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「がんばろう、日本!」国民協議会
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▼ Index 
地域民主主義の深化と里山資本主義の叢生から見えてくる
二十一世紀の課題先進国にむけたモデル

●未来を搾取する社会から、未来へ投資する社会へ  転換を確かなものに
●未来へ投資する社会の担い手は、どこまで準備されているか

□10月 囲む会・東京 のお知らせ&11月シンポジウム

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地域民主主義の深化と里山資本主義の叢生から見えてくる
二十一世紀の課題先進国にむけたモデル
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●未来を搾取する社会から、未来へ投資する社会へ  転換を確かなものに

 安倍総理は、消費税増税について最終決定すると見られている。すでに増税を意識して、さまざまな経済対策 や低所得層への対策が構想されているが、「景気判断を見て増税を決断した」ということでは、あまりスジのいいメッセージとはいえないだろ う。そもそもこれは、「税と社会保障の一体改革」として合意された増税である。「社会保障システムを支えるために必要だ」といったほう が、国民も納得しやすいはずだ。

 増税リスクの分析は必要だが、政治に問われているのはエコノミストの分析ではなく、未来を搾取する社会か ら未来へ投資する社会へと転換する政治決断であり、そのメッセージだ。
 5%の増税のうち、制度の拡充に使われるのは1%、残り4%は現在の社会保障制度を維持していくために、 現在の税収では足りずに赤字国債でまかなっている分に充てることになっている。つまり今回の消費増税は、将来世代への借金のつけ回し(未 来を搾取する)をこれ以上増やすわけにはいかない、という政治決断であり合意であるはずだ。増税分をバラマキに散財しようという動き(依 存と分配への逆行)を封じるためにも、「なぜ増税が必要なのか」を正面から国民に説明すべきである。

 まちの財政がどうなっており、どうなりうるか、受益と負担を「見える化」し、市民と徹底して議論する―自 治分権の現場で改革に取り組む首長がやってきたことだ。二度の政権交代を経た今、国政の場でもそういうステージにはいるべきではないか。 未来を搾取する社会から未来へ投資する社会への転換―自治の現場では、その芽は着実に生まれている。この変化をより確実なものとするため にも、将来世代への借金のつけ回し(未来を搾取する)をこれ以上増やすわけにはいかない、そのための増税であることを、政府は国民に正面 から説明すべきだ。

 増税を行うときは、税制の効率性や公平性などを改善するための、よい機会でもある(増税対策と称して細々 とした減税特例措置を設ける等は、愚の骨頂)。政府は増税の必要性を説明するとともに、中長期の財政健全化と経済成長に向けて(未来へ投 資する社会に向けて)、確固たる姿勢を示すことである。

 3.11からの復興という課題は、めざす方向性においても、そのプロセスや手法においても、二十世紀型・ 右肩上がりの時代のものではありえない。未来へ投資する社会に向けたイノベーションの宝庫のはずだ。原発の後始末、エネルギー・シフトと いう新しい課題には、負の資産のたたみ方と未来の立ち上げ方(未来への投資のしかた)という、これまでにないマネジメントが要求されてい る。「失われた20年」から脱却するラストチャンスだ。

 二〇二〇年開催が決まった東京オリンピックは、高度成長への入り口となった一九六四年とは別次元のコンセ プトが求められる。日本が二十一世紀型の成熟した先進国としてどう歩んでいくのか、そんなビジョンや姿を示すことができるのか。そのため にも、未来を搾取する社会から、未来へ投資する社会への転換を確かなものとする政治決断を示す秋だ。(政権運営を経験した野党は、右肩上 がりの時代の政権運営にはなかった「たたみ方と立ち上げ方」のマネジメントがはじめて問われた、という経験の総括から政権を検証すること ができるか。)

●未来へ投資する社会の担い手は、どこまで準備されているか

 一九九三年、地方分権推進に関する国会決議から分権改革はスタートした。この年、自民党がはじめて下野 し、衆議院選挙における小選挙区制導入が翌年成立した。それから二十年。小選挙区制がめざした選挙による政権交代は二度実現されたが、政 権交代可能な政党政治はいまだ成らず。一方で分権改革は遅々とした歩みではあるが、新しいステージへ移りつつある。

 山梨学院大学・江藤教授はこの二十年を、「地域政治=地域民主主義の変容 地方行政重視から地域政治の台 頭へ」として、以下のように概観している。「地域民主主義は進化(深化)している。〜ひとつは政治的アクターの関係である。機関委任事務 の廃止は、名実ともに住民、議会、首長を地域政治の主体に登場させた」「従来の首長主導はもとより、議会と首長との関係だけを強調する 『二元代表制』を念頭に、今日の地域政治を見ることは失当である。〜国政と異なって住民が政治・行政に日々参加する。したがって、住民参 加なき二元代表制は、除々に後退する」(江藤「ガバナンス」8月号)。

 交付金に代表されるような制度的課題は山積している。しかし確実に地域民主主義は深化している。国政の従 属物としての地域政治(国政および地方選挙)や、異議申し立ての住民運動という範疇を超えて、「自分たちのまちがどうなっており、どうな りうるか」をめぐって、地域の政策や制度に関する議論や運動が行われている。選挙に限定(ときには矮小化)されない住民参加の拡大を継続 し、集積してきた地域と、それが疎かになっていた地域。その格差が可視化される局面でもある。

 これはリーダーシップの転換でもある。住民参加の拡大・継続・集積の肝はトップダウン型ではなく「巻き込 み型」、フォロワーシップの発揮あってのリーダーシップである。さらにここから提起されるのは、フォロワーシップの転換である。住民が地 域政治の主要なアクターとなればなるほど、「自分たちのまちがどうなっており、どうなりうるか」を共有し、受益と負担を見える化して議論 し、決定に参画し、また協働することが必要になる。(8/10シンポジウム 本号・四一二号ならびに本号の石津・北本市長記事などを参 照。)受益と負担、参加と責任というところから、未来へ投資する社会の担い手が準備されていく。

 住民参加の拡大がもたらすもうひとつの転換は、地域経営の質の向上だろう。住民参加の分野は幅広い。まち づくり、商店街活性化、地域ブランド、B級グルメ、地域通貨、地産地消など、さまざまな形で地域経営への住民参加や、住民主体の地域経営 が展開されてきた。背景には工場や高速道路を誘致したり、補助金を引っ張ってくるといった旧来型手法では、もはや地域の活性化は図れない という変化がある。

 これらを一過性のブームやイベントに終わらせないためには、住民自身が経営の持続性を担わなければならな い。それには「ないものねだりではなく、あるものみがき」といわれるように、内発的な発展と地域循環型の持続性が求められる。右肩上がり の時代とは、地域経営の質も方向性も大きく転換する。

 また事業を継続させるためには、自分たちでリスクをとることも必要になるし、投資も必要になる。次世代の 担い手も育てていかなければならない。同じ借金でも「未来の搾取なのか」「未来への投資なのか」をリアルに問うことになる。おのずと合意 形成の質も向上する。

 求められる知恵も、マネジメント能力も別次元のものだ。例えば公共施設の更新をめぐっては、単に必要かど うかだけではなく、また財政の制約からだけでもなく、地域全体の将来像や地域経営の持続性を複合的・統合的に議論し、合意形成することが 求められる。「新たに作る」だけの時代とは違って、「たたみ方」と「立ち上げ方」の合わせ技が必要になる。ここでも「未来への投資なの か」を問いあうことになる。
(政権交代可能な政党政治や議会改革といった課題も、こうした舞台の上に立たせる必要がある。)

 とりわけ再エネ事業は、こうしたこれまでの地域経営の集積をさらにバージョンアップさせるものにほかなら ない。「大手企業に頼らず、地域住民や地元企業が自らリスクをとって事業を立ち 上げるのは、やはり荊の途である。しかし、この途を切り開くことなくして、地域で所得や雇用を増やすことはできない。逆に、事業資金を地 方銀行や信用組合などと協力して地元で調達すれば、地域内で資金循環を生み出すことができる。さらには、売電収入を地域に再投資すれば、 その地域の持続可能な発展への途が見えてくる。地域住民や地元企業が自ら再エネ発電事業に挑戦するのは、大手企業に 頼るよりもはるかに困難だが、決して不可能ではない。そしてそれは、地域経済再生の核になりうる点で、十分に試してみる価値のある挑戦で ある」(諸富徹「再生可能エネルギーで地域を再生する」『世界』10月号)

 住民主体の地域経営の叢生は、経済の風景も変えることだろう。「ナンバーワンではなくオンリーワン」とい われてきたが、小さな地域と地域がゼロ・サムではなく、情報や経験を交換しつつ、経営の質を高めていくウィン・ウィンの関係で発展するよ うになると、グローバル経済の見え方も違ったものになるだろう。

 「グローバル時代は強い物しか生き残らない時代だという考え方自体が、誤解…時代錯誤と言えます。われわ れはグローバルジャングルに住んでいます。…強い者しかいない世界ではありません。…ライオンさんから小動物たち、草木、果てはバクテリ アまでいる。…多様な個性と機能を持ち寄って、生態系を支えている。これがグローバル時代だと思います」(浜矩子・同志社大学教授「里山 資本主義」)。

 こうして、日本が二十一世紀の課題先進国になるためのさまざまなモデルや知恵、経験は地域に芽生えつつあ る。各地に点在する芽を点から線へ、線から面へ。そこから、二十一世紀の課題先進国に向けた選択肢を絞り込んでいこう。八月十日に開催したシンポジウム「自治分権の実現力を競う」(四一二、四一三号)を踏まえ、十一月十日のシン ポジウム「未来へ投資する社会〜エネル ギー自治、循環型社会」では、エネルギー自治、地 域循環、地域連携について深めながら、「どんな未来を選びとり」、「どんな未来に投資するか」をさらに共有していきたいものだ。

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10月-11月の囲む会&シンポ ジウム ご案内
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【東京・戸田代表を囲む会】

□第129回 東京・戸田代表を囲む会
10月8日(火)18時45分から21時
ゲストスピーカー 一方井誠治・武蔵野大学教授
「自治体の環境エネルギー戦略―ドイツと長野県の事例から」

□第130回 東京・戸田代表を囲む会
10月25日(金)18時45分から 21時
ゲストスピーカー 廣瀬克哉・法政大学教授
「議会改革は、代表制民主主義 を活かすことができるのか」

* いずれも 
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
参加費は 同人・1000円  購読会員・2000円

【11月シンポジウム 未来へ投資する社会へ〜エネ ルギー自治、循環型社会】
11月10日(日)13時より17時
場所 日本交通協会 大会議室 (有楽町・新国際ビル9階)
http://www.kotsu.or.jp/bp/root/room/
参加費 2000円

パネラー 
植田和弘・京都大学教授、諸富徹・京都大学教授先生、寺西俊一・一橋大学教授、
おひさま進歩(飯田市)・原亮弘社長、銘建工業(真庭市)・中島 浩一郎社長 ほか

*本年1月に続き、エネルギー自治を切り口に、循環型社会や地域連携について議論し、「未来へ投資する社 会」への糸口を実践的に共有したいと思います。
銘建工業は、林業とバイオマスエネルギーを展開する地域循環型社会の担い手。「里山資本主義」(藻谷浩 介+NHK広島取材班 角川oneテーマ21)にも紹介されています。

【政策勉強会@京都】
「国に先駆けてきた野田市の取り組み〜公契約条例、自然保護、参加型福祉」
講師 根本崇・野田市長

11月11日(月)19時から21時
コープイン京都 202会議室
参加費 1000円

主催 全京都建設協同組合 京都府電気工事工業協同組合
後援 「がんばろう、日本!」国民協議会

【関西政経セミナー特別講演会&望年会】
*関西政経セミナー特別講演会「日本外交に問われるもの」(仮)
講師 村田晃嗣・同志社大学学長
12月11日(水)18時より約1時間
コープイン京都 202会議室 
参加費 1000円
*望年会
講演終了後19時すぎより
コープイン京都1階にて
参加費 3500円

【望年会・東京】
12月21日(土)17時より
「がんばろう、日本!」国民協議会 事務所(市ヶ谷)
参加費 1500円
-- 石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp