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「がんばろう、日本!」国民協議会
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▼index
□ 行動的な蓄積が見えてきたローカルマニフェスト運動と
賢明な政策判断を下そうとする有権者市場
――既存政党よ、「ずれまくり」でいいのか?!

【蓄積するマニフェストとチャラになるマニフェスト
マニフェスト型選挙を後退させるな!】
【官治分権から自治分権へ 
有権者の意思を明確にする「強い一票」を】
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【蓄積するマニフェストとチャラになるマニフェスト
マニフェスト型選挙を後退させるな!】

 元タレント候補が既存政党の推薦を受けた官僚出身候補に圧勝した宮崎県知事選は、既存政党と有権者との乖離をものの見事にさらけ出した。タレント候補の知名度? 無党派の反乱? 保守分裂が敗因? 地方選と国政選挙は関係ない? こうした類の「分析」では、有権者の声をいっさいキャッチできていない、かすりもしていないという既存政党の現状(機能停止)から「ノミのひと跳ね」もしない。

 「変えたい、変わろう、変えよう」という有権者が求めているのは、“ないものねだり”ではない。グローバル化した市場経済が生活で見えているからこそ、“ないものねだり”ではなく知恵をしぼって“あるもの探し”をし、どうやって自力で稼ぐかを考える。その視線から一票の選択をしようとしている。

グローバル市場への対応はまず、東アジアに生産ネットワークを築くことで新たな国際競争力と新たな市場を獲得するところに蓄積された。並行して、ジャパン・クールと呼ばれるようなソフトパワーが形成されてきた。(政府が「正しい日本食」を認定しよう、などというセンスでは、こうしたソフトパワーを外交資産として活用できないのも当然だ。)
こうした市場経済の変化に生活で対応し、“あるもの探し”から自力で稼ごうというところに、「賢明な政策判断を下そうとする有権者市場」が準備されつつある。北海道には雪を目当てに台湾から観光客が訪れ、ニセコのパウダースノーにはオーストラリアからスキー客がやって来る。徳島の上勝町では、料亭などで使われるツマの圧倒的シェアを誇るおばあさんたちの「葉っぱビジネス」が、年間三億円に迫ろうとしている。市場経済が生活で共有され、蓄積される度合いに応じて、「政策選択」「賢明な政策判断」という意味が主体的に分かる有権者意識が蓄積されていく。

 宮崎県知事選でこうした有権者には鮮明に見えていたもの、反対に「無党派」とか「政治不信」とかいう人たちにはまるで見えていなかったもの、それはマニフェストである。東国原氏の勝因は三人の候補者のうち唯一、マニフェストを掲げたことであるといっても過言ではないだろう。官僚でもない、行政経験もない新人のマニフェストは、いわゆる「数値目標、財源、手順」などといった点で、詰め切れていないのは当然だ。しかし「宮崎はこのままでよかっちゃろかい」という訴えからは、「変えたい、変わろう、変えよう」という思いが、どの候補よりも真剣に伝わった。そして「宮崎がんばいよ宣言」「宮崎どげんかせんないかんが宣言」「宮崎はかわらんといかんが宣言」という「具体策」の提案からは、「お任せ」ではなく「県民総力戦」で意識改革をし、知恵をしぼって“あるもの探し”から未来をひらこうというメッセージが伝わってくる。
(http://sonomanmakai.net/manifest/)

(このマニフェストをどのように現実の行政に落とし込んでいくか。これが次の課題になる。県庁が県民の役に立つ公共物として再生できるか、県議会が県民の民意を反映する場として再生できるか。これが選挙で選ばれた知事マニフェストへの対応を通じて試される。それこそが県政への信頼回復の唯一最大の道である。)

 こういうマニフェストを提示して、有権者の「変えたい、変わろう、変えよう」を受け止め、「賢明な政策判断」のための選択肢を示す―これがまったくできていないこと、これこそ既存政党の敗因のすべてである。市場経済を生活で共有している有権者と乖離しきってしまえば、争点設定もずれまくりになるし、選択肢も示せないのは当然だ。

宮崎県知事選と同時に行われた山梨県知事選では、自民党は推薦候補すら決められなかった。宮崎も山梨も保守系の根深い対立にくわえて「郵政選挙」の後遺症を抱え、身内の論理にどっぷり浸かりきっている。これでは、地域に根を張っているからこそ時代や市場の変化に生活で対応できる人々(いわゆる保守系無所属といわれる人々)が離反するのは当然だろう。自民党支持層=保守層が無党派化している、という認識では、こうした風景は視野に入らない。

民主党はいずれの選挙でも独自候補を立てることができなかった。保守系の強い地域であえて挑戦して「県政野党」になりたくないということか。これでは有権者の「変えたい」には、かすりもしない。これでどうやって参院選一人区で勝負するのか。民主党が野党第一党としての役割を果たしていないという人は、七割に達している(朝日新聞1/23)。
 争点設定も「ずれまくり」となる。安倍・自民党は憲法改正を、小沢・民主党は格差是正を選挙の争点とするようであるが、「憲法改正か、格差是正か」が選択肢たりえるのか?これでは、賢明な政策判断を下そうとする有権者に訴えるべきものは持てない。政党が政策選択の提示たりえるマニフェストを出せなければ、マニフェスト選挙は後戻りさせられることになる。

小泉改革を継承し「成長」「上げ潮」路線を標榜するなら、規制緩和や行政改革のいっそうの推進など、成長戦略の骨格にかかわる政策で争点設定するのが安倍政権の本筋であろう。(小泉マニフェストは郵政造反組の復党でチャラになったのか?)そこをあいまいにすれば、根強い改革阻止圧力にズルズルと押し戻されることになる(なりつつある)。

民主党は、安倍政権のこうした改革からの後戻りをこそ、批判すべきである。「憲法で、格差問題から争点をそらそうとしている」ということでは、昨年の郵政解散の二の舞だ。憲法を逃げるかどうか、ではない。日本型社会主義をバッチリ残したままで、成長は可能なのか―このことを問わずして「成長か、格差是正か」では、「改革疲れ」に集票の組織戦の焦点を合わせることにしかならない。(〇四年参院選で自民党を上回り、〇五年総選挙でも「郵政」に代わる争点として設定した)国民年金を含む年金一元化のマニフェスト(改革競争のマニフェスト)はどう蓄積されてきたのか。それとも政権をとれなかったマニフェストはチャラなのか。

徒手空拳の素人が唯一マニフェストを掲げて、中央官僚出身・政党推薦の有力候補二人に圧勝した宮崎県知事選挙(投票率は5ポイントアップ)は、マニフェスト型選挙を誰がどこで蓄積してきたのか、誰がどこでチャラにしているのかを象徴する光景でもある。

【以下「日本再生」333号(2/1発行)へ続く】

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石津美知子
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