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「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
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Index 
□ 地方創生 アベノミクスの地方版か、
地域主体の地域再生(地域内再投資力向上)・住民自治の涵養か
 ●未来を搾取する社会から、未来へ投資する社会へ 
 ●田園回帰とその経済的基盤 地域内再投 資力を高める
 ●地域再生・地域内再投資力の向上と住民自治の涵養を車の両輪として

□お知らせ
 ◆東京・囲む会(「地域再生・住民自治」の涵養をテーマに、香港民主化も)
 ◆京都シンポジウム(11/24 「地域再生」)
 ◆「急募! 稲刈りのお手伝い」 その後
 
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地方創生 アベノミクスの地方版か、
地域主体の地域再生(地域内再投資力向上)・住民自治の涵養か
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●未来を搾取する社会から、未来へ投資する社会へ 

 日銀が四半期ごとに行っている「生活意 識に関するアンケート調査」で、一年前と比べて現在の暮らし向きに「ゆとりがなくなってきた」という家計が、全体の約半数(48・5%)に達し、安倍政権が誕生する直前の水準 まで高まっていることが分かった(ブルームバーグ10/2)。これは安倍政権が誕生する前に行われた二〇一二年十二月調査(50.4%)以来の高い水準とのこと。
 「ゆとりがなくなってきた」と答えた人 にその理由(複数回答)を聞いたところ、「物価が上がったから」が66・2%に達し、「給与や事業などの収入が 減ったから」の48・5%を上回り、最多となった。「物価が上がったから」という回答は、消費税率引き上げ後に行った前回六月調査(61・9%)をさらに上回った。

 アベノミクスはデフレ経済脱却の旗印の 下、経済実態は伴っていないものの、インフレ期待をつくり出し、日経平均株価の上昇と円安を実現した。しかし円安は、海外生産が進んでいる日本の輸出産業に とって輸出増加には結びつかず、逆に輸入物価の上昇がコストアップにつながり、企業収益が増えても十分には賃金に反映されず、消費税率引き上げとあいまっ て実質所得の低下を引き起こした、ということだろう。

 来年からの消費税率引き上げの判断に絡んで(いわゆる「景 気条項」)、こうした景況感の悪化が取りざたされる のは、皮肉というほかはない。仮に、景気条項に基づいて消費税率引き上げを見送れば、政治的にアベノミクスの失敗を意味することになる。
 さらに言えば、消費税率引き上げの決断(野田政権での三党合意)は、目先をしのぐために後世にツケを回す― 未来を搾取する社会を、これ以上肥大化させないということが、ようやく永田町でも合意 されたことを意味していた。これがチャラになるなら、アベノミクスの二年間は未来を搾取する社会を肥大化させただけだった、ということになる。

 その意味でも、第二次安倍改造内閣がかかげる「地方創生」は、その真価が問われる。人口減少社会という構造問題に、 どう対応するのか。「アベノミクス効果を全国津々浦々に広げる」(与党幹部)といった発想では、将来へのツケを積み上げる結果にしかならない。

 人口減少の意味するところは何か。これから五十年、現役世代の人口が半減するところまでは人口減少は止められない。この、少子高齢化の一番きつい時期をどう乗り切るか、という課題がひとつ。そして出生率を向こう二十年以内に1・8程度まで戻すことができれば、そこそこの人口・経済は維持でき、先進国の地位を降りること もない。つまりより本質的な課題は、目先の景気を支えることより、二十一世紀後半の日本の屋台骨を支える世代をいかに支援していくか―未 来への投資、ということだ。

 その実践―新しい現実は、すでに地域の現場で始まっている。島根県中山間地域センターの藤山浩・研究総括監は、@首 都圏人口の一万分の一、三千人が毎年移住すれば、島根県の田舎の人口は定常的に維持できる(この規模なら、地方同士の奪い合いにならな い)、 Aその経済基盤は、地域外に流出しているお金の1%を取り戻す(地産地消に替える)ことで可能、と述べている(本号六―八面参照)。すでに島根県の田舎の田舎では人口の社会増が達成され、子どもの数が増えて いる。

 永田町・霞ヶ関に必要なことは、人口減少社会の厳しい現実に直面し、試行錯誤のなかから新しい現実を創りだし始めた 地域の実践を追認することだろう。

●田園回帰とその経済的基盤 地域内再投資力を高める

 「若者に魅力のある地域拠点都市」とい う構想も、若者は都市志向という旧態依然の発想だ。内閣府の調査によれば、都市に住む人に 地方に移住してもよいと思うか聞いたところ、「思う」「どちらかといえば思う」の合計が、20〜40歳代でそれぞれ半数を超えたという(50代以上は三割前後)。限界都市東京の現実は、若い世代にとって切実 な生活実感だろう。

 例えば東京では20代、30代女性のうち、二人に一人が働いていないという。子どもができると働き続けるのが難しいので、一人目の出産で退職して専業主婦になってしまうケー スが多いためだ。そうなると収入も減り、保育所もないの で二人目はあきらめることになる。結局仕事をやめて、なおかつ子どもは一人。その一方で、一人の稼ぎで一家を支えられなければ結婚も難しい、という二極化が進む。こんな地域が、はたして持続可 能といえるだろうか。
 逆は島根県で、日本で一番若い女性が働いて いるのは島根県で、子どもが産まれる率は日本で二番目に高い。これが田園回帰のリアルではないか。

 「こういう田舎だったら、だんなさんは何 らかの正規職員であれば、奥さんはパート、アルバイトはいろいろある。二人あわせて年収五百万もあれば、楽に暮らして行けます。都会とは 違って出て行くものは少ないですから。そして子育て環境はいい、と」(石橋・邑南町長 本号四―六面)。
 こうした地域の持続可能性を支えるのは、外からの企業誘致よりも、地域の資源を生かした、地域の関係性のなかから生 まれてくる小さなビジネスだ。

 「小さくてもいいので女性の起業家を増やしていかなければいけないと思っています。雇用が一人、二人でもいいので、 そういうものがクラスターになっていけば、それがまた企業誘致にもつながるかもしれない。そういうところに、力をいれていこうと考えてい ます。〜大きな企業をひとつ誘致しても、景気が悪くなればすぐにいなくなってしまいます。それよりも地域の資源を使って、小さな経済を地 域で起こしていくことが大事だと思います」(石橋町長 前出)

 地域の資源を生かした小さなビジネス、そして地域内循環―地域内再投資力を高める。これが地域再生のキモだ。これま での「競争、効率、グローバル戦略重視」の延長では、地方創生は行き詰まる。

「地方にはこんなにいろんなビジネスがあります、このなかから選んで地方にはいっていらっしゃい、というやり方を、私た ちは最初のうちはやろうとしたんですが、それは違うと気がついた。その人が入ってくると、その人の個性に応じた人間関係ができていって、 その向こうにお金がついてくるんです」(澁澤寿一・森里川海生業研究所 代表 四二四号)。

仕事がなければ、入ってきた人がつくれ ばいい。モノではなくヒトへの支援、人と人が支えあう関係性―社会関係資本への投資こそが必要であり、それは永田町や霞ヶ関が差配するこ とではなく、地域自治の合意でつくられていくものにほかならない。
 
●地域再生・地域内再投資力の向上と住民自治の涵養を車の両輪として

 国民経済の基礎細胞としての地域経済をしっかり回していくこと(地域内循環、地域内再投資力の向上)と、住民自治を 涵養していくことは、いわば車の両輪といえる。

 例えば「地方創生」の切り札のひとつと目される再生可能エネルギーも、外から大資本が入って大規模発電をするだけで は、地域には地代と多少の雇用が生まれるにすぎず、発電による利益は域外に流出する。地域住民が主体となって、地域のステークホルダーを 交えて合意形成する地域主導型の事業なら、発電収入が地域に入るだけではなく、さまざまなレベルでの当事者意識が涵養されることにつなが る。それは地域の課題に取り組むための、貴重な社会関係資本にもなるはずだ。

 飯田市では、再エネ資源は第一義的に地域住民のものであり、地域のために使われるべきである、との理念から条例を制 定し、この条例による支援を受けた住民主体の再エネ事業(小水力発電)がスタートする運びだという。地域のさまざまな利害を調整し、事業 を運営していくうえでは、同市に長年根付いてきた住民が地域の課題を話し合う場としての公民館活動の蓄積が、大きな役割を果たしたと思わ れる。

 平成の大合併で地域自治を合理化したところでは、人口減少、地域衰退に拍車がかかっている例が少なくない。逆に合併 しなかった小さな自治体、あるいは合併しても地域自治組織を残したり、むしろ強化したような地域では、厳しいけれど持ちこたえている、あ るいは試行錯誤してきたことが3.11後からは形になりつつある、というところが、ちらほら見えてきている。

 都市部においても、高度成長期に建設した公共施設の更新、防災、空き家など、右肩上がりの時代とは次元の違う課題に 直面しつつある。団塊世代が全員、六十五歳以上の高齢者になる来年以降、都市部でも地方の限界集落並みの高齢化率の地域が出現する。いつ までも、「他人任せ」「役所任せ」で済ませるわけにはいかなくなる。

 都市型再エネ発電に事業として挑戦している多摩電力。その立ち上げに関わった人々は、それまで何らかの形で地域の市 民活動に携わっていた人たちだという。おそらく3.11までは、お互いに連携はなかっただろう。地域の人々が互いに顔を合わせ話し合う、 そうした場をまずはどこまで作れるか。

「同じ地域社会の中にそういう活動が重層化しているんですが、お互い別々なんです。個人的にはつながっているか もしれないけれど、それぞれのアジェンダがつながるということは、なかなかないんですね。
〜(ある)アジェンダを設定して投げ込めば、違う領域で活動している地域の中のこの人、この人、この人たちが、共通するこのア ジェンダに対しては関わりを持ちたいと思うだろう。関わりを持つことによって、複合的にいいものが生まれるかもしれないと。よく地域を歩 いている議員さんというのは、そのイメージが見えるわけです。
そういうことを投げ込める地域の場を、 議会としてどう作れるか。〜(議会報告会でも)たとえば各地区ごとに、こういう人には関心を持ってもらえるであろう、こんな課題があるんです、ということを持って 行って議論をする。必要があれば専門家のアドバイスみたいなものを携えていきます、と。こういうことは議会改革、議会における市民参加と いうことを通しても、やりようはかなりあると思います」(廣瀬克哉・法政大学教授 四二四 号)

議会改革、議員マニフェストにおいて も、住民自治の涵養にどれだけ結びつくか。そのステージへの入り口として、来年の統一地方選を準備しよう。地域再生・地域内再投資力の向上と住民自治の涵養を、主権者運動の車の両輪として。

(「日本再生」426号 11/1発行 一面より)

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□ お知らせ
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《東京》
東京・戸田代表を囲む会【会員限定】
会場は「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
参加費 同人1000円 会員1000円

◆第143回 東京・戸田代表を囲む会
「市民の発電事業・おひさま進歩のこれまで、これから」
ゲストスピーカー 原亮弘・おひさま進歩社長
11月19日(水) 18時45分から

*「屋根貸しモデル」の草分けとなった、飯田市のおひさま進歩・原社長から現在までの取り組みと、今後の方向、課題に ついてお話しいただきます。
 また、石津事務局長より、ドイツの視察について報告。買取制度をめぐるドイツの試行錯誤(成功したが故の課題)と、 スタートしたばかりの日本にとって教訓とすべき点についても、報告します。

◆第144回 東京・戸田代表を囲む会
「住民自治を涵養するローカルマニフェストへ 統一地方選にどう臨むか」
ゲストスピーカー 中村健・ローカルマニフェスト研究所事務局
12月4日(木) 18時45分より

*住民自治の涵養にどう結びつくか、というステージにはいりつつあるローカルマニフェスト。来年の統一地方選にどう臨 むか、マニフェスト研の中村さんをまじえマニフェスト大賞優秀賞(議会部門)を受賞した、埼玉政経セミナーの取り組みもふまえて議論した いと思います。
会員議員のみなさん、ふるってご参加を!
 
◆第145回 東京・戸田代表を囲む会
「香港の民主化運動に思うこと―日本の若者の政治離れと比較して」
ゲストスピーカー 山田昌弘・中央大学教授
12月10日(水) 18時45分から

研究休暇で香港に滞在中の山田先生。一時帰国の機会に、現場で見た香港の民主化運動について、 お話しいただきます。

□望年会
12月23日(火・祝) 16時より
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)

《京都》
◆シンポジウム
「里山・林業の再生から地域再生・新しい地域経済を考える」
11月24日(月・祝) 14時から18時
コープイン京都 2階
参加費 1000円
第一部 講演 太田昇・真庭市長、中島浩一郎・銘建工業社長
第二部 パネルディスカッション 太田市長、中島社長、岩ア憲郎・高知県大豊町長、
    諸富徹・京都大学教授、前田武志・参議院議員 

◆関西整形セミナー 特別講演会&望年会
12月11日(木) 18時より
コープイン京都
第一部 講演 「揺らぐ国際秩序と日米同盟」
    村田晃嗣・同志社大学学長
第二部 望年会 午後7時より
会費 4500円(講演会1000円 望年会3500円)

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 「急募! 稲刈りのお手伝い」 その後
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先月末、お知らせした秋田のファームガーデンたそがれ・菊地さんの「急募!稲刈りのお手伝い」。なんと全国各地から、 のべ200人ものみなさんが応援に駆けつけ、無事、すべての稲の手刈りを終了したそうです。親友、食べる通信の読者、知人の知人から etc「作る人」と「食べる人」がつながることのパワーを垣間見せてくれた出来事といえるでしょう。

食べる通信、高橋編集長のプレゼンでも紹介されています。
https://www.youtube.com/watch?v=s-iBTD67bgM …


-- 石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp