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国民主権の共有地―守るべきものがあるからこそ、
「何を変えるか」が具体的になる
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▼index
□国民主権の共有地―守るべきものがあるからこそ、
「何を変えるか」が具体的になる

□お知らせ
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□ 国民主権の共有地―守るべきものがあるからこそ、
「何を変えるか」が具体的になる

 安倍政権が発足して二ヶ月が経過した。マスコミ各社の世論調査からは、数字のば
らつきはあるものの、内閣支持率の構造的・傾向的な変化が伺える。ひとつは、「小
泉人気」を支えてきた若者世代(20〜30代)と「無党派」層で支持率が急落している
こと。また小泉政権時に他世代に比べて低かった支持率がいったんは回復した40代、
50代でもここにきて支持率が急落、全体としての支持率も10数ポイント急落してい
る。(朝日11/25)

 有権者は小泉政治に比べて「おもしろくない政治」に飽きたのか? 国民は劇場型
政治が恋しいのか?  
 ポスト小泉の課題を、「政権選択選挙の定着と深化―観客民主主義からの脱却」に
置く場合と、「小泉政治の行き過ぎ、やり過ぎを是正する」(「衆愚政治批判」「格
差反対」など)ところに置く場合とでは、見えてくる光景は大きく違ってくる。「復
党問題」は、その分りやすい例となった。

 郵政造反組の復党が自民党の「お家の事情」で収まらないのは、極めて一面的・表
面的ではあったが「選択肢を示して国民に問う」という政権選択選挙を行った結果
を、(身内の事情で)変更するという点にある。さらに悪いのは、「来年の参院選の
ために造反組の力が必要だ。憲法改正などに本格的に取り組むためにも、ここで政権
を安定させたい」と言えばまだしも、「政治には情も必要だ」というわけの分らない
話になったので、「誓約書」などというみっともないことになった。(「理を通すた
めには情も必要」ということと、「情を持ち出して理をチャラにする」こととは全く
違う。)

 「あの選挙は何だったのか」―これを評論屋が言う場合と「一票の重み」を例えそ
の瞬間だけでも実感した有権者が言う場合とでは、意味が全く違ってくる。郵政選挙
はそういう有権者を構造的に作り出した。議員の「造反」は誓約書一枚で「なかった
こと」にできるかもしれないが、これは「なかったこと」にはできない話だ。

 中選挙区時代と違って、同じ党の候補者が全く反対のことを言う選挙はおかしい、
ということを有権者は常識にした。すなわち、政党とはマニフェストによって紀律化
された集団であるはずだ、ということだ。それゆえに、政権選択選挙における一票の
重みを、瞬間的にであっても実感した有権者は、かつてのような「政治不信」「政党
不信」には戻らない。求めているのは、マニフェストによって紀律化されることで蓄
積される「政党の信用」である。こうした有権者とどのようにコミュニケーションを
取り続けていけるのか。これが安倍・自民にも小沢・民主にも問われている。ここで
の組織戦が〇七年統一地方選、参院選そして次期政権選択選挙の行方を決することに
なる。

 安倍政権にとっては、来年度予算がまずその第一関門になるだろう。好調な企業業
績のおかげで税収増は七兆円ともいわれ、与党内では早くも参院選をからめた歳出要
求が激しくなっている。小泉改革の下で封印されてきた「バラマキ」が(再チャレン
ジやイノベーションなどの名分で)復活するようなことがあれば、それこそ「あの選
挙は何だったのか?」ということになる。あるいは、小泉政権がやり残した道路特定
財源の一般財源化を明確にできるのか。
「小泉政権は、おそらく戦後史上初めて、市場経済システムそのものを政治が目指す
べき価値であると(暗黙に)宣言した政権だった」(小林慶一郎「論座」10月号)と
いう地点から後退しないというところで「官邸主導」が発揮されるか。ここで政策に
よる紀律化が図れるか。それがあいまいなまま参院選対策で予算をバラまいたとし
て、どういうところから集票することになるのか。

未だに交付金にぶら下がろうという地方自治体首長・議員の支持基盤に、活力ある有
権者がいるだろうか? 補助金に頼ろうとする新旧業界団体のところに、生活で市場
経済が分っている有権者がいるだろうか? 公共事業費は減りつづけ、交付金や補助
金も次々とカットされるなか、人口の75パーセントが住んでいる地方においては、そ
れらに依存せずに自立・自治をやっていこうという生活実態が、「層」として形成さ
れようとしている。こうした活力ある・意欲ある有権者をとらえることができずに、
都市部において政策選択が分る有権者にアプローチできるだろうか。
それができなければ、東京の税収は(大企業の本社が納めたもので)自分たちが納め
たものではないという意味さえ分らずに、「バラマキ批判」で分ったフリをするとい
う都市部の根なし草をターゲットに、瞬間芸のパフォーマンスを繰り返すしかなくな
るだろう。
どういう有権者、どういう社会層、どういう生活実態を組織対象としているのかとい
うことがなくて、政策による紀律化ということはありえない。これは民主党も同様で
ある。

この間の補欠選挙で見て取れるのは、「民主党の現状は現状として、日本の民主主義
のために政権交代可能な構造が必要だから民主党に一票を投じる」という民意の存在
だ。民主党に対する「バラバラ批判」もその本質は、五十五年体制の右・左といった
ものではなく、議員・候補者の活動や自治体選挙における対応が、どこまで政策で紀
律化されたものになっているのかという点にある。
 これに「政党不信」の側から対応すれば「所詮、自民党も民主党もバラバラ。政党
ではなく個人を見て」という話になってしまう。しかしすでに有権者のほうがそれに
巻き込まれずに「政権選択なのだから、私たちは政党のマニフェストと党首を選ぶん
ですよ」「その観点からの品質管理を聞いているんです」と詰められてしまうことに
なる。

 あるいは沖縄県知事選の結果は、五十五年体制的革新・野党共闘という構造が、基
地問題を抱える沖縄でも、有権者のなかでは清算されたことを示した。言い換えれば
「基地問題か経済振興か」という選択肢で有権者は判断したのではない、ということ
だ。基地を押し付ける代わりに「公共」投資をバラまくという旧来型の経済振興では
なく、観光産業で食っている(観光業の復調で沖縄の景気は良くなっている)という
現実の市場経済(東アジアを視野に入れた市場)が生活で見えている層が流れを変え
たはずだ。

「政治とは生活である」ということには誰も反対しない。問題は、それはどういう生
活なのかである。われわれの生活はグローバル市場を前提としている(せざるをえな
い)。富の源泉、蓄積、分配のシステムが、国民国家を前提とした時代とは様変わり
したなかでの生活なのである。FTA(自由貿易)のなかでさらに発展できる農林水
産業とはなにか。高付加価値のモノづくり―知価社会の時代を担う人づくりとはなに
か。住民自治を競い合う自治体間競争とはなにかetcといった視点から、言い換えれ
ばグローバル市場を前提とした生活のありようから「政治とは生活である」という論
戦をどのように展開できるのかが問われている。逆に、市場経済に政治を対置する要
素に目をつぶったまま「政治とは生活である」と言えば、どういう組織戦を展開する
ことになるか(どういう集票構造になるか)。

〇七年統一地方選、参院選では、安倍・自民党も小沢・民主党もここでマニフェスト
による紀律化がどこまでできるのか、が問われている。

(以下「日本再生」331号へ続く)

□◆□お知らせ□◆□

【「日本再生」331号(12/1発刊)】
□囲む会「北朝鮮核問題」
ゲストスピーカー 康仁徳・元韓国統一部長官
□一灯照隅
中小路健吾 京都府会議員
□天津・生活インフラ産業視察/交流記
□インタビュー
「民主党の教育改革」
鈴木寛 参議院議員
「戦後日本の住宅政策」
大本圭野 東京経済大学教授
「北朝鮮核問題と中国」
呉寄南・上海国際問題研究所日本室長

【06年望年会】
06年を「忘」れず教訓として、07年を展「望」する!
07年統一地方選、参議院選に向け、大いに交歓しましょう!
12月7日(木)18時30分より
アルカディア市ヶ谷(私学会館)5階「穂高」
会費 5000円


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石津美知子 ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp
 「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL:03-5215-1330 FAX:03-5215-1333