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「がんばろう、日本!」国民協議会
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▼Index 
「自分たちで決めたい」のか「誰かに決めてほしい」のか
受益者市民にとって、政治は憂さ晴らし。
「何が大切かを落ち着いて考える」リアルでポジティブな主権者の場づくりを

●リーダー勝負からフォロワー勝負へ
●「依存と分配」から「選択と熟議」へ
 転換のためのフォロワーシップを醸成する場づくりとは

□ご案内
◆10月3日 講演会 福山哲郎・参議院議員
「マニフェスト政治文化『次』のステージへの転換を〜エネルギー・温暖化戦略を軸に」
ほか
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「自分たちで決めたい」のか「誰かに決めてほしい」のか
受益者市民にとって、政治は憂さ晴らし。
「何が大切かを落ち着いて考える」リアルでポジティブな主権者の場づくりを
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●リーダー勝負からフォロワー勝負へ●
冷戦終焉に際して「氷が割れるときが一番危ない」と言ったのは、確かサッチャー女史であった。これまでのシステムや枠組みが歴史的に持たなくなり、その命脈は尽きつつあるが、それに代わる新しいシステムや枠組みは未だ成らず、という移行・転換の時期こそ、もっとも不確実で不安定な状態だ。国民国家万能の時代には地政学上の「力の空白」、あるいは内政上の権力の空白といったことが不確実性、不安定性の根源であった。ここでのガバナンスは、主要にリーダー勝負だった。

しかし国民国家が相対化され、G0といわれるようになった時代、そしてグローバル化によって国境を超えたフラット社会が出現しつつある今日では、むしろフォロワーシップの勝負となる。わが国周辺での領土をめぐる一連の事態、あるいは政権交代後の「迷走」―内外ともに「何が大切かを落ち着いて考える」ことができるフォロワーシップこそが、ますます問われている。

韓国、中国の強硬姿勢の背景構造は、いくつかの層をなしている。大きく言えば、ひとつはアメリカの相対的な地位の低下と中国の台頭に象徴される、国際的な力と富のバランスの変化と、それに伴う流動化。もうひとつは大統領選挙や共産党指導部の交代という、政治権力の移行期におけるバランスの変化と流動化。とくに中国の場合、「世界の工場」といわれてきた経済モデルからの転換が否応なく迫られるなか、これまで「経済成長」によって覆われていたさまざまな問題が顕在化、先鋭化しつつあるというきわめて難しい局面にある。このなかで、指導部交代をめぐる権力闘争も絡む複雑な構造になっている。

いつ炎上してもおかしくない、この微妙きわまりない時期に、「尖閣諸島国有化」などという燃料投下はしないでくれ―APECで胡錦濤主席が野田総理に伝えた「日本政府は事態の重大さを認識し」とは、簡単に言えばこういうことだったのだろう。しかしその翌日、尖閣諸島国有化は閣議決定された。これを受けて中国も、領土問題で勝負に出た。反日暴動のきっかけは、おそらくこういうことではないか。(唐家●(王ヘンにツクリが旋)・前国務委員は日中友好団体代表との会談の際「会談直後の国有化でメンツをつぶされた」と述べた。毎日9/28)

では、こうした中国の事情を忖度して国有化の時期をずらせばよかったのか。そうではないだろう。領土問題を「棚上げ」して関係を深める、という四十年前からの枠組みそのものが、すでに時代の変化に適応できなくなっている。良くも悪くもリーダーが仕切ることができるなら、「棚上げ」もできるだろう。しかし今や中国でさえ、政府の意向で世論をコントロールするには限界がある。日本においてはとっくに、リーダーの不在を嘆き、政治の劣化を評論するよりも、フォロワーシップの転換・成長こそが具体的課題になっている。
リーダー勝負からフォロワー勝負へ。こうしてみると、違った風景が見えてくる。
(以下「日本再生」401号へ)

●「依存と分配」から「選択と熟議」へ
 転換のためのフォロワーシップを醸成する場づくりとは●

 政権交代から三年あまり。迷走ときには逆走をともないつつ、さまざまな混乱、試行錯誤のなかから民主主義の次のステージが見えてきつつある。それは、利益を分配する民主主義から、リスクと負担を分かち合う民主主義へ転換するための実践的課題であり、別の表現をすれば「依存と分配」政治のリアルでポジティブなたたみ方と、「選択と熟議」の政治のリアルでポジティブな立ち上げ方ということだ。
 ここでも焦点はフォロワーシップである。

「…『郵政選挙』の国家的集団ヒステリーのようなブームに踊らされて『刺激物』に飛びついてむなしさが残った経験と、今の政権を見て国民が学んだ『魅惑的な公約はあてにならない』という教訓をステップにして、何が大事なことかを冷静に見る機会が、近いうちに訪れるのではないか」(松尾貴史 毎日7/28夕)。

「郵政選挙」も〇九年選挙も、依存と分配政治のたたみ方としては、リアルでもポジティブでもなかった。しかし同時に、依存と分配の政治から選択の政治への転換プロセスは、否応なく始まっている。これをチャラにしたり、後戻りさせるわけにはいかない。求められているのはフォロワーシップの転換だ。受益者市民―依存と分配のフォロワーシップのリアルでポジティブなたたみ方、主権者市民のフォロワーシップのリアルでポジティブな立ち上げ方―その実践的糸口、教訓をどこまで持って、次期総選挙を準備できるのか。

受益者市民にとって、政治は「憂さ晴らし」だ。右肩上がりのときなら「あれも、これも」が通用したし、参加とは「自分の要求を通す」ことでよかったが、それができなくなりつつある。逆に「何をあきらめるか」を合意したり、リスクと負担を分かち合うには、面倒な調整が不可避だ。いつまでもモタモタして決められない、としか見えない。「それならグレート・リセットだ」と、「バッサバッサと既得権を切り捨てるヒーロー」を探すことになる。
 しかしこれは一度目は悲劇、二度目は喜劇でも、三度目になると茶番だろう。こうした依存と分配のフォロワーシップを、どのように上手にたたんでいくか。

「歴史を振り返る限り、革命や維新でシステムが壊れて最も損をするのは貧しい民衆。これは万古不易の真理です。しかしそれに民衆が気付かない、というのもまた、普遍的な真理です。よく『おきゅうを据える』といいますが、おきゅう一本ならともかく、システムが壊れたら全身ヤケドです。なぜか有権者は損する方に投票してしまう」「教育の根本は、自分にとって何が得かを長期的視野でしっかり考えられる能力を育てること。最も正しい投票姿勢は、正しく理解された自己利益の追求です」(鹿島茂 毎日9/18「橋本現象を読む」上)

「正しく理解された自己利益の追求」の前提となるのは、生活者としての視点だろう。「税と社会保障」にしろ、「エネルギー」にしろ、あるいは自治体におけるゴミ収集の費用負担にしろ、老朽インフラの更新問題にしろ、「憂さ晴らし」では片付けられない課題、生活の利害にたった議論から始めなければならない課題は目白押しだ。(その意味で、原発をスルーした自民党総裁選は、生活者とはほど遠いものだったといえるだろう。)

あるいは、主権者市民のフォロワーシップを醸成する問題提起とはどのようなものか。それが醸成できない問題提起とはどのようなものか。
福島原発事故を受け、政府は今後のエネルギーのあり方について国民的議論を提起した。二〇三〇年における原発依存度、というところにだけ焦点が当てられた感があり、必ずしも論点が出し尽くされたとは言いがたいが、それでも委員会でのオープンな議論を経て選択肢を三つに絞り、意見聴取会、パブリックコメント、討論型世論調査という方法で国民的議論が展開された。公共政策課題についてこのような方法が展開されたこと自体、わが国でははじめてのことだろう。

だからこそ、「次」が問われる。この国民的議論を通じて、民意は「原発ゼロ」にあることが明らかになった。しかし「原発ゼロ」を柱に据えた「革新的エネルギー・環境戦略」が閣議決定を見送られたことによって、今度は「骨抜きにされた」といわれている。問題はここにある。
エネルギーにしろ、税と社会保障にしろ、問題はきわめて多面的で複雑だ。一度の国民的議論でスッキリ結論がでるようなものではない。だからこそまず「ゼロ」という方向性を確認し、そこから今度は「そのためにはどんなハードルがあるのか」「どういう条件ならどうなるか」という国民的議論を繰り返し、それを積み重ねていく以外に合意形成はできない。一度きりの国民的議論で「結論」を出したら、「あとはお任せ」ではないのだ。

政権交代に対する国民の期待は、日本が直面する難題について「どうなっており、どうなりうるか」を、政治が国民と共有することにあったはずだ。民主党がやるべきことは、「いろいろ問題もありますが、できたこともこれだけあるんです」という“言い訳”ではない。「ここまでは進めました。そこから先に行くには、こういうハードルがあり、こういう課題を解決しなければなりません」と言って、主権者市民のフォロワーシップを醸成することだ。

それができない原因は、受益者市民のフォロワーシップ(「あとはお任せ」)に立脚しているからにほかならない。受益者市民のフォロワーシップに立脚していれば、「次の選挙」のためだけに右往左往したり、足の引っ張り合いをしたりすることになる。

同じことは自民党にもいえる。総裁選で圧倒的に党員票を獲得したのは石破氏である。「自民党は変わらなければならない」と一番鮮明に訴えたのが、石破氏だ。「政権交代は国民が民主党にだまされたからだ、というだけではない」と。民主党がいかにウソつきか、という主張は構わないが、それだけでは「国民がだまされた」ということにしかならない。これでは受益者市民に支持を訴えることはできても、主権者市民のフォロワーシップを醸成することはできない。国会議員の投票が、党員票とかけ離れていた本質的な理由はここにあるといえるだろう。

受益者市民―依存と分配のフォロワーシップのリアルでポジティブなたたみ方、主権者市民のフォロワーシップのリアルでポジティブな立ち上げ方―その実践的糸口、教訓をどこまで集積して、次期総選挙を準備できるか。すでに自治の現場では受益者市民、負担者市民、経営者市民という主体分岐がリアルになりつつある(三九九号など参照)。ここから新たな政治回路を創り出そう。

郵政選挙、そして政権交代選挙、それらを教訓に三度目を茶番にせず、「何が大切かを落ち着いて考える」ための場づくりを進めよう。憂さ晴らしのドンチャン騒ぎは、早めに卒業しよう。

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10-11月のご案内
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◆講演会
「マニフェスト政治、『次』のステージへの転換を〜エネルギー・温暖化戦略を軸に」
10月3日(水)18時30分より
福山哲郎・参議院議員(官房副長官として、3.11とその後の事態に対応。また野党時代より温暖化戦略に取り組んでいる。)
アルカディア市ヶ谷 6階「伊吹」
会費 会員 1000円   一般 2000円

◆第120回 東京・戸田代表を囲む会(会員限定)
「『依存と分配』から『選択と熟議』へ 転換・移行の場づくり、関係の創り方とは」
〜総会にむけて〜同人地方議員のトークを軸に
10月18日(木)18時45分より
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
会費 同人 1000円  購読会員 2000円

◆第23回 関西政経セミナー
「マニフェスト政治、『次』のステージへの転換を」
10月20日(土)18時より
隠塚功・京都市議、上村崇・京都府議、中小路健吾・京都府議
諸富徹・京都大学教授、前田武志・参院議員、
コープイン京都 202会議室
参加費1000円

◆第七回大会 第二回総会
11月3日(土・祝)10時より18時
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
問題提起:福嶋浩彦・元我孫子市長、諸富徹・京都大学教授

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
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