電子瓦版(転送はご自由にどうぞ)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━ 
メルマガ♯がんばろう、日本!         48(03.3.10)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
しばらくお休みしてしまい、申し訳ありません(さぼっていたわけではありませ
ん)。
その分、今回は長くなってしまいましたが、お付き合いください。

▼index
イラク・北朝鮮危機に、主権者として正面から向き合おう
□ イラク攻撃のカウントダウン
□ 空をおおう民主帝国の翼
□ 失政15年の敗北を抱きしめて
□ 「北朝鮮危機でアメリカに守ってもらう以上、イラク問題でのアメリカ支持は当
然だ」という思考停止を超えて
□ 北朝鮮危機があるからこそ、日本は東アジア戦略を明確に持って、日米同盟を使
いこなさなければならない

 ■お知らせ
======================================
 イラク・北朝鮮危機に、主権者として正面から向き合おう
======================================
□ イラク攻撃のカウントダウン

イラク情勢が緊迫している。国連安保理への査察報告を受けて、アメリカ、イギリ
ス、スペインは「3月17日」を期限とするイラクへの「最後通告」となる決議の採択
を求めている。査察継続を求めるフランス、ロシア、ドイツとの間の溝は埋まりそう
にない。決議が採択されれば、国連の名による攻撃が、否決されれば米英による攻撃
が開始されることになる。

 イラク問題への対応はわが国にはじめて、国連決議と日米同盟との関連をどうする
のかという課題を突きつけている。「国連決議も大事、日米安保も大事」という意味
のない「逃げ口上」は通用しない。

 ここにきて小泉総理は「世論に従って政治を行うと間違うこともある」と、「最後
通告支持」→「アメリカの単独攻撃支持」へと舵を切り出した。世論はもちろん、圧
倒的に査察継続を求めている。誰だって戦争を好ましいとは思わない。
 しかし小泉サンはどれだけ「世論」を説得する努力をしてきたのか。イギリスのブ
レア首相は国内の圧倒的な反戦世論に対して、至るところで説明責任を果たしてい
る。「仮定の質問には答えられない」と逃げまくっている外務大臣や小泉総理に「世
論」を説得する努力があるとは思えない。
 説明責任をいっさい果たさない・果たそうとしない政府が、国の命運を左右するよ
うな決定を行おうとしているところに、わが国の最大の危機がある。どこまで逃げる
つもりなのか。その逃げ道を断つまでに、国民主権が成熟しなければならない。


□ 空をおおう民主帝国の翼

アメリカは「民主帝国」である。国連決議があろうとなかろうと、やるときはやる。
拒否しようとどうしようと、それだけの他を寄せ付けない圧倒的なパワーなのだ。そ
して同時にこの超大国は、そのパワーに似つかわしくないくらい、「グローバル化の
影」に怯えている。
この「帝国」とどう付き合うのか。これはどんな国も苦労せざるをえないが、政治の
結論はきわめて単純だ。「愚劣な選択」なのか「賢明な選択」なのか。政治の世界―
国益をかけた世界での判断は、これだけだ。その意味では、イギリスもフランスも、
ドイツもロシアも中国も、全力で「愚劣な選択」を避けて「賢明な選択」をしようと
している。
「アメリカへの態度表明」(アメリカの単独行動を支持するのか・反対するのか)や
「反米」ということでは、「付き合う」どころか存在感さえ失う。「日本にはアメリ
カ批判の“贅沢”はない」などというのは、自尊の精神さえ失った敗北主義である。
空をおおう民主帝国の翼の下で、いかに自尊を確保するのか―「自由・民主主義、公
正で開かれた市場経済」という価値観で説明できる自尊を。
この現実の戦いで苦闘している者には、反戦運動に対しても語るべき言葉があるが、
この戦いの意味さえ分からない者は、反戦運動を「イラクを利する“利敵行為”」
と、とんでもないことを口走る。(ブッシュでさえそんなことは言っていない)
自尊の精神さえ失った「アメリカ支持」は空しい。

□ 失政15年の敗北を抱きしめて

アメリカの単独行動に強硬に反対するフランスが「それでも彼らは同盟国だ」と見ら
れる一方で、「何があってもアメリカ支持。それ以外の選択肢はない」とする日本
が、「北朝鮮に対抗して核武装しかねない、何を考えているか分からない国」と見ら
れるのはなぜか。
一言で言えば、日本の「適正な位置づけ」がない、戦いとってこなかったからであ
る。(288号【4/1発行】掲載予定の添谷・慶応大学教授の講演を参照されたい) 
冷戦後、価値観同盟、安全保障共同体へと深化してきたNATOの一員である英、
仏、独とアメリカとの関係とは違い、わが国は日米同盟の強化を「委託された協力」
としてしか行ってこなかった。
「委託された協力」とは「ショウ ザ フラッグ」と言われてインド洋に行くといっ
た形での対米協力のことである。その間、「集団的自衛権」は正面から論じられるこ
とは一度としてなく、「武力行使との一体化」というわけの分からないへ理屈だけが
肥大化した。「委託された協力」の延長では、「個別的自衛権」行使の問題(北朝鮮
は直接の脅威)ですら後方支援に終始するのではないかという笑えない話になりかね
ない。
湾岸戦争の時、「顔が見えない」と言われ「カネで平和が買えるなら、そんないいこ
とはない」と言われた。それから十二年。「また同じことを繰り返すのか」と言われ
た時も何度もあった。この間、やるべき課題が見えずに混乱・混迷していたのではな
い。やるべき課題は明らかだったのに、それを実行する政治権力を作り出そうとしな
かったこと・その戦いに入ることができなかった未成熟である。(政党政治と国民主
権の未成熟/民主主義国家の新しい権力は選挙による政権交代でしか作り出せな
い)。
民主帝国の翼が空をおおうなか、自分の足で立つためには、この「敗北」を抱きしめ
て顔をあげて前を見るところからしか始まらない。

□ 「北朝鮮危機でアメリカに守ってもらう以上、イラク問題でのアメリカ支持は当
然だ」という思考停止を超えて

「北朝鮮危機でアメリカに守ってもらう以上、イラク問題でのアメリカ支持は当然
だ」という話が、あたかも「現実的」で「責任ある」ものであるかのように聞えてく
る。しかし本当にそうか? それなら「北朝鮮危機」がある限り、日本は米国の軍事
行動をどこまでも支持し支援しなければならないのか? あるいは「北朝鮮危機」へ
の対処は、とにかく米国頼みでいくのか?(それなら昨年の北朝鮮訪問は、どれだけ
米国とすり合わせてやったのか。「核開発」というアメリカにとっての最大の関心に
ついての無頓着ぶりは「信義にもとる」のではないか?)
 論理的に考えれば、これは「米国依存」の思考停止状態である。この手の「日米基
軸」論の“虚ろ”こそ、じつは「北朝鮮に対抗して日本が核武装する日」という「日
本像」の背景にほかならない。(外務省や自民党が言うこの手の「日米基軸論」に、
アメリカの政策担当者自身が辟易としているのは言うまでもない。)

 添谷・慶応大学教授は、第四十六回定例講演会(「わが国をとりまく外交環境」)
で、以下のような趣旨を述べている。アメリカの議会やマスコミで「日本核武装論」
が出てくる背景は、日本が国際社会における適正な位置付けを獲得していないという
現実の表れである。何を考え、どういう対外政策をやろうとしているのかの確定がで
きないから、潜在的な不信感がある。したがって日本については「無視」するか、
「危険な存在」として取り上げるか、どちらかになってしまう、と。

 これでは、価値観同盟の一員としてアメリカに異議を唱えるフランスは信頼できて
も、「アメリカ支持以外の選択肢はない」と言って回っている日本のほうが、じつは
信頼できないということになるのは、当然である。

□ 北朝鮮危機があるからこそ、日本は東アジア戦略を明確に持って、日米同盟を使
いこなさなければならない

民主帝国アメリカは、単独でも武力行使はできる。価値観同盟ならそれに対して、自
由、民主主義、市場経済に基づく国際秩序という「共通の価値」を実現するための
「異なる」アプローチやフォロー、場合によっては異論を唱えることができる。

舞台はここに変わったのだ。「さあ跳べ、ここがロドゥスだ」
北朝鮮危機があるからこそ、日本は東アジア戦略を明確に持って、日米同盟を使いこ
なさなければならないのである。
もちろんここでの日本は、フランスやイギリスのような「大人」のプレイヤーではな
い。その他大勢の「生徒会」としてどう参加できるか、である。(マッカーサーは
「12歳」と言ったが、高校の生徒会まではきた。)

最善の策はもちろん、国際社会の一致した圧力の下での、査察によるフセイン政権の
武装解除である。核開発問題を安保理に付託された北朝鮮は、その趨勢を見つめてい
るのだから。しかし日本は「国連決議も大事、日米同盟も大事」との脳死・他人任せ
で、イラクへの「説得」も韓国との協調の努力もしてこなかった。
最善の策が取れないときは、次善の策である。国際社会を十二年間にわたって欺きつ
づけたフセイン政権には「懲罰」しかないと「強い警察官」が判断したとき、どうす
るのか。「戦争はイヤだ」「テロと帝国、どっちもイヤだ」という生徒会で、大人へ
の糸口はできるか? 「正しい大人はどちらなのか」を公明正大に言えるところか
ら、生徒会は始まる。それをあいまいにしたまま、「アメリカが武力行使に踏み切れ
ば、アメリカ支持以外の選択肢はない」などと言っているから「反戦運動はイラクを
利する」などいうことになる。これでは「国家の命運にかかわる政策選択」を論議す
る土俵さえつくれないではないか。
最後の策は、大人のなかでの決着への態度表明である。フランスは拒否権行使につい
て、明確にしていない。イラクの武装解除という点では国際社会は一致しているし、
そのためには軍事的圧力が必要なことでも一致している。国連という戦後国際社会の
秩序を、21世紀の新しい舞台でどのように発展させるのかは、「大人の責任世界」で
の判断だ。この意味さえ分かろうとせずに、「米英案への多数派工作」と称して「札
束外交」モドキをやるようなことでは「最悪の愚劣な選択」になる。

フセインが査察全面協力の決断をしないなら、武力行使は避けられないだろう。もし
フセインが「許される」なら、北朝鮮の瀬戸際外交はさらにエスカレートする。そう
なれば多国間協調のアプローチはさらに狭められる。また第二、第三のフセイン、金
正日が出てくるかもしれない。国際秩序はかつてないほど危うくなる。
今のところ、こうした危機に対処するパワーを持っているのはアメリカだけである。
アメリカがもし、こうした秩序維持にコミットしなければどうなるか。中国もフラン
スもロシアも、その力は持っていない。そしてアメリカのコミットは少なくとも「自
由、民主主義」から説明できるものなのである。だから中国もフランスもロシアも、
「反米」ではないのだ。

舞台はここに変わったのだ。「さあ跳べ、ここがロドゥスだ」
こうしたアメリカを支持しないというのは「愚劣な選択」である。「支持しない」と
言えるかどうか(ノーと言えるかどうか)が、自立だと勘違いしているのでは、生徒
会さえ卒業できない、絶叫オジサンと同じである。
自らの共同体の命運に責任を感じることができる人を主権者という。主権者としての
冷徹な判断のうえにこそ「賢明な選択」は可能になる。
失政15年とはその未成熟であり、その「敗北」を誰かのせいにするのではなく、主権
者として自らのものとするところからこそ、「跳ぶ」ことは可能になる。


 わが国はアメリカや中国のように、世界秩序を左右するような戦略的なパワーでは
ない。それを「持とう」「持てる」と思ったときは、戦前の軍部のように世界が見え
ていない時であり、必ず国策を誤り国を滅ぼす。
世界大の戦略パワーではないわが国にとっては、地域戦略―東アジア戦略を持つこと
こそが決定的であり、ここでアメリカや中国の一国主義パワーと「上手に付き合う」
すべを獲得することなのである。それがわが国の「適正な位置」である。
これを戦いとるための政策課題や方向は、冷戦後のなかですでに明らかにされてい
る。問題はそれを実現するための政治権力、それを創りだし支える世論(国民主権の
うねり)を創りだすことである。「失政15年」とは、このことにほかならない。

 政権がムチャクチャになっているからこそ、国民は主権者として、この問いに向き
合おう。「失政十五年」の敗北の教訓を自らのものとしてしかと受け止め、救国済民
の政権ビジョンをつくりあげよう。小泉「自滅」政権の“終わりの始まり”を国民主
権のうねりで呑みこみ、総選挙―政権交代へとせり上げていこう。
(第四十六回定例講演会の詳細は、288号(4/1)にて)

□ ◆□ お知らせ □◆□

□『日本再生』287号(300円)
小泉「自滅」政権の“終わりの始まり”を、国民主権のうねりで呑みこみ、救国済民
政権へのとば口を開こう
講演会/「地方自治」/福嶋・我孫子市長、田中・中野区長
講演会/「台湾から見た東アジア情勢」/羅福全・台北代表、枝野幸男・衆院議員、
水野賢一・衆院議員 
インタビュー/「自治体首長の資質」石川・稲城市長/「神奈川力宣言」松沢成文・
衆院議員

□ 第47回定例講演会
「今国会の論点―経済再生、イラク・北朝鮮」
3月11日(火)午後6時30分より
総評会館203室
講師・前原誠司(衆院議員 民主党「次の内閣」安全保障担当)
参加費・会員/1000円 一般/2000円


======================
石津美知子 ishizu@ganbarou-nippon.ne.jp
民主統一同盟 「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
TEL:03-5215-1330 FAX:03-5215-1333