誰のため、何のための選挙なのか」、多くの有権者が納得いかないまま、選挙日程だけが進ん でいく。何かがおかしくないか? 私たちはこの選挙で、何を選ばされるのだろう。

 「政権発足以来、雇用は百万人以上増えた」  「有効求人倍率は、二十二年ぶりの高水準」 「この春、平均2%以上給料がアップ。過去十五年間で最高」
 アベノミクスの信任を問う、とした記者会見で安倍首相はこう「実績」を並べたてた。でも…

 文部科学省の有識者会議の提言を受けて検討されていた返済不要の「給付型奨学金」の予算額は、三八〇億円(約六万三千人対象)。それに対して財務省は「財源確保は難しい、将来に向け検討」。一方で、今回の選挙に使われる税金は六三一億円(11/28閣議決定で予備費から)。
 いまや大学生の二人に一人が奨学金を利用。ここまで増えた背景には、親の収 入低下と入学金や授業料の高額化がある。そのうえ学生自身の就職状況の悪化で、奨学金の滞納者も延滞額も年々増加している。

 やっぱり、税金の使い方がおかしくないか。民主主義に不可欠な選挙に費用がかかるのは当然だが、これが「未来への投 資」といえるのか。

 あるいは、年収三六〇万円未満世帯の五歳児保育料の無料化。自民党が前回総選挙で「幼児教育の無償化」を公約に掲 げ、文部科学省が来年度からの導入を検討していたが、財源確保が難しいと見送られる見込み。消費増税先送りの余波とも。これが「未来へ投 資する社会」といえるのか。

 「選びたいのに、選べない」。検討するに値するまともなマニフェストもないまま、私たちは何を選ばされるのか。それ とも「未来へ投資する社会」への意思ある一票を投じることができるのか。

 首相が解散を表明した翌日、菅官房長官は会見で「信を問うのに何を問うか、問わないかは政権が決める」と言い放っ た。
 エッ、争点を決めるのは有権者じゃないの? 私たちは投票所に並んで、政権が用意した選択肢のなかから「選ばされ る」だけ? これは「安倍長期政権」への信任投票?

 「政治学では、難しい問題を浮上させないようにする権力を『非決定権力』という。(05年に小泉首相が「郵政民営化」で他の争点が浮上しにくくしたように)政権側が選挙の意味をフレーミングする(枠組 みを与える)非決定権力のような動きが、今回も見ら れたと感じる。安倍首相は衆院解散で単なる政権の延命を図ろうとしたのではない。フレーミングされた短期的争点のほか、首相が意欲を示す 安全保障問題や憲法改正という国論を二分する大きな争点があり、それには強くて長い政権でなければ取り組めないということだ」(谷口尚 子・東工大准教授11/28読売)。

 政権に争点を示されて「選ばされる」一票ではなく、「未来へ投資する社会」への意思ある一票を投じるために、フレー ミングされた短期的争点のほかに、本来「国民に信を問う」べき争点を有権者から候補者、政党に問おう。人口減社会にどう向き合うのか、原 発・エネルギーシフトはどうなのか、目先の景気対策なのか・二十一世紀後半の日本の屋台骨を支える世代への投資なのか、超高齢社会をどう 迎えるのか、アジアでダントツのナンバーワンの地位を降りたこの国がアジアでどう生きていくのか等。

 二度の政権交代を経るなかで、二十一世紀の「不都合な真実」に向き合い、「自分たちのまちがどうなっており、どうな りうるか」を共有するところから、自治の当事者性と関係性は確実に集積されつつある。この主体的基盤のうえに、「未来へ投資する社会」へ の意思を込めた一票を投じよう。フレーミングされた短期的争点とは異次元の空間に、「新しい現実」はすでに広がっている。住民自治の涵養 と地域主体の地域再生―この座標軸から、「未来へ投資する社会」への意思を込めた一票を。

●社会の亀裂を固定化するのか、新しい社会的連帯へ向かうのか

 「変革期の時代には、人間たちはいくつかの『集団』に分裂していく傾向をみせる。〜中略〜今日の日本社会には、大き く三種類の人々が存在している。高度成長とともに成立した戦後の価値観を守り抜きたい人々、強い国家を目指して戦後を見直そうとしている 人々、新しい社会づくりを志してその視点から戦後を見直そうとする人々である。その分裂がはっきりしてきたのが現在の日本であり、この社 会分裂の顕在化に、私は変革期の現象を感じている」(内山節「変革の時代に生きる」世界9月号)

 問われているのは、時代の変化から生じる社会の亀裂を固定化し分断統治するのか、それとも新しい社会的連帯―「未来 へ投資する社会」への合意形成を目指すのかだ。

 沖縄県知事選では「イデオロギーではなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、米軍普天間基地の辺野古移設に 反対する翁長氏が当選した。これに対して菅官房長官は会見で、「(移設決定は)すでに過去のこと。粛々と進める」と述べた。ここには、本 土と沖縄の深い亀裂が覗いている。これを固定化してしまうのか。総選挙で過半数を取れば「国民の信を得た」として、沖縄の意思表示も「過 去のことにされてしまうのか。

 正規と非正規、年配者と若者、アベノミクスの恩恵に与る富裕層と貧困層、都市と地方・・・
私たちの社会はいくつもの亀裂を抱えながら、人口減・少子高齢化、社会保障、エネルギー、安全保障などの難題に取り組 んでいかなければならない。誰もが納得する答えはないし、誰もが恩恵をこうむる政策もない。不利益と引き換えに配るカネも、すでにない。 当事者性と関係性が分断されたなかで、互いの「正義」を振りかざせば、相手を「悪」「敵」と否定するしかなくなる。社会の亀裂はますます 深まるばかりだ。

 この亀裂の深まりに乗って、選挙で勝てば「国民の信任を得た」として、異論を「見解の相違」の一言で片付ける分断統 治に道を開くのか。それとも、社会の亀裂を再統合する新しい社会的連帯に向かうのか。
 時代の変化に伴って社会に亀裂が生じることは避けられない。社会の亀裂や格差の存在自体に問題があるのではなく、そ れを固定化するのか、新たな社会統合をめざすのか、その意思―民意が問われている。

 『21世紀の資本』を著したピケティ氏はこう述べている。
 「私は資本主義を否定しているわけではなく、格差そのものが問題というつもりもありません。ただ、限度がある。格差 が行き過ぎると共同体が維持できず、社会が成り立たなくなる恐れがあるのです」(毎日11/19夕刊)

 「未来へ投資する社会」に向けた合意形成の基礎に必要なのは、「正義」ではなく「正気」だ。「必要なのは、正義より 正気です。〜中略〜経済の正義では原発は必要でしょうが、安全の正義では不必要になる。双方がぶつかれば戦争です。それよりも、どちらが 正気を保ち、道を踏み外さない選択かを静かに考えるべきです。原発は今は儲かるけど未来の子どもに迷惑がかかる。やっぱりやめておこう か。こんな風に考えれば自然と道筋がわかる」(大林宣彦 8/9朝日)

 正気が保たれるには、維持すべき社会とその持続性が見えること、すなわち「顔の見える関係」での合意形成、そのなか で当事者性と関係性が集積されることが伴う。まさに自治の主体性である。

 3.11をひとつの契機として、私たちの社会の変化は臨界質量を超え始めた。依存と分配・一極集中・垂直統合型か ら、参加・自治・分権の自律(自立)分散型へ。こうした自治の集積のうえに、二度の政権交代を経た国民主権の次のステージを拓こう。
 民主主義が成熟すればするほど、政治とくに中央政治にできることは、社会の前向きな変化、自治の現場の取り組みを追 認し、それをサポートする環境をつくる(または邪魔しない)ことだけになる。中央政府の決定で中央政府の指揮の下、時代の変化に対応しようというのでは、独裁国家に等しいではないか。

 3.11後の新しい現実は地域にある。永田町・霞ヶ関・丸の内にはない。自治の現場で集積され始めた当事者性と関係 性、その基盤のうえに新しい社会的連帯の芽生えを。年末総選挙と来年四月の統一地方を、この点から連動させよう。

●アベノミクスの地方版か、住民自治の涵養と地域主体の地域再生か

 来春の統一地方選のためにも、この総選挙で問うべき争点のひとつは「地方創生」だ。「アベノミクス効果(どんな効 果?)を全国津々浦々に広げる」という発想では、人口減・少子高齢化社会という二十一世紀の構造問題に対応できないことは明らかだ。
 安倍首相は「世界で一番企業が活躍しやすい国に」というが、「競争、効率、グローバル戦略重視」では、地方創生はも とより限界都市東京も行き詰る。規模と効率・選択と集中の発想からは「分権なくして創生なし」となるだろうが、新しい社会的連帯の発想な ら「自治なくして創生なし」というべきだろう。

 地方創生の柱のひとつは地方での雇用創出であり、そのために地方の中枢都市に政策と資源を集中するという。これで地 域経済が活性化するのか。

 「中枢拠点都市の多くはこれまでも『ミニ東京』のような効率性重視のまちを作ってきた。このまま人口を集めても、景 観も整わずに地域の個性も文化もないまちになる。若い世代にとって魅力的な仕事は何かを、新しい地域像と一緒に論じる必要がある」(松永 桂子・大阪市立大准教授 読売11/20)

「地方にはこんなにいろんなビジネスがあります、このなかから選んで地方にはいっていらっしゃい、というやり方を、私た ちは最初のうちはやろうとしたんですが、それは違うと気がついた。その人が入ってくると、その人の個性に応じた人間関係ができていって、 その向こうにお金がついてくるんです」(澁澤寿一・森里川海生業研究所代表 四二四号)。

仕事がなければ、入ってきた人がつくれ ばいい。そういう「人が入ってきたい」と思う地域をどうつくるか、「ヨソモノ、若者、バカモノ」を受け入れる地域をどうつくるか。あるい は住民が主体となって地域の課題を事業化し、そこに外からの知恵や人も参画することで、地域のニーズを基に、地域のなかでお金が回る循環 ―地域内再投資が生まれる。人口減社会の厳しい現実に向き合い、地域再生への「新しい現実」をつくり始めている地域に共通するのは、こう いうことだろう。その知恵と工夫に学び、限界都市東京(首都圏)にも自治の芽を生み出せるか。来春の統一地方選は、その第一歩にほかなら ない。

 担い手も大きく変わる。「(住民主体の社会的企業に)共通するのは、自分たちの公共空間を大切に、人口が減っても住 み続けられる地域になるように、支えあい、助け合う自治の気持ちがあることだ」「(若者の関心が高いのは)経済成長の時代を知らない世代 だということに関係があるように思う。(中略)20〜30歳代はいま、組織の中で自分が頑張ることが何につながるのか、社会とどう関係し ているのかの実感が持てない人が少なくない。組織を離れ、地域に入って公共的な仕事にかかわり、新しい生き方を獲得したいと感じる人が増 えてきたのではないか」(松永准教授 前出)

 当然、こうした担い手は補助金に頼るところからは生まれない。「補助金だけ出せばいいとは思えない。補助金を受ける と、事業が拡大するにつれて『行政の下請け』になってしまう。(中略)社会的企業の自主性と自立を大切に、多面的な(支援の)手法を考え たい」(松永准教授 前出)。
 飯田市上村地区では、住民主体の事業体を立ち上げて小水力発電に取り組む。市は住民の合意形成にむけて黒子に徹し た。行政にとっては補助金で事業をやるよりはるかに手間と面倒がかかるだろうが、地域の自治や持続可能性、そのための社会関係資本の涵養 は、補助金頼みでは到底できない。
 東京都多摩市で市民発電事業にとりくむ多摩電力・山川代表も、自治体との連携は必要だが、補助などの特別扱いは受け ないことの意味を繰り返し強調している(9―11面「囲む会」参照)。

 住民自治の涵養と地域主体の地域再生―この問題設定から、3.11後の主権者運動の次のステージを整理しよう。総選 挙と統一地方選をその観点から連動させ、集積しよう。

(「日本再生」427号 12/1発行 一面より)

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□ お知らせ
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《東京》
◆第144回 東京・戸田代表を囲む会
「住民自治を涵養するローカルマニフェストへ 統一地方選にどう臨むか」
ゲストスピーカー 北川正恭・早稲田大学マニフェスト研究所所長
12月4日(木) 18時45分より

*住民自治の涵養と地域主体の地域再生― この問題設定から、総選挙と統一地方選を連動させ、集積するために。
 
◆第145回 東京・戸田代表を囲む会
「香港の民主化運動に思うこと―日本の若者の政治離れと比較して」
ゲストスピーカー 山田昌弘・中央大学教授
12月10日(水) 18時45分から

*研究休暇で香港に滞在中の山田先生。一 時帰国の機会に、現場で見た香港の民主化運動について、お話しいただきます。

◆望年会
住民自治の涵養と地域主体の地域再生で、主権者運動の次のステージへ
12月23日(火・祝) 16時より
会費 1500円
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)

《京都》
◆関西政経セミナー 特別講演会&望年会
12月11日(木) 18時より
コープイン京都
第一部 講演 「揺らぐ国際秩序と日米同盟」  村田晃嗣・同志社大学学長
第二部 望年会 午後7時より
会費 4500円(講演会1000円 望年会3500円)

◆第24回 戸田代表を囲む会in京都
「香港の民主化運動に思うこと―日本の若者の政治離れと比較して」
ゲストスピーカー 山田昌弘・中央大学教授
1月30日(金) 18時45分から
ハートピア京都 第5会議室
参加費 1000円

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp