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利益を分配する民主主義から、リスクと負担を分かち合う民主主義へ
受益者市民との「お約束」から、「何をあきらめるか」を問うマニフェストへ

□ご案内
◆8-9月の「囲む会」

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利益を分配する民主主義から、リスクと負担を分かち合う民主主義へ
受益者市民との「お約束」から、「何をあきらめるか」を問うマニフェストへ
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●受益者市民との「お約束」から、「何をあきらめるか」の選択を問うマニフェストへ

消費増税法案をめぐる論議、攻防は政権交代(および3.11)後の民主主義のステージを、よりクリアに示すものとなった。

 お任せ民主主義では、税は「取られる」あるいは「よこせ、よこせ」だが、本来民主主義とは、社会に必要な費用はどれだけなのか、それをどのように負担しあうのかを、(誰かに決めてもらうのではなく)自分たちで決めるということではないのか。税には権力の発動という側面もあるからこそ、説明責任と合意形成のプロセスが問われる。増税の議論の際にこそ、民主主義の真価が試される。
GDPの二倍にも及ぶ公的債務の山は、財源の議論を先送りし続けてきたお任せ民主主義(民主主義の負債構造)が、可視化されたものにほかならない。消費増税法案が与野党の多数によって成立しようとしていることは、民主主義の負債を次世代につけ回す無責任連鎖を断ち切る一歩が、ようやく踏み出されたことを意味している(前号参照)。

ここから、マニフェスト政治文化も次のステージへの移行が始まることになる。
消費増税法案をめぐって与党民主党が分裂した。その過程では「マニフェストを守れ!」、「これはマニフェスト違反ではない!」という不毛な論争が繰り広げられた。しかしこの論争自体、ナンセンスであると多くの国民は感じている。なぜなら、どんなに財源や工程が明示されていても、受益者市民との「お約束」では、民主主義の負債構造(お任せ・先送り)を脱却することはできないからだ。

多くの国民が政権交代に期待したものは、「特定の政策に過大な期待を寄せることなく」、「本当は日本がどうなっており、どうなりうるか」を考え、示し、国民と共有することだったはずだ。
政権交代から三年。人口減少・少子高齢化、G20ないしはG0時代というグローバル化など、「本当は日本がどうなっており、どうなりうるか」は否応なく見えてきた。財政やエネルギーなどの「不都合な真実」は、もはや「お任せ」ではどうにもならないことが明らかになった。だからこそ消費増税に対しても、「完全に納得はできないが、次世代にツケを残さないようにするためには、やむをえない」という世間の合意はできるようになった。

いいかえれば世間では、受益者市民(依存と分配、現状最適・部分最適)だけではなく、負担者市民(全体最適・将来最適)や経営者市民(持続可能性)が可視化されてきたということだ。世間がこうなってくると、「マニフェスト違反」との声が上がるのは、受益者市民からだということが分かる。問われているのは、受益者市民にとどまったままでのマニフェスト―当事者意識の圧倒的欠如―から脱していくための一歩一歩であり、そのための場づくりやコミュニケーションにほかならない。

「…『郵政選挙』の国家的集団ヒステリーのようなブームに踊らされて『刺激物』に飛びついてむなしさが残った経験と、今の政権を見て国民が学んだ『魅惑的な公約はあてにならない』という教訓をステップにして、何が大事なことかを冷静に見る機会が、近いうちに訪れるのではないか」(松尾貴史 毎日7/28夕)。何が大事なことかを冷静に見る、その経験や訓練はどこにどう集積されているか。そのためのリテラシーは、どのように高まっているか。

「お願いから約束へ」というマニフェスト運動は、〇三年統一地方選から始まった。自治体選挙においては、すでに実行―検証―バージョンアップというマニフェスト・サイクルが二〜三巡目にはいっており、「どうなっており、どうなりうるか」のリアリティーに基づいて、受益者市民から嫌われる決断や、適正な負担を求めるという政治文化が多様に展開される、次の新たなステージに入りつつある。自治分権の領域では、負担者市民、経営者市民は、よりいっそう能動的に可視化されつつある。受益者市民から脱していくための多種多様な「共同の場」づくりの経験、試行錯誤も集積されつつある。

 この三年間の経験、集積のうえに、次期総選挙は、受益者市民との「お約束」にとどまった数値の辻褄あわせから、「何をあきらめるか」の選択を問うところへ、マニフェスト政治文化のステージを転換させていかなければならない。既存政党からまともなマニフェストが提示されることを待つのではなく、「『何をあきらめるか』を明記しないマニフェストはニセモノだ」と、世間の側から基準を鮮明に示そうではないか。この土俵に乗るのか、乗らないのかを政党(既存政党にも新党にも)・候補者に問い、選別していく。そういう準備を始めようではないか。

 そのためにもまず、二十一世紀の重い現実を前にして、マニフェストは「何をやるか」ではなく、「何をあきらめるか」の選択を問うものでなければニセモノだということを、世間の常識にしよう。〇九年民主党マニフェストの総括は、この点につきる。
個々の政策がどこまでできたのか、という検証はあってもいいが、その前提となる財政計画にリアリティーがなければ、受益者市民との「お約束」にすぎない。「16・8兆円の財源は、無駄を省けば出てくる」という枠組みそのものが、リアリティーのないものであったことが明らかになった以上、民主党マニフェストは破綻しているというべきだろう。

 事業仕分けで分かったことは、(16・8兆円とは桁違いの)数兆どころか億単位の財源すら、削ったり、付け替えたりすることが、いかに困難な作業であるかということだ。それは単純に官僚や既得権層が抵抗するから、というだけではない。明らかに目的に沿わないものや二重行政、天下り先といったものを削るのは、さほど大変なことではない。それさえきちんとできていない、というところは徹底して追及すべきだろう。

しかし多くの事業は、何らかの必要性があってのものだ(その必要性をめぐる議論は大いにありうるが)。精密機械のように複雑な現在のシステムでは、ひとつ部品を外せば多くの人の生活に影響が及ぶ。数億の財源を付け替えるだけでも、時間をかけて進めざるをえない。あるいは「コンクリートから人へ」には多くの人が賛成でも、自分の地域で計画中の道路が凍結されるとなれば、絶対反対ということになる。どこは止めて、どこは進めるのか。その合意形成は並大抵のことではない。

だからこそ選挙の際のマニフェストは、「何をやるか」ではなく、「何をあきらめるか」の選択を問うものでなければならない。「あきらめる」基準や方向性、それによる影響、さらには政策思想の軸、そういったものを示すことによってこそ、選択が可能になる。すでにローカルマニフェストは、その領域に歩を進めつつある。この土俵に乗るのかどうか、それを政党・候補者に問い、選別していこう。

この問題の格好の訓練の場となりうるもののひとつが、老朽化した施設の更新計画をめぐる議論ではないか。高度成長期に建設された各地のハコモノは、今や老朽化による物理的な崩壊と財源不足による財政的な崩壊という、ふたつの危機に直面している。人口減・少子高齢化がすでに進行しているなかで、既存の施設をすべて更新することは不可能である。新たな施設に機能を集約するにしても、「何を(どこを)あきらめるか」が前提にならなければ、前へは進めない。
その計画を、行政が作るのか(行政が作った計画に市民は賛否を表明するだけなのか)、それとも「何をあきらめるのか」を市民が参加して合意形成するのか。市民が合意形成するためには、あきらめる基準や方向性、そして政策思想の軸(どういうまちをつくるのか)といったことを、討議を通じて合意していかなければならない。

「高度成長の時代には税収もどんどん増えていきましたから、どんな約束をしても、数年すればほとんど実現できたと思います。しかし今はそうではありません。ある意味、はじめて国民が主権者として自分たち自身で考え、判断すべきときにきているのではないでしょうか」(菊地豊・伊豆市長 5面インタビュー)。
こうした経験を積むなかから、「何をあきらめるか」の選択を問うマニフェストのあり方、その土俵の作り方が実践的に見えてくるはずだ。

「何をあきらめるか」の議論の場は、負担者市民(全体最適・将来最適)や経営者市民(持続可能性・必要なものでも借金してまでやりますか、と問う)を登場させる場であると同時に、受益者市民のなかからも、何が大事なことかを冷静に見ようという機運を生み、あるいは「そこまでやるなら仕方ない」というボトムラインを形成する場ともなるだろう。増税やエネルギーなどリスクと負担を分配する時代にはいった今、「何をあきらめるのか」の意思決定に市民・国民が当事者として参加しなければ、納得感のある合意形成はできない。
受益者市民との「お約束」から、「何をあきらめるか」の選択を問うマニフェストへ。民主主義のステージをさらに前へ進めよう。

●民主主義を民主化しよう 疎外・排除ではなく、よりいっそうの参加・納得へ
(以下、「日本再生」399号へ続く)

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8-9月の「囲む会」のご案内
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◆第117回 東京・戸田代表を囲む会(会員限定)
「『コンクリートから人へ』に、民主党政権はどう取り組んできたか」
8月20日(火)18時45分より
ゲストスピーカー 前田武志・参院議員、前国土交通大臣
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
会費 同人 1000円  購読会員 2000円

◆第118回 東京・戸田代表を囲む会(会員限定)
「国に先駆けてきた野田市の取り組み〜公契約条例、自然保護、参加型福祉など」
9月4日(火)18時45分より
ゲストスピーカー 根本崇・野田市長
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
会費 同人 1000円  購読会員 2000円

◆第119回 東京・戸田代表を囲む会(会員限定)
「次世代にこれ以上、ツケを回さないために」(仮題)
9月24日(月)18時45分より
ゲストスピーカー 五十嵐文彦・衆院議員、財務副大臣
「がんばろう、日本!」国民協議会事務所(市ヶ谷)
会費 同人 1000円  購読会員 2000円

*10月は東京、京都で、「マニフェスト政治文化を次のステージへ転換する」ことに向けた講演会を、それぞれ行う予定です。

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石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL 03-5215-1330 FAX 03-5215-1333