電子瓦版(転送はご自由にどうぞ)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━ 
メルマガ♯がんばろう、日本!         104(07.10.29)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
==================================
▼index

□ 政策選択選挙へと絞り込むために、逆転国会はこう使いこなせ

□お知らせ
==================================
●政策選択選挙へと絞り込むために、逆転国会はこう使いこなせ●

 逆転国会の論戦がようやく本格化してきた。両院の「ねじれ」関係と政党政治をどう運営していくのか、これはまったくの「未体験ゾーン」であるが、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、霞ヶ関が根回しし尽くした法案を与党審査という閉ざされた空間の議論で承認さえすれば、その後の閣議も国会もスルーする―閣議は「お習字教室」に、国会は「朗読」と数の確認の儀式の場と化す、という官僚内閣制の運営が、いよいよ立ち往生しつつあるということだ。

議院内閣制と官僚内閣制は何が決定的に違うのか。(議院内閣制では)「(政治権力が作用する)矢印が有権者からスタートして、国会議員→総理大臣→大臣→役人というふうに一直線につながっている。だから民主主義なのです。ところが官僚内閣制で何が問題かというと、大臣たちが何々省の代表だといって、官僚の振り付け通りにすると、そこで矢印が逆転してしまう。総理大臣まではずっと有権者から来ているのに、大臣が役人の代表だというと、そこで役人からの矢印が出てしまう。そこでぶつかり合うわけです」(飯尾潤・政策研究大学院大学教授)

官僚支配から脱した立法府の姿―議員同士の論戦の緊張感をどこまで示すことができるか。自民党は衆議院の段階から、参議院での審議を意識しなければならないから、民主党相手に議論する。民主党も参議院で通した法案が衆議院で揉まれることを想定して、衆議院でも論戦をするので、自民党に対する攻め方も変わってくる。

与野党が政策論戦でガチンコ勝負をすることで、はじめてその先に「妥協の知恵」も見えてくるし、政党政治のルールの糸口も見えてくる。両院の議決が異なる場合(与野党対立の場合)に再可決してでも通すべき課題は何か、両院協議会で妥協できる課題は何か、そして解散・総選挙で国民に信を問うべき課題は何か。こうした仕分けは、ガチンコ勝負をしてこそ「その先」に見えてくるのであって、逆ではない。数合わせの大連立や事前協議でガチンコを回避しようという浅知恵は、政党政治の自殺行為にほかならない。両院の議決が異なるところで、どういう協議をするのか。そこで政党政治の知恵、立法府の知恵を見せてみろ、そうして国民に信を問うべき課題を絞り込んで見せろ、というのが有権者の要求だ。

 例えばテロ特措新法。「給油活動が中断すれば国際貢献ができなくなる」と与党は言うが、それほど重大な国益に関わる問題であるなら、参院選後早々に、再可決までを読み込んだ日程で国会を召集することはできた。それをせずにズルズルと期限切れを迎えるに至ったのは与党の責任であって、「民主党のせいで国際貢献ができなくなった」という泥試合に持ち込むべきではない。
 本来であれば民主党にとってもこれは政権選択を問うべき課題ではないはずだから、参院で否決・衆院で再可決という形で、「与野党対立ではあるが政権選択を問う課題ではない」という妥協が可能であったはずだ。ところが「国会承認(事前も事後も)なしの自衛隊海外派遣」ということになると、民主党も「再可決を前提にすみやかに参院で否決する」というわけにはいかなくなる。シビリアンコントロールにかかわる悪しき前例を残すという点からも、大いに問題になるのは当然だ。

「与野党対立ではあるが政権選択を問う課題ではない」という妥協が可能になるためには、ここまでならぎりぎりの対決ができる、というところを見極めなければならない。「それによって、「これなら国民の納得を得られる」というところが見え、その結果衆院での再可決に持ち込める、ということだ。再可決に持ち込むまでの覚悟があるか。「国会承認なし」はおそらく、両院のねじれを回避するための浅知恵だろう。これでは議院内閣制の政党政治のルール作りの足を引っ張るだけだ。
 加えて、給油量の誤りを四年間隠蔽し続けてきたという、シビリアンコントロールの根幹に関わる問題が浮上した。これは与野党対立の問題ではなく、議院内閣制の議会権能をまともに機能させるという問題であり、例えば国政調査権を発動して、与野党が院として官僚機構を厳密にチェックすべき問題だろう。給油活動が当面、日本の国際貢献として価値のあるものであったしても、シビリアンコントロールがまるで機能していないことを脇に置いて、とはいかない。これも、官僚内閣制のままの政権運営や議会運営が破綻しているということだ。それに替わる政党政治の知恵がどこまで絞れるか。

 あるいは政治資金規正法や薬害肝炎の救済など、与野党合意によってすすめるべき課題で、どのように妥協の知恵を絞れるか。とくに薬害肝炎患者のデータを隠匿し続けていた問題は、薬害エイズとまったく同じことが繰り返され続けてきたという点からも、単なる官僚の不祥事といった話ではなく、官僚内閣制にケジメをつけることができるかが鍵になるだろう。

 参議院では、民主党提案の年金保険料流用禁止法案が審議される。社保庁はシステム経費などとして保険料から〇七年度には約二千億円を転用、〇八年度も約二千百億円を予定している。与党には当初、民主党案丸呑みという手もあったが、「賛成しても敵を利するだけ。民主党案実現には別途、二千億円の税財源を確保しなければならない。それだけの財源があるなら肝炎対策など、与党の得点になるものに使うべきだ」と、反対の声が主流になっているという。
 財源論争になれば当然、民主党は特別会計とその無駄遣いや天下りの構造を質すだろう。「事務費以外には使わない」と言っても、年金システムの随意契約がはたして適正な価格なのかなど、チェックすべきところはいくつもあるはずだ。自民党も、いつまでも役所の振り付けを前提に財源を論じるわけにもいかなくなる。民主党も、個々の追及から政策論争、制度設計論争に持ち込み、財源については「官僚機構をもっていないから細かいツジツマ合わせはできないが、大きな方向性はこうだ。政権をとればこうできる」と議論すればよい。財源論争が、財務省の手のひらの上での数字合わせから政治家同士の政策論争へ踏み出すことは、政策選択選挙にむけた準備運動、練習問題になるだろう。

またこの論争を徹底的にやれば、安倍内閣で強行採決された「年金機構」(社会保険庁を非公務員の公法人とする)や「百年安心」といったこの間の年金改革―官僚内閣制の枠内の「改革」―についても、これでいいのかという議論になるはずだ。年金制度改革は、官僚内閣制の枠内での議論から、政治家同士の議論にしなければならない課題だ。つまり、政党の民意集約機能が試されるという、政権選択選挙の本題にはいっていくことになる。

 経済財政諮問会議の民間議員は、公的年金改革について、「保険料方式を維持」する場合、「全額税方式に移行」する場合それぞれでどのような改革が必要か、財源として消費税に換算して何パーセントが必要かを示し、民主党案(全額税方式・消費税は上げず行革で財源を捻出)との比較ができるようにした(10/24日経)。政府の一部が複数の選択肢を提示して国民の関心および与野党間の政策論争を喚起する、というのも逆転国会のひとつの成果といえるだろう。だからこそ今国会を、官僚内閣制の枠内から脱した政治家同士の政策論争への糸口として、与野党ともに使いこなすべきだ。
(以下、「日本再生」342号へ続く)


□◆□ お知らせ □◆□

《選挙》
我孫子市議選  11/11告示 11/18投票  久野晋作同人が二期目に挑戦!

《第79回定例講演会》
「二期目を迎えた胡錦濤政権の課題」
11月15日(木)18時30分より
アルカディア市ヶ谷(私学会館)5階「穂高」
*日本をよく知る中国人研究者によるパネルディスカッション
参加費 会員1000円  一般2000円

《07年度望年会》
12月6日(木)午後6時30分より
アルカディア市ヶ谷(私学会館)3階「富士」
会費 6000円

《第五回大会》
08年1月6日(日)午後1時より
アルカディア市ヶ谷(私学会館)
○記念シンポジウム(第一部・第二部)
○懇親会 (シンポジウム終了後)

◆望年会、大会とも、会員以外の方も参加できます。
ぜひお誘いあわせてご参加を!

《機関紙「日本再生」 342号 11/1》
「構造改革の継続と国民本位の政治の安定を実現するためには、
機能停止しつつある官僚内閣制に替わって議院内閣制を作動させること
―政権選択選挙の課題」

*******************************
石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL 03-5215-1330 FAX 03-5215-1333