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▼ Index 

永田町には困ったもんだが、民主主義のイノベーション―担い手の変更のため
に知恵を絞ろう。
―ここが主権者運動の肚のすえどころ―

□尖閣問題―露呈した政治のお粗末さ 与党は権力行使の総括をいかに語るのか
(以下は「日本再生」377号に掲載)
□ジリ貧をドカ貧に転ずる愚を繰り返すな 
永田町を熟考型選択の土俵に乗せるための知恵を
□談合的民主主義から競争的民主主義への軌道の変更 さらに担い手の変更へ

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尖閣問題―露呈した政治のお粗末さ 
与党は権力行使の総括をいかに語るのか


 尖閣沖での中国漁船衝突事件の処理は、日本政治のお粗末さを露呈した。現象面から言えば一番の問題は、一地方検事に外交判断を委ねた形になっていることだ。「検察の判断」で押し通すということは、国会では閣僚と国会議員という政治家同士のやりとりではなく、検察と議員というやりとり(当然、埒のあかないすれ違い)になることを意味する。これが政治判断が問われる外交案件であることは明らかだ。その政治判断をすべき閣僚、説明責任を負うべき閣僚が、検察の後ろに隠れることが政治主導ではあるまい。

 最悪、「処分保留・釈放」というカードしかない場合でも、官邸と協議のうえ法務大臣の政治判断で行うというのが筋だ。しからば、この政治判断の是非、材料が国会で議論されることになる。それは四人の「人質」であるかもしれないし、経済的な影響かもしれない。あるいは、エスカレートする中国の強硬姿勢そのものかもしれない。すなわちここから日中関係の現状や脆弱性の認識、東シナ海や南シナ海の情勢についての認識、日米安保の課題などが明らかになるはずだ。あるいは日中漁業協定の運用の実際はどうなっているのか。これをわが国はどうしたいのか、すべきなのかなど。こうしたことこそ、国会で政治家同士の議論を戦わせるべき論点ではないのか。

これらをテーブルに載せた上で、それを永田町内の足の引っ張りあいの材料に使うのか、それとも「日本が本当はどうなっており、どうなりうるのか」を議論し、党派間で競い合うという次のステージへの糸口を開けるか。それがここから問われることになる。
責任と判断を検察に委ねてしまったのでは、そもそもこうした議論の糸口を見出すことはできず、国会論議は旧態依然とした埒のあかないすれ違いに終始することになってしまう。

 第二は、日本外交の現実である。強硬姿勢をエスカレートさせる中国は、外交(閣僚級の交流停止、ガス田協議の停止など)、経済(旅行客のキャンセル、検疫手続き、レアアースの禁輸?)、文化(SMAP公演の延期、上海万博行事の中止など)と次々に対日圧力カードを切ってきた。それに対して日本が切れるカードは、ほとんどない。日米外相会談で米国務長官から「尖閣は日米安保の範囲」との発言を引き出したのが、唯一といっていい。

 つまり、「世界第二の経済大国」の地位を中国に譲った日本には、二国間関係の枠組みで中国に対して切れるカードはほとんどない、という現実に立脚した外交が何一つ準備できていない、そのお粗末さが露呈した。中国抜きに日本経済の今後はないのは事実だが、リスクヘッジなき中国依存は、韓国や東南アジアをはじめとしたFTA・EPAの締結を先延ばししてきたツケでもある。

 今回の強硬姿勢によって、中国の台頭に対する国際社会の不安が増したことは間違いない。この不安定な中国に軍事力を使わずに対応するためには、日米同盟と並んで、「力ずくでの現状変更は認めない」という多国間協調をこの地域に築かなければならない。それは「世界第二の経済大国」幻想―米中に伍して、という発想―からは、とうてい出てこない。ここでも、「日本が本当はどうなっており、どうなりうるのか」という議論が置き去りにされてきたツケが噴出している。

 すなわち今回の顛末のお粗末さは、第一義的には民主党政権の責任であるが、構造的には「失われた二十年」のツケであり、自民党政権にもその責任がある。現政府の責任は当然問われるべきであるが、その問い方は旧来型の追及や非難の応酬ではなく、どこで問題設定を共有し、どこで党派間が競い合うのか、という責任の問い方に転換しなければならない。政権交代を前提としない万年与党と万年野党の「言い合い」「非難合戦」のレベルから、政権交代を前提とした党派間闘争へ、与野党ともに軌道を転換すべきなのだ。「ねじれ」国会とは、そのための舞台にほかならない。

政権交代から一年。いいかげん民主党政権も「野党グセ」を卒業して、権力行使をめぐる試行錯誤の教訓を語れなければならない。最近の中国の動向からすれば、こうした事態の発生は想定しえた。中国と一戦を構えるのではない以上、原則をいかに貫くか、その一方で中国に対してどのように外交的な落としどころを探るのか、という備えなしには土壇場であわてることになる。普天間の迷走、消費税発言の迷走の教訓は、どこまであるのか。

総理のASEM出席のための国会日程調整に野党も同意したのは、国会運営上では前進だが、ASEMで何を獲得目標にするのか、どのような国際世論形成を目指すのか、そのための外交工作をどうするのか。そうしたことを十分に検討し準備しなければ、首脳外交足りえない。この一年間がただの迷走や逆走―時間の浪費だったのか、それとも政権運営のための試行錯誤の集積だったのか、そろそろそれを国民に示すべきときである。

そして野党自民党にも、日本でははじめてとなる「政権運営の経験をもつ野党」としての追及のしかた、政権交代を前提にした政府の責任の問い方への脱皮が求められる。
この軌道の変更をいかに促していくか。ここが主権者運動の肚のすえどころである。

(「日本再生」377号 10/1発刊 へ続く)
******************************* 石津美知子 「がんばろう、日本!」国民協議会 http://www.ganbarou-nippon.ne.jp TEL 03-5215-1330 FAX 03-5215-1333