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「がんばろう、日本!」国民協議会
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▼Index 

□「憂鬱な圧勝」から始まった「負の再分配」の時代
〜2012総選挙の総括視点

●期待感・高揚感なき「憂鬱な圧勝」
魔法の杖はないことを知りつつ、「負の再分配」の時代へ

●「負の再分配」のための合意形成が、待ったなしに問われている。

●選挙を非日常にするのは、終わりにしよう。主権者の勝負はこれからだ。

□望年会と新春特別シンポジウムのお知らせ

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「憂鬱な圧勝」から始まった「負の再分配」の時代
〜2012総選挙の総括視点
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●期待感・高揚感なき「憂鬱な圧勝」
魔法の杖はないことを知りつつ、「負の再分配」の時代へ

第46回総選挙は、ふたを開けてみれば当初の予想どおり、自民党の圧勝、民主党の惨敗で終わった。自公は参院での否決を覆すことができる、衆院の三分の二を上回る議席を得た。これで「ねじれ」も解消できる。

とはいえ、05年郵政選挙、09年政権交代のような高揚感、期待感とは程遠い。「失われた20年」の負の遺産、少子高齢化、Gゼロといわれる国際政治のパワーシフトと北東アジアの緊張、世界同時財政恐慌といわれるような不安定なマーケットの動向、そして前例のない復興と原発事故の後始末…。野田政権が難儀した宿題は、そのまま自民党・安倍政権に引き継がれる。いずれも右肩上がりの時代の政権運営の経験では、対応できない難題ばかりだ。

自民が支持されたわけではない、民主が自滅しただけだ、といわれるように、自民党にとっても「憂鬱な圧勝」である。(自民党の比例の得票は09年よりも減っている。政党乱立の結果、小選挙区で43%の得票で79%の議席を獲得し、民主は23%の得票でも議席は9%にとどまった。)選挙中に、「われわれがやればうまくいく」と自ら高めた期待に応えることができなければ、すぐに反動が返ってくる。とくにマーケットは、民意よりもはるかに短気だ。

踏みとどまった民主党には、その存在意義が根底から問われる。郵政選挙までは、政権交代という「坂の上の雲」を目指すといえたが、もはやそれはない。「凌ぎ」の時代、「負の再分配」の時代のはじめての政権運営という経験を財産に、30年後、あるいは(高齢化のピークを迎える)40年後の持続可能性から現在を規定する、という責任性や胆力がでてくるか。それなしには、解党的出直しには耐えられないだろう。

「凌ぎ」の時代、「日本が本当はどうなっており、どうなりうるのか」。05年総選挙はもちろん09年総選挙でも、こうした「不都合な真実」に正面から向き合うことを避けてきた。「第二の経済大国」幻想が剥げ落ちてようやく、マニフェストに「負の再分配」「何をあきらめるのか」を求める経営者市民、主権者市民が芽生え始めたが、今回それに正面から応えた政党はなかった。

直前でも「決めていない」が前回より10ポイント近く多く、投票率が戦後最低となったことの本質は、そこにあるといっていいだろう。おそらく多くの有権者は、消去法で選択したことだろう。有権者は、鬱憤晴らしに熱狂しはしなかった。魔法の杖はないことを知りつつ、(棄権も含めて)「憂鬱な」選択をしたということではないか。

「負の再分配」はもはや避けられない、そのことはうすうす分かりつつ、しかし未だ正面から向き合うことを恐れたまま、それでも否応なしにふりかかってくる難題に立ち向かわなければならない。そういうステージが始まった。そう、21世紀の新しい現実はすでに始まっているのだから。そして、税と社会保障をはじめとして原発・エネルギー、TPP、北東アジアでの新たな立ち位置など、野田政権から安倍政権に引き継がれる21世紀の難題は、政権の宿題であるとともに、私たち国民の宿題でもあるのだから。
受益者市民の鬱憤晴らしからは卒業しつつあるが、経営者市民、主権者市民の政治空間は(国政レベルでは)未だならず(自治では点在)、という過渡期。それが第46回総選挙の風景だろう。ここから総崩れになるのか、踏みとどまれるのか。参院選はその最初の試金石となるはずだ。


●「負の再分配」のための合意形成が、待ったなしに問われている。

比例代表の政党別得票 ()は09年 1万以下は四捨五入

自民党 1662万(1881万)
民主   963万(2984万)
公明   712万( 805万)
みんな  525万( 300万)
維新  1226万(−)
共産   367万( 494万)
社民   142万( 300万)
未来   342万(−)

・民主党は03年の民由合併以来、コンスタントに比例で2000万票を維持してきた。いわば政権交代を期待する基礎票である。そのうちの1000万近くを、今回失った。その多くは維新に、一部は未来に流れ、また一部は棄権に回ったと思われる。「政権交代」という「坂の上の雲」の後に、「負の再分配」という21世紀の課題をどれだけ共有できたのか、できるのかが問われてきたし、問われ続けている。

・本来、この選挙は三党合意に基づくものであった。(減税とバーターではない)純増税は31年ぶりであり、それを与野党の圧倒的多数で可決したのもはじめてのことである。恐る恐る「負の再分配」に向き合い始めた。その第一歩ともいえる。
利益の再分配の時代の合意形成は、本質的には分捕り合戦だから、「依存と分配」「寄こせ、寄こせ」でも参加できる。しかし「負の再分配」の合意形成には、「寄こせ、寄こせ」では参加できない。最初から拒否を決め込むとか、ちゃぶ台返しで合意プロセスをぶち壊す、ということになる。

共産、社民、未来の得票は、負の再分配の合意形成への参加拒否、ちゃぶ台返しの政治勢力は、ようやく永田町でも少数派となったということ、そういう民意だろう。維新、みんなについては、今後の「負の再分配」をめぐる合意形成にどう係わるかが問われる。
また圧勝した自民のなかにも、「寄こせ、寄こせ」が少なからず紛れ込んでいる。民主党が難儀した負の再分配をめぐる党の合意形成が、今度は自民党に問われることになる。ここで分捕り合戦に先祖帰りすれば、先の展望はない。

・この点で重要な試金石となるのが、三党合意の確実な実行である。繰り返せば、三党合意とは@消費税増税と社会保障改革 A赤字国債発行法の三年間の成立 B衆院定数是正である。「次世代にこれ以上ツケを回さない」という政治意思が、あいまいにされてはならない。

@消費増税と社会保障改革 安倍次期総理は、デフレが続けば消費増税は実施できないとの立場だが、消費増税の先延ばしが日本国債の信認に与える影響は小さくない。下手をすれば、アベノミクスのマジックは簡単に吹っ飛ぶことになる。
リフレ政策の効果は短期的なものに限定される。産業構造の転換、そのスピード、少子高齢化といった構造的変化への対応(社会保障改革の本質はここにある)と、財政健全化といった本質的な課題を先送りすべきではない。消費増税はその一歩にほかならない。

A三党合意によって、赤字国債発行が「ねじれ」国会で与野党の駆け引きに使われることは、少なくとも三年間はなくなった。この間に財政健全化と財政規律について、まともな合意ないし制度化ができるか。三党合意の次の一歩となる、「負の再分配」の合意形成が不可欠だ。これに逆行する予算編成を行い、国債を大量に増発するようなことになれば、そのツケは大きなものになるだろう。

B定数是正は、違憲状態がさらに拡大している以上、急務である。問題は定数削減で、これはまさしく永田町の当事者のなかで、「負の再分配」をいかに合意形成するかだ。三分の二を持つ与党がグズグズしていれば、失望→反動はすぐに現れることになる。


●選挙を非日常にするのは、終わりにしよう。主権者の勝負はこれからだ。

今回は05年、09年のような「旋風」がなかったにもかかわらず、これだけの大差がついた。これが小選挙区制度の特徴だ。選挙のたびにこんなに振れたのでは政治が安定しない、といって選挙制度を変えようという動きも出てくるだろうが、それは間違いだ。

一票で「簡単に」政権を変えられる、大幅に議席を入れ替えることができるからこそ、「何が大切か」よく考えて一票を投じる有権者が大勢いなければならない、というだけのことだ。

選挙を非日常のことにしていては、「何が大切か」よく考えることはできない。いきなり「一ヶ月後に選挙です」と言われ、どこの誰だかわからない「立候補予定者」がウヨウヨ出てきて、検証も評価もできない「公約」を並べ立て、それで「さぁ、選んでください」といわれて、まともに選べるわけがない。こんなふうに選挙を非日常にするのは、終わりにしよう。

選挙が終わったところからが、主権者の勝負だ。
選挙―投票は社会参加のひとつにすぎない。それもごく限定された一部だ。社会参加のルートは選挙以外にも山ほどある。日々、生活を通じて社会の問題にかかわり、自分にできることをやり、それを通じて「何が大切か」をみんなで話し合う。そういう日常の積み重ねがあってこそ、いざ選挙のときにも冷静に、「何が大切か」を考えて一票を投じることができる、というものではないか。

例えば、すでに人口減少、少子高齢化が見えているなかで、地域のインフラをどうやってたたんでいくか(ダウンサイジング)、老朽化した施設をどうやって集約し、更新していくか(何をあきらめるか)、そのなかで地域包括ケアなどの新しいまちづくりをどうすすめていくか、それを行政だけではなく企業、市民もどう担っていくかetc。自治の現場でこうしたことに日常的に取り組み、「何をあきらめるか」の合意形成を繰り返していれば、選挙のときに後先も考えず、「これをやれば解決する」式の公約に飛びついたりはしないだろう。

「何をあきらめるか」「負の再分配」の合意形成をどうするか、と日常的に問いかけられれば、議員も、選挙のときに耳障りのいいことを言う、という職業病にかからずに済むかもしれない。有権者が日常的にそう問いかけることで、バッジ組(+バッジをつけたい組)がどういうレベルのシロモノなのか、日ごろから評価することもできるし、鍛えることもできる。

選挙になっていきなり、どこの誰だか分からない人に投票する。あとはテレビを見て文句を言い、数年後にまた他の誰かに投票する―そういう非日常の選挙は終わりにしよう。日常の社会参加を通じて、自分が選んだ議員や政党が何をしているか、日ごろから検証・評価し、その集積で次の一票を投じよう。

選挙以外にも、社会参加は山ほどあるということは、例えば以下をご参考に。
*病児保育のNPO法人フローレンス代表 駒崎弘樹のブログ より
「選挙結果に凹んでる人、実は勝負はこれからだ」(2012/12/17)
http://komazaki.seesaa.net/article/308104801.html

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望年会と新春特別シンポジウムのお知らせ
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●望年会(東京)
12月22日(土)16時から
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
会費 2000円

●新春特別シンポジウム
「エネルギーと自治〜民主主義のバージョンアップとフォロワーシップの転換」
1月12日(土)12時から
アルカディア市ヶ谷 5階「穂高」
参加費 2000円
パネラー 植田和弘・京都大学教授、諸富徹・京都大学教授
     武久顕久・瀬戸内市長、原亮弘・おひさま進歩社長 ほか

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL 03-5215-1330 FAX 03-5215-1333